地銀再編で地元シェア5割超が21行に増加=全国153万6,402社「2021年 企業のメインバンク」調査

 地元で取引社数シェア5割超の地銀は、統合した十八親和銀行と第四北越銀行の2行が増え、21行(前年19行)となった。シェア6割超も滋賀銀行、南都銀行、紀陽銀行、山陰合同銀行、十八親和銀行の5行(同4行)を数え、シェア確保や生き残りをかけた地銀再編が加速している。
 2020年10月、長崎県内シェア1位の十八銀行と2位の親和銀行の合併で、十八親和銀行が誕生した。2021年1月には新潟県シェア1位の第四銀行と2位の北越銀行が合併し、第四北越銀行が発足。三重県では2位だった第三銀行と3位の三重銀行が合併した三十三銀行が、シェア1位の百五銀行に迫る。また、青森県1位の青森銀行と2位みちのく銀行が合併予定で、地銀再編が目立ち始めた。信用金庫でも石川県の北陸信金と鶴来信金が合併したはくさん信金がシェア4位に入った。
 全国153万6,402社のメインバンクは、三菱UFJ銀行が12万4,835社(全国シェア8.1%)で調査を開始以来、9年連続でトップを守った。2位は三井住友銀行、3位はみずほ銀行だった。また、SBIホールディングスが資本・業務提携を進める8行のメイン社数は、合計2万6,824社に達し、地銀トップの北洋銀行を上回る。
 コロナ支援で金融機関の存在感が増すなか、自身の生き残りと同時に、地域経済の活性化や取引企業の業績改善などへの地域の期待は高まっている。

  • ※本調査は、東京商工リサーチの企業データベースから2013年-2021年の各年3月末のメインバンクを集計、分析した。商号変更や統合等は、2021年6月末を採用。メインバンクが複数の場合、最上位行をメインバンクとした。
  • ※経営統合や合併した銀行(予定含む)のグループを「金融グループ」と定義した。
  • ※金融グループでは、りそなHDに「関西みらいFG(関西みらい銀行、みなと銀行)」の取引社数を含めた。
  • ※統合した金融機関の統合前の社数は、単純に合算し、順位も合算後とした。
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業態別トップ 三菱UFJ銀行、京都中央信金、茨城県信組のトップは不変

 銀行では、三菱UFJ銀行(12万4,835社)、三井住友銀行(9万7,541社)、みずほ銀行(8万68社)の3メガバンクに、りそな銀行(3万7,991社)が続く。5位に地方・第2地銀トップの北洋銀行(2万5,110社)が入り、千葉銀行、福岡銀行、西日本シティ銀行と地元の雄が続く。
 信用金庫は、京都中央信金(8,245社)が他を圧倒。次いで、大阪シティ信金(6,856社)が2位に浮上し、僅差で多摩信金(6,849社)の順。いずれも前年より社数を増やし、増勢が続く。
 信用組合は、茨城県信組(2,994社)が大差でトップ。2位に広島市信組(1,266社)が躍進した。3位は新潟縣信組(1,234社)、4位は山梨県民信組(1,187社)が僅差で続く。

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都道府県別シェア (東日本)

【北海道】
 北洋銀行(シェア36.1%)がトップを保持。2位の北海道銀行(同16.0%)と2行で過半を占める。3位は北海道信金(同5.4%)、4位は旭川信金(同4.4%)、5位に帯広信金(3.5%)と上位陣に変化なし。6位の北陸銀行は北海道銀行と「ほくほくFG」を形成している。

【東北】
 青森は、トップ青森銀行(同42.3%)と2位みちのく銀行(同28.9%)が2024年をめどに合併予定。単純合算でシェア71.3%を占める。岩手は、岩手銀行(同45.2%)が2位東北銀行(同16.8%)との差を広げる。宮城は、七十七銀行(同56.5%)が圧倒。2位は仙台銀行(同12.8%)、杜の都信金(同6.1%)。秋田は、1位の秋田銀行(同53.7%)を2位の北都銀行(同29.8%)が追いかける。山形は、山形銀行(同36.8%)と2位のきらやか銀行(同24.5%)との競争が続く。3位は荘内銀行(同18.4%)。福島は、トップの東邦銀行(同40.7%)が高いシェアを維持。2位の大東銀行(同9.7%)と3位の福島銀行(同8.7%)が僅差で争う。
 きらやか銀行と仙台銀行が「じもとHD」、荘内銀行と北都銀行が「フィデアHD」を形成し、「フィデアHD」に岩手2位の東北銀行が統合の協議に入っている。

【北関東】
 茨城トップの常陽銀行(同48.4%)、栃木トップの足利銀行(同47.5%)の「めぶきFG」が北関東での存在感を示す。群馬の群馬銀行(同50.7%)もシェア50%超で、北関東は地場地銀の強さが際立つ。

【首都圏】

 埼玉は、トップが埼玉りそな銀行(同28.9%)、2位に武蔵野銀行(同11.8%)が続く。千葉は、千葉銀行(同41.3%)が独走。京葉銀行(同13.7%)が続く。東京は、三菱UFJ銀行(同23.4%)、みずほ銀行(同21.1%)、三井住友銀行(同17.7%)のメガバンク3行が上位を独占。神奈川は、横浜銀行(同22.1%)がトップ。2位以下の3メガバンクとの競争が激しい。

【甲信越】
 新潟は、これまでトップの第四銀行と2位の北越銀行が統合した第四北越銀行(同59.6%)がシェア6割に近づく。山梨は山梨中央銀行(同57.1%)、長野は八十二銀行(同55.3%)が高いシェアを維持し、甲信越も地場地銀が強い。

【中部】
 岐阜は、1位の十六銀行(同33.9%)と、2位の大垣共立銀行(同20.4%)に、3位の岐阜信金(同13.5%)が続く。静岡は、静岡銀行(同39.5%)が大差でトップ。愛知は、東海銀行の流れをくむ三菱UFJ銀行(同23.7%)がトップ。2位は名古屋銀行(同10.5%)。三重は、トップの百五銀行(同43.9%)が強い。ただ、これまで2位だった第三銀行と3位の三重銀行が合併した三十三銀行(同28.0%)が、トップの百五銀行を追っている。

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都道府県別シェア (西日本)

【北陸】
 富山は、北海道銀行と「ほくほくFG」を形成する北陸銀行(シェア48.2%)がトップ。北陸銀行は、石川2位、福井3位と、北陸3県でそれぞれトップ3に入る。石川は、北國銀行(同53.5%)、福井は福井銀行(同48.1%)が安定シェアを維持している。

【近畿】
 滋賀は、滋賀銀行(61.4%)が6割超え。関西みらい銀行(同13.3%)との差が広がる。京都は、1位の京都銀行(同32.9%)を、2位の京都中央信金(同24.9%)が激しく追いかける。大阪は、トップの三菱UFJ銀行(同20.1%)、2位の三井住友銀行(同19.4%)が僅差の戦いを続ける。3位のりそな銀行(同12.7%)は、同グループで4位の関西みらい銀行(同9.9%)を合算するとシェア22.6%で1位に躍り出る。兵庫は、三井住友銀行(同21.9%)がトップ。2位には「関西みらいFG」のみなと銀行(同12.7%)が続く。奈良は、南都銀行(同60.2%)、和歌山は、紀陽銀行(同62.8%)が6割超えで他を圧倒している。

【中国】
 山陰合同銀行は鳥取(同48.3%)、島根(同65.9%)でトップを維持。岡山は、中国銀行(同48.9%)が高いシェアを確保し、2位のトマト銀行(同11.2%)が追う。広島は、広島銀行(同39.4%)、2位にもみじ銀行(同17.6%)が続く。山口は、山口銀行(同59.8%)がシェア6割に迫る。山口銀行と広島2位のもみじ銀行、福岡の北九州銀行は「山口FG」を形成している。

【四国】
 徳島は、阿波銀行(同56.1%)がトップ。2位は徳島大正銀行(同20.2%)。香川は、百十四銀行(同47.8%)がトップ、2位は香川銀行(同18.1%)。愛媛は、伊予銀行(同58.0%)が独走。2位は愛媛銀行(同18.2%)。高知は、トップが四国銀行(同50.9%)、2位の高知銀行(同29.1%)が追いかける。香川銀行と徳島大正銀行は「トモニHD」を形成している。

【九州・沖縄】
 激戦区の福岡は、トップの福岡銀行(同36.6%)と僅差で、2位の西日本シティ銀行(同32.1%)がしのぎを削る。佐賀は、佐賀銀行(同57.4%)が高いシェアを維持し、2位は佐賀共栄銀行(同7.1%)。長崎は、1位だった十八銀行と2位の親和銀行が統合した十八親和銀行(同83.3%)が全国トップのシェアを達成。熊本は、肥後銀行(同58.6%)がトップ、2位のふくおかFGの熊本銀行(同20.2%)が追う。大分は、1位の大分銀行(同51.6%)が過半を確保、2位の豊和銀行(同11.7%)が追う。宮崎は、宮崎銀行(同59.7%)が圧倒し、2位は宮崎太陽銀行(同13.6%)。鹿児島は、鹿児島銀行(同52.9%)がトップ、2位の鹿児島相互信金(同12.3%)、3位の南日本銀行(同11.0%)が続く。沖縄は、琉球銀行(同41.9%)と沖縄銀行(38.7%)の僅差の競争が続く。
 九州は、ふくおかFGや九州FG、西日本FHDなど金融再編が進んでいる。

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取引先企業 増収増益率ランキング 宮崎銀行がトップ、沖縄銀行、常陽銀行が続く

 メインバンクごとに取引先企業の増収増益率を分析した。直近3期(2018年1-12月期、2019年1-12月期、2020年1-12月期)の売上高、最終利益を対象に、増収増益の企業を算出した。
 コロナ禍の2020年、取引企業の増収増益率トップは、宮崎銀行(構成比33.3%)だった。宮崎銀行は、「地域から信頼される『ファーストコールバンク』を目指し、当行グループが一体となってお取引先の経営課題を共有し、最適なコンサルティング営業による課題解決を実施してきた結果と考える」と分析。取引先の課題解決を実践してきた効果が出たようだ。
 2位は沖縄2位の沖縄銀行(同32.9%)。沖縄銀行は、「お客さまとのコミュニケーションを通じ、事業の内容や成長の可能性を共有している。また、財務の課題に留まらず、伴走型支援の実施により、具体的な課題解決策をお客さまと検討、提案、実行に繋げ、金融をコアとした総合サービスの提供により、お客さまの生産性向上に向けた取り組みを継続している」と伴走型支援による取引先との関係強化が業績改善につながったと評価している。
 3位は茨城県トップの常陽銀行(同32.2%)。常陽銀行は、「地域金融機関として、地域のお客さまの課題解決に全力で取り組み、さまざまな経営課題の解決に力を注いできた成果だと考えている。引き続き、地域のお客さまに寄り添い、地域経済の持続的成長に貢献していきたい」と地域貢献での成長を目指す。
 業態別で取引先企業の増収増益率は、トップが地方銀行(同27.4%)。2位は第二地銀(同26.7%)、信用組合(同26.2%)、信用金庫(同25.1%)、都市銀行(同24.1%)の順。

  • ※増収増益率ランキングは、メインバンク取引社数が1,000社以上を対象に集計した。
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倒産企業のメインバンク調査

 各年度(4-3月)に倒産した企業(負債1,000万円以上)のメインバンクを分析した。2020年度の倒産件数は、地方銀行が1,225社(構成比32.5%)で最多。次いで、信用金庫の933社(同24.7%)、都市銀行の840社(同22.3%)、第二地銀の355社(同9.4%)、信用組合の104社(同2.7%)の順だった。
 2020年度末(2021年3月末)の業態別メインバンクの取引社数を分母に、倒産企業数を割った「倒産比率」は、信用組合が0.31%で最多。次いで、信用金庫0.28%、第二地銀0.24%、都市銀行0.23%、地方銀行0.20%の順。ただし、業態により取引企業の規模や業種、地域性など、特有の条件が異なり、単純な数値評価はできない。

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 コロナ禍で企業の業績は悪化しているが、企業倒産は歴史的な低水準が続く。国のコロナ関連支援が幹となり、取引金融機関の支援が大小の枝葉となって企業を支えた結果といえる。
 コロナ前の数年、金融機関は低金利競争や人口減少などで、経営は深刻な課題を抱え、店舗の統廃合や人員削減などのコスト削減、統合や提携を進めていた。
 2020年11月、懸案だった独占禁止法の特例法が施行され、金融統合へのネックが一気に外れた。
これにより長崎県の十八銀行と親和銀行が統合した十八親和銀行の県内シェアは8割を超える。全国で県内1位と2位のシェア合算が8割を超えるのは、長崎以外で秋田の83.6%、高知の80.0%、沖縄の80.6%の3県あるが、特例法の施行で上位行の金融機関同士の統合も可能となった。
 新型コロナ感染拡大が長引き、過剰債務に陥った企業は3社に1社に及ぶ。コロナ前までの貸出競争から一転し、企業に寄り添う事業再構築への支援の重要性はこれまでになく高まっている。
 2021年4月からコロナの影響を受けた中小企業が、金融機関と対話して「経営行動計画書」を作成し、継続的な支援を受けることを条件に信用保証料を大幅に引き下げる「伴走支援型特別保証制度」も始まった。ポストコロナを見据え、地域金融機関の果たす役割は大きくなっている。
 とはいえ、返済困難な負債を抱えた企業への支援は金融機関に大きなリスクとなる。金融機関は取引企業にコンサルティング機能を発揮しながら、足元で自行の収益力を強化しフィンテックやデジタル化の推進が急務になっている。コスト削減や連携によるサービス強化など大義に掲げた金融機関の統合は、まだ広がるだろう。独自路線か統合かの選択と当時に、メインバンクの動向は取引先や地域への影響を強めており、コロナ禍でこれまで以上に注目されている。

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