コロナ禍での選挙戦、ネット選挙で動画をうまく活用していたのは……?【都議選・事例あり】

7月4日に東京都議会議員選挙(以下、都議選)が実施されました。

新型コロナウイルスの影響で従来の選挙運動が制限される中、有権者の需要を伸ばしたのがネット選挙です。特に、YouTubeやTwitter等のSNSで動画を上手に活用していた当選者が目立ちました。

この記事では、ネット選挙運動の中でも、特に動画を活用していた都議選当選者を紹介します。

【板橋区】松田やすまさ氏(自民党)

板橋区から当選した自民党の松田やすまさ氏は4児のパパ。板橋区は自民党が2人候補者を立てていましたが、自民党から当選したのは松田氏のみでした。さらに2人の得票数を見てみると、当選した松田氏は25703票、落選した河野ゆうき氏は24066票という僅差でした。松田氏のネット選挙戦略はどのようなものだったのでしょうか。

選挙ドットコムのプロフィールページにも掲載されている動画では、
・板橋区の魅力
・都議会議員としての実績
・松田氏が力を入れている政策
について紹介しています。
動画で紹介されていると、文章で見るよりも印象に残りやすそうですね。

都議選期間中、YouTubeには初日から9日目までの演説動画が更新されていました。
Twitterの固定ツイートには、自身の紹介動画のリンクを載せており、多くの人の目に触れるようにしていたと思われます。
また、Instagramにも動画を複数更新しており、幅広い世代をターゲットにネット選挙運動を実施していたことがうかがえます。

【足立区】後藤なみ氏(都民ファーストの会)

足立区でトップ当選した都民ファーストの会の後藤なみ氏は、株式会社リクルートキャリア在職中に小池百合子都知事主宰「希望の塾」を経て、都議選候補者として抜擢された人物です。どのようなネット選挙戦略で戦っていたのでしょうか。

選挙ドットコムプロフィールページにも掲載されている動画では、
・後藤氏の想い
・これまでの実績
・後藤氏が力を入れている政策
について紹介しています。

後藤氏は自身が足立区最年少のママ議員ということもあり、女性や若い世代に向けたメッセージを多く発信していました。
YouTubeには、「良い保育園を見つける3つのポイント」というママ目線の動画をはじめ、「介護施設でクラスターが発生したら?」という新型コロナウイルス関連の情報について話している動画等も投稿されていました。

有権者の中でも、特に自身に近い属性である女性や子育て世代・若い世代が知りたいと思っている情報を紹介されている印象です。

【目黒区】斉藤やすひろ氏(公明党)

目黒区から当選した公明党の斉藤やすひろ氏は、都議を3期務めており、4期目を目指しネット選挙運動にも力を入れていました。以前には公明党の東京都本部広報宣伝局長も務めていた斉藤氏は、どのように動画を使ってネット選挙を実施していたのでしょうか。

特徴的なのは動画の構成です。選挙ドットコムのプロフィールページにも掲載されている動画は、約13分にもわたる大作。内容は
・公明党が今まで実現してきた政策
・自身の実績やどのように問題を解決したのか
・斉藤氏が力を入れている政策
と、他の候補者と大きな違いはないものの、プレゼンターが実績を紹介するコーナーがあったり、インタビュアーが斉藤氏にインタビューするコーナーがあったりと、テレビ番組のような作りになっていました。

他の当選者とは動画のテイストが少し異なり、斉藤氏が一方的に話すのではなく、都議選への熱量がとても感じられる動画ですね。

今回の都議選では公明党の苦戦がマスコミ等で報じられていましたが、無事全員当選。斉藤氏の当選には、こちらの動画も役立ったのではないのでしょうか。

【町田市】池川友一氏(共産党)

町田市から当選した共産党の池川友一氏は、今回の都議選で2度目の当選。日頃から都議としての活動をTwitterで発信していました。過去にツイートがバズったこともある池川氏は、どのように動画を使ってネット選挙を実施していたのでしょうか。

この動画は、2020年3月12日に行われた都議会予算特別委員会で「なぜ、校則でツーブロックは禁止されているのか」という質問をしている池川氏の様子です。

この質疑についての動画が載っている固定ツイートは、RTが5.7万件、いいねが14.1万件、動画の再生回数652.6万回、リプライ2169件と、多くの人が目にしたことがわかりますね。(数字は2021年7月28日現在)

都議選の期間中にも校則でツーブロックが禁止されていることについての動画を再度ツイートしたため、「見覚えがある」と思いだした有権者もいるのではないでしょうか。

池川氏はTwitterに動画を頻繁に投稿していますが、YouTubeでは同じ共産党の米倉春奈氏と共同のチャンネルを持っており、政治についての考えを述べています。

日頃からネット選挙に力を入れていて、有権者の目に触れる機会も多かったこともあり、2度目の当選という結果になったのかもしれませんね。

【武蔵野市】五十嵐えり氏(立憲民主党)

武蔵野市から当選した立憲民主党の五十嵐氏は、Twitterを中心にネット選挙運動を展開。投開票の前日、7月3日にTwitterに投稿されたこの動画が注目を集めました。

動画の中では、中卒での社会経験、夜間大学への進学、弁護士への転身という自身の経歴や、政治への思いを語っています。

動画の時間が2分20秒とTwitterに投稿できる上限時間だった点からも、Twitterに投稿することを考えて動画を作成したのではないかと推測できます。
長すぎず、見やすい時間でありつつも「少しでも多く、自身の声を伝えたい」という気持ちがうかがえますね。

新人ながらも、定数1の武蔵野市で26878票を獲得し圧勝という結果でした。

ネット選挙を活用して生の声を有権者に届けよう!

以上、一部ではありますが、都議選で動画を上手に活用していた当選者を紹介させていただきました。

有権者の中には、選挙に行こうと思っても、「候補者がどんな人なのかわからない」という理由から棄権してしまう人もいます。

今回紹介した都議選当選者のように、動画を使ったネット選挙を上手く活用すると、

・候補者についてよく知らない有権者にも生の声が届けられる

・すでに自分を支持している人へは、想いを伝えて票を固められる

・ネットをよく使う有権者に身近に感じられやすくなる

・「候補者がどんな人なのかわからない」を解消できる

可能性があります。

今回ご紹介した内容が、政治家・候補者の皆様にとってこれからのネット選挙運動の参考になりましたら幸いです。

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