まさかまさかの林道10km歩きの冠山も、下山してしまうとすぐ次の山に行きたくなる。
冠山の一週間後に栄螺ヶ岳・西方ヶ岳、つぎの週末には杣山。そしていよいよ三ノ峰に。
三ノ峰は当時の『福井県の山(山と渓谷社)』の表紙を飾っており、すごいなぁ、こんな山があるんだなぁ、と憧れていた山です。
さて当日。福井市内を6:00すぎに出発。
大野市街を通りぬけて山沿いの道をすすみます。
道のところどころにトンネルのような屋根があるけれど谷側は壁がなく柱だけ並んでいる構造物があります。「??」と思っているとスノーシェッドという雪崩・落石・土砂崩れ等から人命と道路を守るものだと教えられ、なるほどと納得。たいせつな役目のあるものなんですね。単に旅情あふれる構造物(柱や屋根が赤くて木々の緑に映えてきれいだから)だなと思うばかりの自分のうすのろさを反省。やはり何事にも役割がある。
そして国道158号線から左に分かれる県道173号上小池勝原線へ。
ぐぐっと坂を下る道沿いには民家が立ちならぶ集落。左折して橋をわたりますが、そこの集落をすぎると建物もまばらになって・・・。いつの間にか白線もないせまい道。
「落石注意」の看板がそこかしこにあるけれど、落ちてくるものをどう注意したら??
「落ちてくるものに注意もだけど、すでに落ちている石に気をつけろ、てことじゃないの」と冷静にさとされまたまた納得。
それにしても道におおいかぶさるような緑の木々、川沿いの道なのにガードレールもありません。「こんなところ車で入っていいの?!」と慌てる私におかまいなしに車はすすみます。
また橋を渡って、まだ建物があることにおどろいたりしつつ窓外をながめていると左手にお墓が。今朝はやくにお参りなさったとみてとれる清浄な墓石に野の花が供えられて、なんとも清しいきもちになりました。
そうしてすすむと鳩ヶ湯温泉。
でもまだまだ道はつづきます。
登山口に着くまでのドライブだけで、もうおなかいっぱいになりそうなころ上小池駐車場に到着(8:50)。
雨予報だからか予想外の先客なしの駐車場。帽子をかぶって登山靴にはきかえていざ出発。駐車場から林のなかをとおって5分くらいで林道に。「まず下る」というのが新鮮で本格的な気がして緊張しながら登山口到着(9:05)。
登山口からは階段がつづいてけっこう急。ふぅ・・・と思ったころに山腰邸跡。木々に囲まれた広い登山道を登っていくと六本檜(11:00)。ここまでけっこうな雨。
六本檜をすぎると深い樹林帯をぬけて、雨をとおしてときおりは視界がひらける尾根歩きになります。
いい香りに誘われて目をあげるときれいなササユリが花ひらいていました。漢字表記は笹百合。すっくとほそく伸びた茎と葉、ひらりとひるがえった薄桃色の花びらに赤褐色の雄しべ。あまやかな香り。この花と出会えただけでも今日ここに来てよかったと思いました。
いままで数多くの山に咲く花と出会いましたが、いまでもササユリが一等心惹かれる花です。
そうこうしながら登っていくのですが雨は降りやまずガスに囲まれて視界はどんどん狭くなります。
ガスのなか右手にやっと標柱らしきものがみえて「小屋まで250m」とあります。
ホッとしながら歩みをすすめると左手にひそやかな碑。みるとご夫婦の遭難碑。しかも新婚旅行での山行だったとのこと。小さな花が手向けられていました。
赤い屋根の小屋がみえ、そこからさらに300mで山頂(13:40)。
雨がやむ気配もないので小屋に戻り昼食。
小屋には先客の男性おふたり。岐阜から公共交通機関で三ノ峰登山口まで!そして今日は小屋に宿泊、翌日は白山まで縦走し、下山後はまた公共交通機関で金沢までとのこと。
そんな歩き方もできるんだ・・・と驚きつつ伺うお話はたのしくて。でも下山を急がねばなりません。
下山時はすこし見晴らしもよくなり、あらためて山の花のうつくしさを心に留めながら一歩一歩。白い花房がピエロの帽子みたいなノギラン、メロンパンみたいなシシウド、薄紫色のマツムシソウは穏やかな淑女のよう。
気持ちは充足感いっぱい、行動食や水はしっかり摂りながら。なのに白山南山山稜線解説板をとおりすぎたあたりから、う゛・・・膝がいたい。
下りへと一歩ふみだすたびに膝に鋭い痛みがはしります。
経験したことのない痛み、でも痛くても足を前に出さないと下山できない・・・
六本檜まで戻ってきたころには、もう膝がまがらなくなってロボット状態に(あ、最近のAI搭載のなめらかに動くものではなく、昭和のロボットです)。
曇天のもと樹林帯にはいると薄暗さが背中から迫ってくるようで気持ちが落ちつきません。朝にとおったときには好ましく仰ぎみた大きな木も、そのかげにクマがひそんでいるのではと思うとおそろしくて早く通りすぎたい、でもヨッコラヨッコラしか歩けない。
やっと登山口についても三ノ峰はまだゴールではありません。そこから林道歩き、そして駐車場へはまた樹林帯のなかを歩かなければ。しかもその道は登り。
この痛みはなんなんだろう、もしかしたら膝をこわしてしまったのかもしれないという不安、ノロノロとしか歩けず下山予定時刻を大幅に過ぎていることの申し訳なさ、夕刻になるとクマの活動時間だという恐怖。
まがらなくなった膝を持ちあげるようにして歩きながら、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら駐車場が、そして乗ってきた車がみえたときは心底ホッとしました。
さて、その膝のいたみは当日の下山後に立ち寄った銭湯の階段も登れず一苦労。どうなることかと思いましたが翌朝めざめたときには消えていました。
⇒【映像】福井のアウトドアショップ店長が語るそと遊びの魅力(8月28日13時からライブ配信)
ノーテンキな私は「?」とは思いつつ深く考えず。でもこの膝の痛みは以降の山でも苦労することになるのです・・・
(登山用品店「遊山行」=福井市 服部佐和子)