交流の場、コロナ禍で閉鎖 うつ病も悪化 「消えてしまいたい」【断たれたつながり】

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自助グループの集まりが中止されるなどしてうつ病が悪化した女性。カレンダーを見つめ「先が見えず不安」と漏らした=10日、熊本市

 新型コロナウイルスの流行は、県内でも1年半以上にわたって続いている。感染防止が叫ばれる中、ぬくもりのある人同士の交流はあちこちで消えた。心のつながりまで断たれた人たちは静かに、切実な声を上げる。

 世間が東京五輪に沸いていた8月上旬、石井恵子さん(64)=仮名=は熊本市の団地でテレビもつけず、独り言をつぶやいた。「いなくなりたい」

 うつ病の治療を受けていたが、新型コロナウイルスの感染拡大で当事者の交流の場が次々と閉鎖され、症状が悪化。先の見えない孤独感と閉塞[へいそく]感で、息もできないほど苦しいという。

 2016年の熊本地震で、熊本市東区の自宅が全壊。被災のショックと知人のいない仮設住宅でのストレスが重なり、精神科で治療を受け始めた。20年2月に中央区の災害公営住宅に入居。同居の母親(89)が体調悪化のため高齢者施設に入ると1人になり、さらに寂しくなった。

 心の支えとなったのは、市の福祉施設や心の問題を抱える人らの自助グループの交流。「気心の知れた人とたわいない世間話をしたり、互いに苦しさを吐き出したりするだけで気分が落ち着いた」

 しかし、新型コロナの感染が広がると、施設の利用やグループの集まりは全て中止になった。通院と必要最低限の買い物以外は家にこもる日々。「不要不急」が叫ばれ、「周りの視線が怖い」と感じた。気晴らしにテレビやラジオをつけても、感染の恐ろしさや自粛しない人への非難ばかり聞こえ、次第に視聴しなくなった。

 経済協力開発機構(OECD)の報告書によると、新型コロナ禍でうつ病を患う人は世界中で増加。症状の軽い抑うつ状態も含め、日本の人口に占める割合は13年の7・9%から20年は17・3%と倍増した。報告書は、テレワークの普及や外出制限によって交流や運動の機会が減ることで職場や生活の環境が変化し、心の健康を損なう危険性を指摘している。

 「誰にも会えない現実と、目に見えない世の中の重い空気に閉じ込められている感じ」と石井さん。国内で新型コロナの感染拡大が始まって1年半余りだが、もう何年も続いている感覚だという。

 特に夕方から夜の間は「消えてしまいたいと思うくらい胸が苦しい」。抗うつ剤と精神安定剤、睡眠薬を服用し、何とか浅い眠りに就いている。

 新型コロナが収束した後の世界は「想像もできない」。それでも「再び自助グループで集まりたい」と考えている。コロナが流行する前、ささやかな楽しみだった近所の温泉にも行ってみたい。仲のいい母親とも、高齢者施設からの一時帰宅が実現すれば、再会できるだろう。石井さんは、あの頃の日常に戻る日を待ち続けている。(堀江利雅)

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