メラド帰還の日本ハム木村へ 西武の野手転向組・川越が送った“無言”のエール

西武・川越誠司【写真:荒川祐史】

西武川越と日本ハム移籍の木村は投手として入団、野手転向の共通点

■西武 7ー2 日本ハム(27日・メットライフ)

27日にメットライフドームで行われた西武-日本ハム戦。後半戦スタート直前に西武から日本ハムへトレードで移籍したばかりの木村文紀外野手、佐藤龍世内野手がそろってスタメン出場した。元チームメートとの間で、複雑な思いが交錯した。

2人は移籍後初の西武戦の試合前、元チームメートや首脳陣の下を訪れ談笑。木村は「6番・右翼」、佐藤は「7番・二塁」で先発に名を連ねた。スタメン発表と第1打席の際には、スタンドの古巣ファンからも大きな拍手が沸き起こった。

特に木村は、西武生え抜きで15年目を迎えていた。辻発彦監督が「記憶に残る大きな仕事をしてくれた」と評した通り、昨年6月26日のソフトバンク戦(メットライフドーム)で放った逆転満塁本塁打を含め、何度もチームの危機を救った。栗山巧外野手&中村剛也内野手のチーム野手最年長コンビに次ぐ年長者で、若手からの人望が厚かった。

一方、32歳の木村がチームを去り、空いた右翼のレギュラーポジションを争っているのは、現状では左打ちの28歳・川越誠司外野手と右の24歳・愛斗外野手である。この日先発した川越は、4回の第2打席で木村の登場曲だったBREATHEの「Share Happiness」を使用。木村に無言のエールを送り、この打席で中前打を放ってみせた。

木村は7回1死二、三塁で右犠飛、右翼・川越の渾身バックホームは実らなかった

投手から野手に転向し3年目の川越にとって、木村は希望の象徴だ。木村自身、2006年高校生ドラフト1位で投手として西武入りし、通算41試合1勝4敗の実績があるが、故障もあって6年目の2012年に野手転向。定位置を確保し、さらに三十路を越えた昨季、辻監督に「打撃が成長した」と言わせたほど、ひたむきに野球に取り組んできた。

その木村と川越の間に火花が散ったシーンもあった。日本ハムが1点リードして迎えた7回、それまで3打席凡退していた木村は1死二、三塁で第4打席へ。西武のギャレットが投じた156キロの速球を叩き、右翼の定位置付近へ飛球を打ち上げた。タッチアップで本塁へ突入する三塁走者・近藤に対し、右翼の川越は勢いをつけてキャッチし渾身のバックホーム。判定はセーフ。辻監督がリクエストしリプレー検証が行われたほど微妙なタイミングだったが、判定は覆らず、木村が貴重な追加点をもぎ取った。川越は思わず膝をついて天を仰いだ。この1点が流れを決定づけ、試合は日本ハムが7-2で勝った。

プロ野球界にトレードは付き物だが、元チームメート同士の熱い思いの交錯が、試合をより味わい深いものにする。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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