キャンプをする際、テントやタープ、テーブルや椅子など、揃えるものはたくさんありますが、意外と後回しにしてしまうのがランタンではないでしょうか?暗闇の中行動するにはランタン(照明)は絶対必須のアイテムです。今回は、意外と後回しにされてしまいがちなランタンの種類・メリットデメリット・燃料の基礎知識について、キャンプ歴40年のアウトドアライターがお話したいと思います。
後回しにしてない? キャンプの必需品《ランタン》
照明のほとんどない自然の中のキャンプ場。焚き火のゆらぐ炎に照らされて晩ご飯。
素敵な光景ですが、手元は真っ暗で何を食べているのかもわからない……そんなキャンプ、していないでしょうか?
または、逆に「明るく照らし過ぎて雰囲気がない」「虫が寄ってきて困る」など、照明について苦労されている方が多いように感じます。
真っ暗な中で行動するには、照明が絶対に必要です。
最初はただ光るだけ、ただ明るいだけでも良いでしょう。でも、使っていくうちに、ランタンにも色々な種類があり、その使い方にもコツがあるということがわかって来るはずです。
今回はランタンについてお話していこうと思います。
ランタンの種類|電気式ランタンと燃料式ランタン
写真は僕の使う一軍のランタン達です。これらを使い分けていつもサイトを照らします。
ランタンの種類には大きく分けて2つ種類があります。電気式のものと燃料式のものです。
ひとつひとつ特徴を見ていきましょう。
電気式ランタン(LED)
電気式のランタンは、昔は乾電池で電球ばかりでしたが、次第に蛍光灯タイプが増え、今はバッテリー式のLEDが主流になりました。
写真は、僕が愛用しているLEDランタンです。
蛍光灯色・昼光色・電球色と3種類の色で点灯でき、明るさは無段階に調整が可能。さらにIP65防水&防塵で、雨の中でも使用できます。
11,200mAhの大容量モバイルバッテリーとして使用することもできるので、スマホなら2〜3回充電可能。上部がカナビラ状になっていて、吊るして使うことができます。
最大照度で18時間使用可能で、普段は充電しておいてギアボックスに入れておきますが、連泊するときはソーラーパネルで充電することもあります。
サイズといい明るさといい機能といい、もうこれは死角なしの優等生で、僕は2つ購入してしまいました。どこへ行くにも持ち歩いています。
写真のように、吊るすと下が光るので、キッチンやテント、タープ全体を効率的に照らしてくれます。
蛍光灯色と電球色では見た目が全然違います。特に食べ物は電球色の方が数段おいしそうに見えるから不思議です。
落ち着いた雰囲気が好みなら、LEDランタンを購入する際に電球色のものを選びましょう。
電気式ランタンは、テント泊でも車中泊の時でも安心して使える照明なので、必需品と行っても良いギアです。
燃料式ランタン
燃料を燃やすタイプには、「ブタン」や「メタン」などのガスを燃やすものや「アルコール」「ロウ」「油脂」を燃やすもの、「ガソリン」や「灯油」、「ホワイトガソリン」を燃やすものなどがあり、燃料を直接燃やして炎を出したり、気化させて燃焼させるものなどがあります。
燃焼も、気化させる圧力式や燃料を燃やして炎を灯すランプとに分けられますが、今回は特に圧力式について書きたいと思います。
メリットやデメリットの前に、ランタンの燃料について学んでいきましょう!
ランタンの燃料について知ろう! 燃料の基礎知識
ここからは、ランタンの燃料についてお話したいと思います。
ランタンにはそれぞれ専用の燃料が必要になります。メーカーや商品によって表記が異なったり、初心者には「難しい」と思われがち。以下でご紹介する知識を覚えておいてください。
灯油=白灯油=ケロシン
ペトロマックスのHK500に代表されるケロシンランタンには、灯油が必要です。
『ケロシン』とは灯油のことで、『白灯油』とも呼ばれます。
白灯油は、精製度の高い1号灯油を白灯油、精製度の落ちる2号灯油を茶灯油と、精製度の違いによって呼び分けていた名残で使われていますが、現在入手できる灯油はすべて白灯油で、『ケロシン』は灯油の主成分のことです。
ホワイトガソリン≠ガソリン
ホワイトガソリンは純度が高く、すすなどが出ないようになっています。しかしそのため、比較的高価。
ホワイトガソリンにさまざまな物質を混ぜてエンジンを動かすのに適した燃料にしたのが、ガソリンです。
ホワイトガソリンとガソリンは燃焼力や熱量にほとんど違いはありませんが、ホワイトガソリン用のランタンにガソリンを入れてしまうと目詰まりを起こして故障の原因になってしまいますので、絶対に入れないでください。
コールマンのランタンの中には、ガソリンが使用できるタイプのものもあります。
タンクがシルバーの『Unleaded(アンレデッド)』は、ガソリンを使用することもできるランタンで、「バイクツーリングなどに行くときにバイクと燃料を共有したい」と思い、昔購入したものです。
OD缶=ブタン・イソブタン・プロパン
OD缶(アウトドア缶)は用途によって、ブタン・イソブタン・プロパンが調合されて入っています。
ブタンが気化するのは-0.5度、イソブタンは-11.7度、プロパンは-42.0度なので、プロパンの割合が多い方がより低温で気化しやすく、低温化でも炎は安定するということになります。
「それならみんなプロパンにすれば良いのに〜!」と思うかもしれませんが、常温で充填するにはプロパンをより高圧で液化する必要があるため、ボンベをさらに頑丈にしなければならず、このように調合されているのです。
■OD缶=アウトドア缶|CB缶=カセットボンベ缶■
アウトドアを始めるとよく聞く『OD缶』はアウトドア缶のことで、『CB缶』は家庭でよく使われるカセットボンベ缶のことです。
OD缶も、平地用、山用、冬山用など、用途によって充填されているガスが異なります。
同じ250gのガスが入っていても、OD缶はCB缶より頑丈にできており高圧なガスを充填できるため、コンパクトなフォルムにすることができるのです。
家庭で使うCB缶には、ほとんどの場合ブタンが入っています。ブタンは沸点が-0.5度なので、それ以下の温度では液体のままです。冬キャンプでカセットコンロが点火しなかったり火力が弱いと感じるのは、液体のブタンがそのまま出てきてしまうためです。
都市ガスとプロパンガス
自宅のキッチンで使うガスにも、ガス管で供給される『都市ガス』と、ボンベから供給される『プロパンガス』がありますが、都市ガスはメタンを主成分とした液化天然ガス(LNG)で、プロパンガスはプロパン・ブタンなどの液化石油ガス(LPG)です。
「LPガス』と聞いたことがあると思いますが、これがプロパンガスなのです。
都市ガス(メタン)は空気より軽いので、漏れても窓から出ていってくれますが、プロパンガス(プロパン・ブタン)は空気より重いので外に掃き出さないと出てくれません。
■なぜ都市ガスとプロパンガスでガス機器が違うのか■
都市ガスとプロパンガスでは、「都市ガス用」「プロパンガス用」とガス機器が異なります。
都市ガスよりプロパンガスの方が燃えやすく、2倍以上熱量が大きいです。それでは、「都市ガスの方がプロパンガスよりお湯を沸かすのに倍の時間がかかるのか」と言うと、そうではありません。
実は、都市ガス用ガス機器の方が、プロパンガス用より一度に出るガスの量を多くして、沸かす時間が変わらないように調整しているのです。
ですので、プロパン用のガス機器を都市ガスで使うと火が弱く、逆に都市ガス用のガス機器をプロパンガスで使うと大きな炎が出てしまって危険です。
アウトドア用のバーナーの場合、出るガスの量は同じなので、CB缶でお湯を沸かすのとOD缶でお湯を沸かすのでは、沸騰するまでの時間が変わるのです。
LEDランタンのメリットとデメリット
電気系のランタン(LEDランタン)と燃料系ランタンの違いがわかったところで、それぞれのメリットとデメリットについてご紹介していきます。
まずはLEDランタンのメリットから。
メリット① 安全
LEDランタンのメリットは、火を使う燃料系ランタンとは異なり安全なこと。テントの中でも安心して使うことができます。
メリット② 低コスト
電池式の場合は電池を購入する必要がありますが、充電式のものであれば充電することで使用できるため、低コストです。
メリット③ 虫が寄りにくい
虫が寄ってくる原因は紫外線です。紫外線を発しないLEDランタンであれば、虫が寄りにくいためおすすめです。
デメリットはナシ!?
昨今のLEDランタンのデメリットは、正直ありません!
昔は、暗かったり、発光色が青っぽくサイトの雰囲気を台無しにしたりしましたが、今のLEDランタンは光量も十分。電球色などの暖かい色で発光させることもできます。
しかも、いざと言う時には電池を入れ替えれば使えますし、バッテリー式で2〜3日持つものもあります。
モバイルバッテリーとしての機能を持っているものもあるため非常時にも活躍するなど、文句の付け所がありません。
燃料を燃やすランタンのメリットとデメリット
ここからは、燃料系のランタンのメリットとデメリットについてご紹介していきます。
メリット① 明るい
燃料系ランタンの種類にもよりますが、例えばマントルを使う気化式のランタン等は、とにかく明るいのが最大のメリットです。
学生の頃初めて買ったランタンに火を入れた時、まるで小さな太陽が目の前にあるような感覚でした。
今考えれば小型のランタンなのでそこまで明るくはないのですが、あの時の衝撃は今でも忘れられません。
そのランタンは今でもツーリング用として使い続けています。
メリット② 光に雰囲気がある
炎の見えるランタンは決して明るくはありませんが、その暖かい揺らぎを見ているだけで、時間が経つのを忘れてしまいます。
気化式のランタンも、明るくなったり暗くなったり、微妙に不規則なリズムを刻んで、まるで呼吸をしているかのように燃えます。
自然の中のキャンプでは、そんな自然な光の方が違和感なく溶け込んでいきます。ですので、僕は好んで燃料をせっせと燃やし、明かりをとっています。
メリット③ 様々な燃料を選べる
燃料系のランタンでは、使える燃料が多種多様です。
ロウを燃やすろうそくランタンや、バイクのタンクから燃料を抜いて使えるガソリンランタンなど、明るさ、利便性、雰囲気、ギアに合わせて様々な燃料を使用でき、それを選ぶのもキャンプの楽しさのひとつです。
できれば燃料は統一すると荷物を減らすことができるのですが、、、私はホワイトガソリンと灯油、CB缶と3種類の燃料を使っています。
荷物が増えて増えて、、、これも気に入ったギアを使うため、しかたがないですね〜。
デメリット① さまざまな化合物と熱が発生する
燃料を燃やすランタンの場合、酸素と燃料を使い、光と熱をともなう化学反応を利用することになります。
夏に至近距離で使用すると、ランタンの熱でとても暑くなってしまいます。
また例えばガソリンの場合、燃焼した後は水・二酸化炭素・窒素酸化物・硫黄酸化物などが発生します。
密閉された場所では有毒ガスによる危険がありますので、テントや車中では燃料式ではなくLEDを使うのがおすすめです。
デメリット②燃料を確保しておく必要がある
ガスランタンのタンク、は満タンでも1〜2晩ほどしか使うことができません。なくなれば都度補給する必要があります。
多くの場合、燃料は缶に入っており、ツーバーナーなどにも使う場合は消費量も多くなりますので、結構かさばります。
ホームセンターなどで入手可能なホワイトガソリンもOD缶も、万が一使用中に切れてしまった場合、オフシーズンでお店での取り扱いがなかったり、時間によっては閉店していることも。
あらかじめ十分な量を持っていくことが大切です。
デメリット③ 取り扱いが大変
LEDはボタンを押すだけで点灯するため簡単ですが、ガスランタンは点けるために儀式を必要とします。
OD缶のランタンは、マントルさえセットしてあればコックをひねって着火すればOKですが、気化式のガスランタンはさらに一手間二手間必要になります。
先にご紹介したべトロマックスのHK500の点灯儀式を例にご説明します。
- マントルをセットする
- マントルを空焼きする
- 規定圧力までタンク内に圧力をかける(100回程度ポンピングする)
- プレヒート用ノズルを開き点火してパイプ内の燃料を熱して気化させる(90秒〜2分程度)
- コックを開き気化したガスを放出。マントルに着火させる
- 圧力が下がるので規定圧力まで再度ポンピングする
これが僕が愛用しているペトロマックスのHK500を点灯する儀式です。しかも儀式に失敗すると、灯油が噴出したり、大炎上してランタンが火だるまになることも……。
プレヒートが足りないと、燃料は液体のまま吹いて大炎上し真っ黒になってしまいますし、使っているうちになぜか色んなボトルが緩んで必要な部品が落ちてしまったこともあります。
[ 画像が省略されました ]
もう〜、HK500は世話がやける!!!
ただ、後述しますが「手間をかければかけるほど愛着が湧く」ということもあるのが困りものです。
デメリット④ ランニングコストが高い
先にご説明しましたが、ホワイトガソリンは高価です。レギュラーガソリンが140円/L程で購入できるのに対し、ホワイトガソリンは1L缶で1,000円近くします。4L缶でも3,000円以上しますので、頻繁にキャンプに行くとボディーブローのように効いてきます。
僕はランタンの他にホワイトガソリンのツーバーナーも持っていきますので、燃料は一斗缶で購入します。一斗とは尺貫法の単位で18Lですが、7,000円ほどで購入できます。これなら1Lあたり400円弱とお得(?)です。
OD缶の場合は、1缶500円程。CB缶が1本100円程で売られていますので、約5倍もするんです。
また燃料以外にも、気化式ランタンを使用するには『マントル』も必要になります。『マントル』は、繊維を編んで袋状にしたものに溶剤を染み込ませたもので、空焼きすることで繊維は燃え尽き、溶剤が袋状の酸化物になって残ります。
このマントルの中に気化したガスを溜め、それに引火することで、酸化物が気化したガスの6倍の明るさで発光するのです。
酸化したマントルは非常にもろく、移動の振動だけでも壊れてしまうことがあるため消耗品で、必ずスペアを数枚用意しておかなければなりません。
このように、燃料や備品などのランニングコストが高くついてしまうのもデメリットのひとつです。
ギアをメンテナンスして育てられるのが燃料系ランタン最大の楽しみでもある
ここまで燃料系ランタンのデメリットを多くご紹介してきましたが、ギアをメンテナンスして育てられるのが燃料系ランタン最大の楽しみでもあるんです。
例えば、写真のペトロマックスのランタンほど世話の焼けるギアはありませんでした。
購入してしばらく調子が悪く、火だるまになったり、灯油が噴出したり、マントルが真っ黒になって明るくなかったり……。
もう二軍落ちどころか、三軍でオブジェになるところでした。
しかし、バラしてメンテナンス・調整をして、やっと文句を言わず光ってくれるようになってからは、めでたく一軍入りです。
ガラスや本体はすすで真っ黒になっていたので、磨いて磨いてなんとか美人さんに戻ってくれました。
[ 画像が省略されました ]
ペトロマックスのランタンにはコールマンのランタンにない柔らかな光とブラスの存在感があります。「手間がかかる」と言いながら、手間をかければかけるほど愛着が湧き、その姿にうっとり……。
ダメンズに貢いでしまう気持ちがわかるような気がします。
一方、コールマンのランタンはどんな使い方をしてもびくともせず、ノーメンテで使い続けても問題なく機能を意地し続ける優等生。僕のコールマンのランタンに対する信頼は絶大で、なくてはならない存在です。
このギアの調整やメンテナンスを無駄と捉えるか楽しいと捉えるかは人それぞれでしょうが、キャンプなんてもともと面倒なことをするために外に行く行為なのですから、楽しいと思ったもん勝ちです。
それがキャンプなのです。
次回は『意外と知らないランタン(照明)の種類と使い方シリーズ第2弾をお送り!
次回は、今回の記事で伝え切れなかった「ランタン(照明)の配置」や「使い分け」について、さらに深堀りしてお話したいと思います。
虫を寄せ付けないランタンの使い方や、眩しくないランタンのオプション、サイト内のどこに配置すれば良いのか等、僕が普段フィールドで実践しているノウハウをご紹介しますので、お楽しみに!
▼前回の【キャンプの基本シリーズ】▼
【キャンプの基本シリーズ5】積載・仕込み・シミュレーション! キャンプ初心者のための前日準備のすすめ - ハピキャン|キャンプ・アウトドア情報メディア
▼【キャンプの基本シリーズ】を初めから読む!▼