奄美・世界遺産登録1カ月 観光客増の期待にコロナが影 奄美大島 予約解約の動き 徳之島 クラスター直撃

認定エコツアーガイド(右)の案内で金作原国有林のツアーを楽しむ観光客=奄美市名瀬

 「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界自然遺産登録から26日で1カ月。奄美大島では観光客が増えたものの、新型コロナウイルス感染拡大で状況は一変し、予約のキャンセルが出始めている。徳之島はクラスター(感染者集団)発生の影響をもろに受け、にぎわいは遠のいた。「遺産の島」効果はコロナが落ち着いた後になりそうだ。

 「世界遺産の森を肌で感じたくて来た。見たことがない植物ばかりで面白い」。千葉県から新婚旅行で奄美大島を訪れた女性は22日、奄美市名瀬の金作原国有林で満足そうに話した。

 認定エコツアーガイドの水間忠秀さん(57)によると、8月に金作原を案内したツアー客(22日現在)は昨年の倍以上。コロナ禍前の2019年8月を上回った。ただ、全国で感染拡大が止まらず、後半は観光客の自粛でキャンセルが出始めた。水間さんは「先が見通せない」と漏らす。

 レンタカーの利用も増え、170台を保有する名瀬のラッキーレンタカーは、遺産登録の注目が高まった7月以降、全車出払う状況が続く。それでも最近はキャンセルが見られるようになった。

 ホテルビッグマリン奄美の8月の稼働率は約7割と昨年より好調に推移しているが、来島自粛が響き、9月の予約は2割にとどまる。向井純一社長(44)は「感染拡大には勝てず大手を振って喜べない」と複雑な心境だ。

 11日に徳之島町の飲食店、16日に同町の徳之島徳洲会病院でクラスターが確認された徳之島は、コロナ対策が目下の最優先課題。県はホテルを借り上げ、無症状者などの療養施設とし、町も病院内で寝泊まりしていた医療従事者向けに宿泊施設を活用している。

 酒を提供する飲食店の多くは休業しており、営業中の店も「島外客お断り」の貼り紙が目に付く。

 伊仙町で民宿を営む松岡郁代さん(65)は「登録直後は予約が増えたが、1週間で終わった」と肩を落とす。クラスター以降、予約の大半がキャンセルとなり、13日から休業を余儀なくされている。

 自然保護活動に取り組むNPO法人「徳之島虹の会」はクラスター発生後、エコツアーガイドを自粛し、外来種駆除や希少野生生物保護のパトロールに力を入れる。政武文理事長(68)は「今は我慢の時。収束後はどんどん来島してもらいたい。大歓迎する」と話した。

© 株式会社南日本新聞社