服好きの同級生と無人の古着店オープン 売り上げ一部を動物保護に

無人の古着店「感情七号線」をオープンした(右から)蓑田さん、山本さん、納富さん

 古着の良さを伝えたい。コロナ禍でも安心して買い物を楽しんでほしい。殺処分間近の犬や猫を助けたい。長崎県諫早市出身で日本大3年の山本菜々子さん(21)は28日、たくさんの願いを詰め込んだ古着店「感情七号線」を長崎市新大工町にオープンした。店員はおらず、料金の支払いは客に任せる「非接触型」店舗。売り上げの一部は、山本さんが昨年から取り組む動物保護活動に充てる。
 長崎日大中高時代の同級生で、山本さんと同じ「服好き」の蓑田太陽さん(20)、納富雅久さん(20)、久保諒悟さん(20)の3人も協力。店のロゴやチラシ制作、店内のBGMやレイアウトなどを担当した。

◆リポスト

 きっかけは1年前だ。山本さんはインスタグラムなどのSNSを通じ、殺処分を目前にした犬猫が全国にたくさんいることや、救おうと活動する保護団体があることを知った。
 少しでも力になろうと保護活動を目的としたインスタアカウント(@nanasora_1117)を開設。動物の里親を募集する団体の投稿を、自分でリポスト(再投稿)して広めたり、アルバイトで稼いだお金でえさなどの支援物資を買って団体に送ったり。だが学業の合間にできるバイトは限られ、資金面での限界もあった。

◆一点もの

 そんな中、資金集めのため2カ月前に思い付いたのが、「服好き」を生かした古着店の経営だ。大学のある関東や地元九州の店舗を巡り、古着約500点を買い付けた。地元の両親や、長崎県外の大学に通う同級生3人もサポートしてくれた。
 こだわったのは、ロゴデザインや店内の「きれいでおしゃれな感じ」。古着は使い回しで、きれいじゃない-との世間のイメージを拭い去りたかった。「古着はいろいろな時代や場所で作られ、今ではほとんど同じものがない。誰とも服がかぶらず、自分らしさを表現できる一点もの」。山本さんは古着の魅力を語る。

◆遠隔操作

 地元の同世代の若者にも古着を楽しんでほしいと、長崎市に店舗を構えることにした。しかし山本さんら4人はいずれも長崎県外在住。思い切って無人店舗にした。人件費もかからず、新型コロナ禍で接触の機会を減らすことが求められる今の時代にもぴったりだった。
 店内に設置した防犯カメラの映像は、手元のスマホで24時間確認できる。鍵の開け閉めや照明、空調、音響のオンオフも全てスマホで遠隔操作する。古着は千円、2千円、3千円のいずれか。客は店内の券売機で、1枚千円のカードを服の金額分だけ購入する仕組みだ。在庫の補充などは地元の家族に協力してもらう。

◆今っぽい

 大学の夏休みをフル活用し、28日に無事オープンを迎えた。9月から大学に戻る。今後は長期休暇などに帰省し、動物保護団体などに送る支援物資を募るイベントも開くつもりだ。
 当面の目標は店の家賃と動物保護の資金を確保すること。「学業が一番大事だけど、『無人店舗』なら古着販売や動物保護と両立できる。この店を通じて『古着って今っぽくて良い』と感じてもらい、命についても考えてほしい」。山本さんたちの挑戦が始まった。
 「感情七号線」の営業時間は午前10時から午後7時(土日祝日は午後6時まで)。月曜定休。店のインスタアカウントは「@kanjo_7go_sen」。

オープン前に商品のレイアウトを整える山本さん。ハンガーに付けた青、黄、赤3色のタグで3千~千円の値段が分かるようにしている=長崎市新大工町
店内の券売機。1枚千円のカードを、服の金額分だけ購入する

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