RCサクセション「ラプソディー ネイキッド」完全版ライブのリマスターを聴いて驚け!  2021年7月7日 RCサクセションのライブアルバム「ラプソディー ネイキッド・デラックスエディション」がリリース

リマスター&未発表音源集「ラプソディー ネイキッド」リリース

夜中に原稿仕事をしている。以前は週に一、二度くらい聞こえる程度だった救急車のサイレンの音が、今は夜ごと聞こえてくる。日中に聞く回数はもっと多いし、慣れたといえば慣れたのだが、それでも深夜にあの音が耳に飛び込んでくると胸騒ぎを覚えるし、搬送されている方の無事を祈らずにはいられない。

そんな2021年の夏、何かと落ちがちな気持ちをアゲてくれたのは、RCサクセション『ラプソディー ネイキッド・デラックスエディション』のリリースだ。

1980年、当時上り調子だったRCはキティ・レコード移籍後の最初のアルバム『ラプソディー』をリリース。これは同年4月の公演の模様を収めたライブアルバムで、当日演奏されたナンバーから9曲が収録された。その後、2005年にはこのライブを完全収録した『ラプソディー ネイキッド』がCD2枚組(プラス、このときのライブ映像を収めたDVD付き)でリリースされる。

『ラプソディー ネイキッド・デラックスエディション』は、この完全版ライブのリマスター2枚に、未発表音源集1枚を加えたCD3枚組だ。

衝撃的だった「ブン・ブン・ブン」勢いのある音はライブで収録!

中学生だった1980年に、映画『翔んだカップル』を見てRCを知ったのは、以前リマインダーに書かせていただいたとおり。そこにホンの一瞬流れていた「ブン・ブン・ブン」は本当に衝撃的だった。こんなにも攻撃的な歌い方をするシンガーが日本にいたのか! 歌っている忌野清志郎の名前も、このときインプットされた。

「ブン・ブン・ブン」を収めているアルバム『ラプソディー』は、ライブアルバムではあるが、同時にオリジナルアルバムでもあった。キティでシングル3枚をレコーディングしたものの、どうしてもライブの時のような勢いのある音にならない。ならばいっそのこと、ライブでレコーディングしてしまおうと、清志郎が考えたという。

アルバムは、まさに勢いのある音。ファンにはおなじみのオープニング曲にしてメンバー紹介曲「よォーこそ」からして前のめりだ。そして、それ以上に清志郎がつくる歌詞の世界に驚いた。“ダチ” “チキショー” “調子に乗ってるぜ”―― それまで音楽の教科書に載ってる歌やアニメソング、歌謡曲、せいぜいニューミュージック…… しか聞いたことがなかった中坊には、こんな言葉が歌詞として機能することに驚きを禁じ得なかった。

RCサクセション「ラプソディー」を卒業することなどできない

そんな中坊も2005年には中年に両足を突っ込もうとしていたが、『ラプソディー』を卒業することなどできやしない。

あのライブが完全版で出るなら、買うしかない! 買って聴いたら、さらに驚きがあった。ギターのチャボこと、仲井戸麗市による冒頭のMCが長い! 清志郎に “僕のGFです” と紹介されるソウルシスター、金子マリとの共演がスゴい! 後にレコーディングされた「お墓」が、この頃からすでに演奏されている!

…… とまあ、ビックリマークを打つのが疲れてくるほど、エキサイトさせられた。付属のDVDは、1994年にVHSでリリースされた映像のDVD化だが、こちらも改めて見ると、会場の異様な熱気が伝わってくる。当たり前だが、清志郎もチャボも若い!

ちなみに、オリジナル『ラプソディー』のレコードの帯には「こんなイカシタやつらと同じ時代、同じ国に生きてるなんて素敵じゃないか!」というキャッチコピーが記されていた。

25年を経て『ラプソディー ネイキッド』で初めて聴いた曲「まりんブルース」で、金子マリは「こんな素敵なやつらが、そばにいるんだぜ」と歌っているが、このコピーはここから拝借され、アレンジされたのか!と、目からウロコでもあった。

デラックスエディションのお蔵出し音源も驚きの連続

そして今、2021年の『ラプソディー ネイキッド・デラックスエディション』だ。正直、我が家にはポンコツオーディオしかないので、リマスターで聴くことには、あまりこだわりがない。が、『ラプソディー ネイキッド』で世に出た「スローバラード」をはじめ、音数の少ないゆったりしたナンバーほど音がくっきりと聞こえ、叙情を盛り立てる。まあ、これはあくまでポンコツオーディオで聴いた感想ですが……。

それより何より、お蔵出し音源のディスク3は、またも驚きの連続。『ラプソディー』と同年の東京・晴海でのライブ音源「よォーこそ」はスタッフが興奮した観客を制止するMCも入っており、当時のRCがどれほど勢いづいていたがうかがえる。「ボスしけてるぜ」が有線で放送禁止になった話を語る清志郎の反骨MCも、「キモちE」の替え歌「いそがC」も面白い。

この原稿を書きながら、改めて『ラプソディー ネイキッド・デラックスエディション』を深夜に鳴らしているが、今の気持ちにいちばん引っかかったのは、問答無用の名曲「スローバラード」だ。

 カーラジオからスローバラード  夜露が窓を包んで  悪い予感のかけらもないさ

悪い予感のかけらもない、そんな夜はずいぶんとご無沙汰になってしまった。でも、ありがたいことに、今夜はまだ救急車のサイレンの音を耳にしていない。

カタリベ: ソウママナブ

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