コロナ禍で大打撃を受けたグアテマラのコーヒー生産者をクラウドファンディングで支援

副収入を得るためにトウモロコシの栽培を始めるコーヒー豆の生産者

中米を代表するコーヒー大国グアテマラ発のスペシャルティコーヒーを生産するグッド・コーヒー・ファームズ(GOOD COFFEE FARMS、東京・千代田)は、コロナ禍で大打撃を受けたコーヒー豆生産者の支援に乗り出す。その方法は、生産者が自給自足することを前提に、副収入を得るための土地や肥料、作物の種を購入するための費用をクラウドファンディングで調達し支援するというもの。背景には、小規模農家の生活基盤が恒常的に脆弱という事情がある。世界中で猛威をふるう新型コロナウイルスが、持つ者と持たざる者の格差を広げている面があり、こうした影響を大きく受けている小規模農家を同社では一定期間サポートしていきたいとしている。(いからしひろき)

あなたが毎朝、目を覚ますために飲んでいる、あるいは仕事中、または食後に飲む芳しい一杯のコーヒーのために、どんな人が汗水流しているか、思いを馳せたことがあるだろうか。

世界中で広く愛され、日本人にも多く飲まれているコーヒーだが、生産や流通の実態、生産者が直面する課題について語られることは少ない。

元々コーヒービジネスは、天候や疫病、日々変化する取引相場によって翻弄されがちだ。そのしわ寄せは、ノウハウや経済的体力のない小規模生産者に向かうこととなる。そこにきて世界を覆うコロナ禍だ。当然ながらコーヒー豆生産国でも猛威を振るっている。

GOOD COFFEE FARMS代表で、自らもグアテマラ人であるラミレス・メレンデス・カルロス・ロベルトさんによると、グアテマラでは、8月半ば過ぎからロックダウンが実施され、夜10時から翌朝4時までは完全外出禁止。日中もかなり不便な生活を強いられているという。

「日本の状況を受けて、いち早く現地の生産メンバーにマスクを支給するなど対策を施したおかげで直接的な感染者はいませんが、ロックダウンで労働力の確保が難しくなり、また日用品の価格も高騰しているため、日常生活そのものが危機的状況に陥っています」

リモートで取材に応じたカルロスさん

日本でも、コーヒーショップの休業やコーヒーイベントの開催延期により、需要が激減。グアテマラからの輸入量が昨年の半分にまで減っているという。当然その間、生産者の懐にはキャッシュが入らない。コロナ禍がおさまるまで倉庫でコーヒー豆を保存しようにも、鮮度が命のスペシャルティコーヒーは、半年そこらで品質が落ちてしまうという。そうなれば、もはや売り物にはならない。

「それでも現地のメンバーはGOODなコーヒーを日本に届けることに誇りを持っており、その士気を下げないためにも、彼らの生活を安定させる必要があるのです」

実はコーヒーの収穫期は年に1回のため、多くの生産者は、繁忙期以外は他の職で生計を立てている。しかしこのコロナ禍で職を探すのはより困難だ。農地を持っていれば、作った作物を食料にしたり、売って収入を得たりもできるが、そんな生産者は一握りである。これはコロナ禍以前からの課題であった。

そこでGOOD COFFEE FARMSでは、今春、現地に4000坪(サッカー場約2個分)の農地を借り、実験的にトウモロコシの栽培を始めた。しかし、この広さでは所属メンバー数十人分しか賄えない。200人ほどいる全メンバーと家族の生活を支えるには圧倒的に敷地面積が足りないのだ。そこに来てこのコロナ禍である。もはや一刻の猶予もない。そこで追加で1万坪の農地を借りることを目的としたプロジェクトを実施することにしたというわけだ。

クラウドファンディングの期間は2021年8月6日(金)11時から、同年9月5日(日)23時59分まで。支援価格は3000円から。リターンは、日本を代表する3人の焙煎士が焙煎した“スペシャル”なコーヒーだ。

焙煎士の1人である、LEAVES COFFEE ROASTERS(リーブスコーヒーロースターズ、東京・蔵前)の石井康雄代表は、こうコメントしている。

LEAVES COFFEE ROASTERSの石井康雄代表

「代表カルロスのコーヒーに対する情熱と、彼らのサステナブルな取り組みが、自分がコーヒーに対して考える思いにリンクする所があり、今回応援させてもらうことにしました。特に僕が感じた彼らのコーヒーの魅力は、欠点のある豆が驚くほど少なかったこと。彼らの丁寧な仕事への取り組みが手に取って見えた瞬間でした。僕が最近感じている地球環境に対する問題を、生業であるコーヒーを通して少しでも解決に導いていければ良いなと思っています。一人でも多くの人がGOOD COFFEE FARMSの取り組みを通して興味や関心を持ち、アクションを起こすきっかけになってもらえたら嬉しいです」

クラウドファンディングサイトはこちら

テレワークの手をつかの間休め、はるか遠くのコーヒー豆生産者たちに思いを馳せるのは、決して無駄な時間ではないだろう。

GOOD COFFEE FARMSについて

グアテマラ出身のカルロさんが2018年に創設したコーヒー生産者団体。グアテマラの小規模農家と、「Coffee Changing The World(コーヒーで世界を変えよう)」を合言葉に、良質なスペシャルティコーヒーを生産している。特徴は、水・電気・燃料を使用しない自転車脱穀機「ドライ・バイシクル・パルピング」を独自に開発し、使用していること。これにより、従来から課題となっていた水と電気の大量消費、水質汚染、コスト高という大規模精製の弊害を乗り越え、金銭的余裕やノウハウの無い小規模農家でも参入できる仕組みを構築。良質でフェアなコーヒーの持続的な生産のため、世界各地の小規模コーヒー生産者へ、このノウハウを提供しようとしている。なお、同社が生産するコーヒ豆は、全ての段階において一貫した体制・行程・品質管理が行われており、カッピング(試飲)評価シートに基づいたスコアは80点以上を得ている。
公式サイト: https://www.goodcoffeefarms.com/

© 株式会社博展