上位と下位「真っ二つ」のセ・リーグが混戦に? 専門家がBクラスの“逆襲”を大胆予想

広島・佐々岡真司監督、中日・与田剛監督、DeNA・三浦大輔監督【写真:荒川祐史】

4位の中日&広島、最下位のDeNAにはそれぞれ強み

セ・リーグが大混戦の様相を呈している。30日現在、1位・巨人、2位・ヤクルト、3位・阪神までの3チームがわずか勝率2厘差内にひしめく“異常事態”。4位で並ぶ中日、広島と最下位のDeNAの差も1ゲームしかない。一方、3位と4位の間には13ゲームの大差があり、AクラスとBクラスが真っ二つ。B→Aの浮上は不可能に見える。ところが、現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「シーズン終盤までにはA、Bクラスの差も半分くらいに縮まる気がする」とさらなる混戦化を予想する。

Bクラスの3チームにも、それぞれ強みはある。中日は12球団トップのチーム防御率3.15を誇る。DeNAは12球団トップのチーム打率.2584、広島は僅差の2位の.2583といずれも打線が強力だ。

特に広島は、リーグ5位のチーム防御率3.86の投手陣にも光明が差してきた。正捕手・曾澤翼の復帰である。75日ぶりに1軍登録された29日の阪神戦で、捕手としてフル出場し、いきなり完封リレーを演出した。野口氏は「曾澤が戻った途端、投手陣の雰囲気がガラリと変わり、落ち着きが出た」と指摘。「代わりにマスクをかぶってきた坂倉(将吾)も頑張っていたが、曾澤の観察眼、経験に裏打ちされたリードの引き出しの多さには及ばない。坂倉は打力を生かして『5番・一塁』の方がしっくりくる」と語る。

中日は投手陣が充実「あとはチャンスをつくって…」

プロ15年目・33歳の曾澤は、2019年の「WBSCプレミア12」で侍ジャパンの正捕手を担い、優勝に貢献。今年6月15日の西武戦で左脚を痛め、東京五輪代表は辞退せざるをえなかったが、侍ジャパン・稲葉篤紀監督も絶大な信頼を寄せていたベテランだ。もともと広島の先発投手陣は森下暢仁、大瀬良大地、九里亜蓮ら力のある顔ぶれで、抑えのルーキー・栗林良吏にも絶対的な安定感がある。正捕手の復帰で俄然上位進出の可能性が出てきた。

DeNAついては「攻撃力が間違いなくリーグトップ。チーム全体が爆発力を秘めている」と野口氏。現在リーグ打率ランキングでトップ3を、タイラー・オースティン、桑原将志、佐野恵太が独占。もともと強力な打線に、ここにきて2年目・19歳の森敬斗が遊撃のレギュラー争いに加わるなど若手が芽吹き、勢いがある。

中日はリーグ断トツの132奪三振、同2位の防御率2.10をマークしている柳裕也を筆頭に、大野雄大、小笠原慎之介ら先発投手陣は揃っており、リリーフ陣も安定。「点が取れていない打線も、主砲の(ダヤン・)ビシエドは好調なので、あとはチャンスを作って彼につなぐ選手が現れれば……というところ」と野口氏は見ている。

今のところ上位に大差をつけられていはいるが、Bクラスの3チームもそれぞれ急上昇の可能性をはらんでいる。三つ巴の首位争いを展開するAクラス3チームも“3弱”を侮ると痛い目にあいそうだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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