全力プレーでファンに愛された“救世主” 西武メヒアが残した8年間の功績

西武を退団したエルネスト・メヒア【写真:荒川祐史】

初打席初本塁打で始まったメヒアの西武でのキャリア

7月26日、西武はエルネスト・メヒア内野手が退団を申し出、ウェーバー公示手続きを行ったことを発表した。8年間にわたってライオンズでプレーし、多くのファンに愛された大砲。本人が「いま世界中がとても困難な時期であり、世界の反対側から日本に来た私にとって、家族がいないことは本当に大変でした」と語った通り、家族のための選択だった。

NPB1年目の2014年には、史上初めてシーズン途中入団から本塁打王という快挙を達成。その後も主砲として活躍を続け、幾度となく豪快なアーチをかけた。2018年と2019年にはとりわけシーズン終盤に勝負強い打撃を見せてリーグ連覇に貢献するなど、メヒアのバッティングの中には、ファンの記憶に残るシーンも多い。

通算成績は738試合562安打142本塁打406打点、打率.242。今回は、そんなベネズエラの大砲が8年間で見せた活躍を振り返ってみたい。

2014年4月30日、西武に入団したメヒアは、5月15日に1軍登録。そして、同日の日本ハム戦でデビューを迎えると、史上56人目となる初打席初本塁打という衝撃デビューを飾った。挨拶代わりのこの一打は、その後の大活躍を予見させるものだった。

2014年6月26日の日本ハム戦、7月13日のオリックス戦ではドームなのに場外弾という離れ業を演じた。メヒアの本塁打は「飛距離」も規格外。この2本はともに本拠地の場外まで飛ぶ強烈な一発。場外までダイレクトで運ぶ一打はそう何度も生まれるものではないため、メヒアの恐るべきパワーがよく分かる。

土壇場や瀬戸際で豪快な一打で空気を変えた“救世主”

2016年4月24日の楽天戦では、3回にソロ、5回に2ラン、7回に満塁弾と3打席連発、1試合7打点というまさに驚異的な活躍を披露。7-6と乱打戦となった試合で、チームの全得点を1人で叩き出した。2019年4月10日の楽天戦で、絶対的守護神・松井裕樹投手の直球を捉え、球団通算9000本目の一発を放った。

2020年10月2日のロッテ戦では、両者無得点で迎えた延長10回、先頭打者として打席に入ると、この回からマウンドに上がったロッテ・澤村拓一投手から決勝ソロ。150キロの速球を捉え、打った瞬間それとわかる豪快な一発だった。この回無得点ならチームの勝ちがなくなるという状況で飛び出した値千金の一打は土壇場での勝負強さを改めて証明するものだった。

打撃面の活躍だけでなく、長身を精一杯伸ばして難しい打球を幾度となく捕球した一塁での守備や、意表を突く盗塁成功のように、さまざまな局面で全力プレーを披露したメヒア。長距離砲としての活躍もさることながら、要所で見せる懸命な姿勢や、活躍後の明るい笑顔といった要素も、ファンから愛される理由の一つでもあった。

チームにとって苦しい時期を主砲として支えただけでなく、土壇場や瀬戸際で豪快な一打を何度も放ち、空気を変えてみせた文字通りの“救世主”。そんなメヒアが残した8年間の功績は、ライオンズファンの心の中に、今も深く刻まれていることだろう。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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