「レッドクリフ」出演の中国有名女優が消された! 背景に「旭日旗」と「アリババ」

存在を“消された”ヴィッキー・チャオ(ロイター)

中国の人気女優・趙薇(ヴィッキー・チャオ)の名前が30日までに、動画配信サービスなどで出演作品のキャスト名一覧から次々と削除された。中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」でも趙ファンのコーナーが削除された。ネット上から“存在”を抹消されたわけだ。台湾メディアなどが伝えた。女優としては映画「レッドクリフ」で世界的に知られ、歌手、監督、プロデューサーとしても大成功した趙に何があったのか。

中国芸能界では相次いで人気女優のスキャンダルが報じられている。上海税務当局は今月下旬、女優・鄭爽(ジェン・シュアン)が脱税したとして、2億9900万元(約50億円)の罰金を命じた。このことは中国メディアで大きく報じられたばかり。今度は趙薇の“存在”が中国ネット上から消えたのだ。

趙は女優などで活躍する一方、夫と共に資産運用で巨額を稼いできた投資のプロでもある。しかし、今年4月に中国メディアは、趙が所有する3社分の株券が凍結されたと報じた。さらに6月には、夫妻に3億香港ドル(約42億円)の負債があることが発覚したという。

夫妻は2014年、アリババグループ傘下の映画配給会社アリババ・ピクチャーズの株式を大量取得し第2位の大株主となった。その後、アリババ・ピクチャーズの株価が高騰し、夫妻は52億円もの利益を得た。その後も次々と株式投資で成功。しかし、株価操作疑惑などが浮上。17年11月に中国証券監督管理委員会は、夫妻がペーパーカンパニーを利用し、上場会社を買収しようとしたとして、罰金および5年間の投資活動禁止を決定したという。

しばらく表舞台から姿を消していた趙だったが、今月、再びメディアの注目を集めた。

中国の人気俳優の張哲瀚(チャン・ジョーハン)が靖国神社や乃木神社で記念写真を撮るなどして「親日」と批判された。その張は、趙が運営する芸能事務所の所属だったのだ。

中国人ジャーナリストの周来友氏はこう語る。
「張のことを発端に、趙が20年前に出演した作品で、旧日本軍を連想させる旭日旗をデザインした服を着ていたことが“発掘”されました。その画像が拡散され、“親日女優疑惑”が高まっているのです。さらに鄭の巨額脱税問題が報じられたことで、趙の過去の投資問題も再燃してしまったのです」

また、趙はアリババ・ピクチャーズの株で大もうけしたが、金融当局はアリババグループの創業者である馬雲(ジャック・マー)氏を締め付けているとされる。馬氏が昨秋、公然と金融当局を批判したことで、当局が激怒しているからだ。その馬氏と趙は親密な関係にある。

「動画配信サイトなどが炎上を恐れ、次々と彼女の出演作品を削除しているものと考えられています」(周氏)

昨年、中国内の映画総興収は3200億円超で、2300億円だった米国を抜き、中国は世界一の映画市場となった。外貨を稼げ、税収も見込める人気女優は政府にとってもドル箱のはずだが…。

周氏は「中国当局はどんなに人気者であろうとも、違法行為をすれば容赦なく処罰していく姿勢を見せています。中国芸能界の中には、戦々恐々としている者も多いのではないでしょうか」と話している。

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