小林可夢偉、2022年のデイトナ参戦を熱望。トヨタの動向次第で“最後の挑戦”となる可能性

 2度のデイトナ24時間ウイナーである小林可夢偉は、TOYOTA GAZOO Racingがル・マン・ハイパーカー(LMH)のトヨタGR010ハイブリッドを将来のIMSAに持ち込まない場合、2022年の“ロレックス24・アット・デイトナ”が「最後の挑戦」になる可能性があるため、来年のエントリーを確実なものにしたいと考えている。

 今月21~22日に行われたレースを制し、ル・マン24時間ウイナーとなった可夢偉。彼は近年、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の開幕戦に出場しており、2019年と翌20年にはウェイン・テイラー・レーシングの10号車キャデラックDPi-V.Rをドライブしてデイトナでの連覇を果たした。

 また、2021年シーズンはデイトナ24時間に加え、セブリング12時間とワトキンスグレン6時間、プチ・ル・マン(ロード・アトランタ10時間)の長距離レース4イベントからなる“ミシュラン・エンデュランスカップ”にも、アクション・エクスプレス・レーシングの48号車キャデラックDPi-V.Rのクルーとして参戦している。

 可夢偉はSportscar365に対し、フロリダのエンデューロに戻ることを希望しているが、LMDhやLMH規定のクルマでIMSAとWEC世界耐久選手権のトップカテゴリーに参入するメーカーが続々と現れる現在の状況のなかでは、2023年以降の出場が可能かどうか分からないと語った。

 WECのオーガナイザーであるACOフランス西部自動車クラブとIMSAによるプロトタイプカテゴリーのコンバージェンス(収束、収斂の意)の実現は、北米シリーズを戦っているいくつかのブランドがWECやル・マンでトヨタのライバルになることを意味する

 前述のとおり近年、可夢偉はキャデラックのDPiマシンのステアリングを握ってきたが、このアメ車ブランドも先日LMDhへの参入、ならびにWECとIMSAでのプログラム実施をアナウンスした。つまり、2023年からはトヨタのライバルメーカーになる予定だ。

 TOYOTA GAZOO Racngヨーロッパ(旧TMG)は、IMSAの主要レースでトヨタGR010ハイブリッドを走らせることを「当然、検討する」と表明している。しかし可夢偉は、もしその可能性が実現しない場合、来年のデイトナが最後のチャンスになると認識している。

「絶対にデイトナに戻りたい」とWECディフェンディングチャンピオンである可夢偉は述べた。

「将来何が起こるか分かりません。2023年にはLMDhとル・マン・ハイパーカーが一緒にレースをすることになっています。僕はトヨタのドライバーなのでIMSAのレースに(他メーカーのクルマ)で参加するのは来年が最後になるかもしれない」

「問題は契約です。トヨタでハイパーカーを運転し、他のメーカーでアメリカでLMDhをドライブしているとしたら、彼らにとってはハッピーではないかもしれません」

「なので来年が最後の挑戦になるかもしれないと思っています。そうなった場合はとても残念です。その後もデイトナに戻ってくることができれば間違いなく幸せです。IMSAのレースはとても楽しいです。あの場所のレースは本当にクールですから」

「あそこで働く人たちが好きです。彼らはモータースポーツに対してとても情熱を持っています。観客としてサーキットに行っても、見るべきレースがたくさんあります」

2019年から2020年にかけて、日本人ドライバーとして初めてデイトナ24時間連覇を飾った小林可夢偉(右)

■GTレースに出るのであればフルシーズンエントリーが理想

「また、アメリカのトラックも好きですね」と可夢偉。

「今年初めてワトキンスグレンでレースをしましたが、あのような感覚を味わったのは久しぶりでとても楽しめました」

 来年のデイトナ参戦に向けてプッシュしているかどうかを尋ねられた可夢偉は、「個人的にはできる限りやりたいと思っています。いつも皆と話すようにしている」と答えた。

「LMDhメーカーが(プログラムを)スタートする2023年を考えると、ポイントはメーカーとメーカーの間の契約になります。それがどうなるかは何とも言えません」

「現時点ではトヨタと一緒にアメリカに行くかどうかは分かりません。しかし、何人かのドライバーは幸運に恵まれるかもしれません」

 2023年以降、現在よりもデイトナでトップレベルのプロトタイプをドライブする可能性が低くなることから、可夢偉の選択肢の中にはGTDプロなどIMSAの他のカテゴリーが入ることも考えられる。

 しかし彼は、昨年のトタル・スパ24時間レースで経験したように、GT3マシンでの1回限りのレースには関心を持っていないと述べた。

 AFコルセが運営するフェラーリのWEC GTEプロチームを経てトヨタに戻ってきた可夢偉は、主要な耐久レースでGT3を走らせるためには、フルシーズンのプログラムをこなしたいと説明した。

「経験豊富な優秀なドライバーがたくさんいるので、(1戦限りのレースについては)検討したくない」と彼は語った。

「それはいくつかのGT3レースを戦えば分かることです。僕はクルマの中で一生懸命働きましたが、明らかに異なるスキルが必要でした。フィーリング(を掴むの)がとても難しいのです」

「普段プロトタイプマシンに乗っているため、GT3カーを走らせる機会は非常に限られています。慣れるためには何度もドライブして、クルマとのフィーリングを良くしていかなければなりません」

「もちろん、トヨタでこの種の仕事をしているとプロトタイプカーをドライブすることになります。正直なところ調整するのは簡単ではありません。だからこそGTレースで結果を出したのであれば、プロのGT3ドライバーとして集中したほうがいいと言いたいのです」

アクション・エクスプレス・レーシングからIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の耐久イベント4戦に参戦している小林可夢偉
2021年シーズンはデイトナ24時間だけでなく、ミシュラン・エンデュランスカップにも参戦中

© 株式会社三栄