メルカリが初の黒字に 今後の戦略は? 創業者の山田進太郎CEOに聞いた

 テレビCMでもおなじみの、スマホで誰でも簡単に売り買いが楽しめるフリーマーケットアプリを運営するメルカリが、2021年6月期連結決算で創業以来、初めて純損益の黒字化を達成した。「限りある資源を循環させ、より豊かな社会をつくりたい」との思いで創業した山田進太郎社長兼最高経営責任者=CEO=(43)に、決算の評価や海外展開など今後の事業戦略を聞いた。(共同通信=仲嶋芳浩)

 ―13年の創業以来、純損益が初めて黒字となったことをどのように受け止めていますか。

 「感慨はそれほどありません。フリマアプリの運営とスマートフォン決済『メルペイ』に注力し、着実に事業基盤が整ってきました。それに加えて、新型コロナウイルスの流行でなかなか家から出ることができず、家にあるものを(フリーマーケットアプリで)売ってみようという人も多く、業績にプラスの部分がありました。われわれが何かをやったというよりは新型コロナの影響によるものですし、コロナで苦しんでいる人もいるので素直に喜べることではありません」

オンラインでインタビューに応じるメルカリの山田進太郎CEO=8月12日

 ―黒字にはこだわりませんか。

 「ずっと黒字を続けるよりも、将来利益の最大化を目指していきます。感染症流行を受けて(飲食店など)メルペイ加盟店のためにできることはないかと考え、(インターネット通販を支援する)メルカリショップスを始めました。われわれは新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイス(電子市場)をつくるというミッションを掲げています。いろいろな機会がある中で、より良いサービスを提供できる可能性はたくさんあり、そうしたことをやっていくのが企業として重要だと考えます」

 ―国内の展開をどう考えていますか。

 「国内では利用者層が多様になっていて、特に中高年が増えています。利用者数は現在の1900万人超から3千万人、4千万人へと増やしていきたいです。将来的には、例えば信用情報や査定データの蓄積により、利用者が購入した商品をいつかメルカリに出品するのであれば、売却時の金額が事前に差し引かれた価格で購入できるような仕組みもつくっていきたいです。エンジニアやグローバル人材の採用は最も重要で注力する投資領域です」

 ―14年に進出した米国事業の現状は。

 「利用者は都市部だけでなく、全土に広がっています。米国の経済規模は日本より大きいので伸びしろがあり、これからも投資を続けます。日本のように存在感があるサービスにしていきたいです」

決算記者会見するメルカリの山田進太郎CEO=8月12日午後、東京都内(同社提供)

 ―米国以外はどうでしょうか。

 「米国に加えてグローバル展開を加速します。将来的には世界中にメルカリの顧客がいて、越境取引が当たり前になっている姿を目指します。現在は新型コロナの影響で現地に行くことは難しいですが、いろいろな調査をしているところです。欧州は一つの選択肢です。アジアやインドなどの新興国も含めていろいろな可能性を考えています」

 ―進出時期は。

 「新型コロナの状況次第ですが、今年中に発表するのは難しいので来年以降になります。自分たちでやるだけではなく、企業の合併・買収(M&A)などあらゆる選択肢を考えていきます」

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 やまだ・しんたろう 早大卒。13年コウゾウ(現メルカリ)を設立。19年9月から社長兼CEO。愛知県出身。

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