【新型コロナ】自宅療養者に届かぬ救いの手 埼玉と東京で「放置死」2事例判明

 ここ数日、首都圏の新規感染者数はピークを越えたかのような減少をみせているが、重症者は感染後数日してから発生するため、重症者数はまだ増え続けている。そんな中、30日の千葉県柏市の事例に続いて、31日はさいたま市と東京都杉並区で、結果的に自宅療養者を継続的にフォローせず「放置」した結果、亡くなったことが後で分かったというケースが相次いで明らかになった。

さいたま市の自宅療養の男性 死後2日程度経ってから発見

 さいたま市の発表によると、死亡していたことが分かったのは市内在住の60代男性。今月11日に感染が確認され、糖尿病の基礎疾患があることは分かっていたが、症状が軽かったため自宅療養となった。12、13日に市の保健所が健康観察を実施、酸素飽和度の値にも問題がなかったため「入院調整の必要なし」と判断。
県が都内の事業者に委託し運営している「宿泊・自宅療養者支援センター」で健康観察を続けるよう引き継いだ。
 しかし、支援センターでは引き継ぎを受けた13日から自動音声で1日4回男性に電話をかけても応答がなく、さらに19日から24日にかけては職員が直接3回架電したものの繋がらなかったという。
 その後27日、別の場所に住む家族が連絡がつかないことを心配し様子を見に行った際、心肺停止の状態で倒れているのが見つかった。警察によると男性は死後2日経っていたとみられる。

 なお男性には同居する妻がいるが、家庭内感染し同じく自宅療養していた。夫の家族が様子を見に来た際、同様に症状が悪化していたのを発見され、入院した。県は男性が亡くなった経緯については情報がないので答えられないとし、また、支援センターが本人と10日以上連絡が取れていなかったにもかかわらず、さらに3日間、家族が発見するまで結果的に何も対応がなかったことについても答えていない。

東京都杉並区に勤務の40代男性、勤務先で療養も死亡 保健所、自己判断で対応終了していた

 
 東京都杉並区では、先月末に感染判明した都内の40代男性が、家庭内感染を恐れ勤務先で自主隔離・療養していたところ、保健所と連絡が取れないまま今月初旬に亡くなっていたことが分かった。

 この男性は先月末、港区内のクリニックでPCR検査を受け陽性と判明。家族と同居していたため家庭内感染を防ぐ目的で、杉並区の勤務先で自主隔離して療養していたという。杉並区で療養していることは港区内の保健所でも把握し、杉並区の保健所が引き継いで担当した。

 しかし保健所によると、今月以降男性に何度電話しても繋がらず、杉並区の自主隔離先である勤務先を訪問しても会えなかったため「対応を終了した」という。ただ家族とは連絡が取れており、その家族によると5日には体調が悪化。その後亡くなっている状態で発見された。保健所は対応終了の際、家族や警察など関係先に連絡しておらず、このことが発見を遅らせる一因となったとみられる。

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