「生きていて良かった」福岡拠点に進化続ける50歳金メダリスト

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東京パラリンピック第8日の31日、自転車女子個人ロードタイムトライアル(運動機能障害C1~3)で杉浦佳子(50)=楽天ソシオビジネス、静岡県出身=がパラリンピック日本選手史上最年長の金メダリストとなった。福岡市に拠点を置くロードレースチーム「VC福岡」に所属し、九州ゆかりの選手で今大会初の金メダル。「本当に生きていてよかった」。表彰台の真ん中で涙を浮かべた。

トライアスロンが趣味だったが、2016年4月のレース中、自転車で転倒。記憶が途切れる高次脳機能障害になった。大好きだった宮部みゆきさんの小説は漢字が読めずに挫折。小学生レベルの計算ドリルからリハビリを始めた。当時45歳。リハビリの過程でパラサイクリングを知り、国際大会で優勝もした。事故直後から毎日の食事や練習を思い起こして書く「10年日記」を続けている。

初めてのパラリンピックとなった東京大会は1年延期。「大会時には50歳になるので、もう駄目だ…と。それでもコーチから『49と50は誤差だよ』と言われ、1年かけて頑張ろうと思った」。厳しい練習で自らを追い込み、状態を仕上げて本番に臨んだ。

「VC福岡」との出合いも大きかった。18年から不定期に合同合宿に参加。コロナ禍で海外でのレース機会が減ったこともあって、今年3月から正式に所属し「皆さんがフレンドリーで本当に温かい。障害のある私でも喜んで受け入れてくれたことが、何よりうれしかった」と感謝する。

レースの際はコーチの後ろでコースを試走し、カーブや加速のタイミングを把握して臨む。トラック2種目で入賞し、得意のロードで快走。「年齢のことは忘れていました」と笑った。9月3日には今大会最後の種目となる女子個人ロードレース(運動機能障害C1~3)を控える。「自分より若くて引退する選手をたくさん見た。厳しいのかもしれないけど、年を取ってもできるよね、と思ってくれる方がいればうれしい」。進化を続ける50歳が、世界の舞台で輝き続ける。(松田達也)