県内不動産業 空き家活用進む 所有者、地域双方利益に

DIY型賃貸借契約で空き家を改修した宮崎市内の放課後等デイサービス施設

 少子高齢化や人口減を背景に増え続ける空き家に、新たな価値を見いだす取り組みが県内の不動産会社で進んでいる。借りた家を自分好みに改修したり倒壊寸前の空き家を丸ごと引き取って新築住宅を建てたりと工夫を凝らし、新たな住み手へと橋渡ししている。

 国土交通省「住宅・土地統計調査」によると、2018年時点での県内の空き家数は8万4200戸。5年前より約1万戸増えており、空き家率も15・4%と過去最高となっている。
 「壁の色や床材を自分好みに」。不動産会社のlaf(ラフ、宮崎市)が2年ほど前から手掛けるのは、事前の合意があれば借り主の意向を反映した改修ができる「DIY型賃貸借」。14年に契約の手順などを定めたガイドラインを公表するなど、国も推奨する空き家活用の新たなスタイルだ。戸建てが中心だが、アパートなどにも広がりを見せている。
 貸主にとっては修繕費用がかからない上に、借り主自身が改修した部屋への愛着が生まれることで長期入居が見込める。借りる側は修繕費を負担する分家賃が下がるほか、合意があれば退去時の原状回復も不要だ。同社はこれまでに4件のDIY型賃貸借物件を仲介した。
 宮崎市内にある築40年の民家を改修し7月に開設した放課後等デイサービス施設もその一つ。作り付けの大きな本棚はそのままに、リビングの壁を落ち着いた青や黄色に塗り替えた。DIYにかかった費用は3万円ほどで、家賃も一般的な事業用店舗より5万円以上抑えられたという。デイサービスを運営するNeos Anemos(ネオスアネモス、同)の浜崎夏海社長は「発達特性のある子どもたちにとって、自宅のようにのんびりと過ごせる空間は何より大事。貸主さんの理解があったから実現できた」と満足している。
 ラフの小森久子代表社員によると、県内ではDIY可能な物件が少ないのが現状。近年はシール壁紙や敷くだけのフローリング材など、手軽なDIY商品が開発されており「子育て世代向けの住宅だけでなく、放課後デイやレストランなど多様な活用ができるのが魅力。気軽に空き家を貸せる方法として理解が広がれば」と話す。
 倒壊の危険がある空き家を丸ごと引き取ったケースもある。延岡市の不動産会社「コノハナ」は200万円超の解体費用がネックとなり処分を悩んでいた所有者から、土地ごと譲り受けて空き家を解体。敷地面積は約100平方メートルと狭いながらも、設計・施工を担当した地元工務店と相談しながら間取りとデザインを工夫し、2階建ての新築建売住宅によみがえらせた。7月に発売したところ、若い世代を中心に問い合わせが来ているという。
 空き家に関する相談は年々増えており、塩谷愛藍(あらん)社長は「新しい家ができれば地域内の人口が増える。空き家の所有者や地域双方に不利益にはならない活用方法として今後も手掛けていきたい」話している。

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