【動画】奮闘「渓流のクライマー」 和歌山県古座川町でボウズハゼ

上流を目指して岩肌を登るボウズハゼ(8月31日、和歌山県古座川町小川で)

 和歌山県古座川町小川にある景勝地「滝の拝」で、垂直の岩肌にくっついて登る姿から「渓流のロッククライマー」などの異名を持つボウズハゼ(ハゼ科)が滝登りをしている。夏の風物詩として親しまれているが、今年は例年にない8月の長雨が観察にも影響。ようやく河川の水位が落ち着く中、8月31日には上流を目指す群れを見ることができた。

 滝の拝は古座川の支流・小川にある県の名勝・天然記念物で、河原の岩盤にさまざまな形の穴(ポットホール)が開いているのが特徴。落差8メートルほどの滝がある。

 県立自然博物館(海南市)によると、ボウズハゼは頭部がお坊さんのように丸いことや藻類を食べる(草食性である)ことが名前の由来。国内では関東地方以西の太平洋側から琉球列島に分布している。

 川で産卵し、生まれたボウズハゼはすぐに海へ下って生活。ある程度大きくなると川へ戻り、数年かけて成長して産卵する。寿命は6~8年程度で、全長は最大20センチほどになるという。

 滝登りは、同じく藻類を食べるアユなど、より競争相手のいない環境で餌を食べて大きくなるための行動と考えられている。吸盤になっている腹びれで岩肌にくっつき、さらに口も吸盤のように使い、身をくねらせながら少しずつ登る。

 今年は8月上旬には滝の拝で滝登りをするボウズハゼの群れを観察することができたが、その後は天候が悪化し、長雨で河川が増水。下旬になってようやく観察しやすくなり、31日には10センチほどの大きさのボウズハゼ十数匹が、急流に逆らいながら、岩肌にくっついて上流を目指していた。

 自然博物館の平嶋健太郎学芸課長(48)は「シャクトリムシのように体を伸び縮みさせて大きな滝の岩肌を登る様子は、魚とは思えない印象を受ける。アユやサケのように華麗なジャンプで川を上る魚もいるが、ボウズハゼのように、地道に上る魚もいることを見ていただけたら」と、双眼鏡を使うなどして観察するよう呼び掛けている。

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