フェンシング「金」見延和靖 “番狂わせ”激戦は当たりのトーナメントだった【メダリストが明かす東京五輪舞台裏】

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優勝を決め、加納(左)に駆け寄る見延(右2)/(C)共同通信社

【メダリストが明かす東京五輪舞台裏】#6

見延和靖(1)
(34歳、フェンシング男子エペ団体、金メダル/ネクサス)

◇ ◇ ◇

歴史を動かした。

日本フェンシング界に初めて金メダルをもたらしたエペ男子団体(世界ランク8位)。1回戦で米国(同10位)に最大8点のリードを許しながら逆転勝利を収めると、準々決勝では世界ランク1位のフランスを撃破した。

「個人戦で振るわない結果に終わってしまったのが逆に良かったのかも(自身は10位。山田優の6位が最高順位だった)。メンバー全員が団体でもう一度集中しやすくなった。もうひとつは男子フルーレの敷根崇裕の活躍が結構大きかった。結果はベスト4でメダルには届かなかったけど、チームみんなで観戦しながら熱くなって、『フェンシングは見ていても楽しい。次は僕たちだ』と盛り上がりました」

■強豪ROCや世界ランク1位の仏を撃破

敷根の熱戦から4日後、倒した相手は強豪のROC(ロシア・オリンピック委員会=世界7位)やフェンシングのお膝元フランス。一見すれば番狂わせに映る快挙も、見延には“必然”だった。

「フランスやROCは確かに優勝候補のチームですが、意外と日本との相性はすごくいいんです。フランスとは直近の結果でいうと2連勝中。逆に、スイスや中国に嫌な印象を持っていた。今回、自力で出場枠を取れず、開催国枠で一番低いシードからのスタートになったので覚悟していたんですけど、いざトーナメント表が発表されたとき『あれっ?』と。これは意外と当たりかもしれないなと。一見すると厳しいトーナメントでも、僕たちとしては突破する糸口の見えたトーナメントでした」

■後輩に食事の誘いを断られる いい意味で「フラットな関係」

フェンシングの団体戦は4人が1チームとなって戦い、そのうち1人はリザーブメンバー。東京五輪では「一度リザーブと交代すると、退いた選手はそれ以降の試合に一切出られない」という特別ルールがあった。見延は1回戦の米国戦の第8ピリオドでリザーブの宇山賢(29)と交代。決勝まで応援に徹した。

「このルールは難しかった。普段(の試合)だと僕たちは全員で戦うチーム。交代してもどこかで戻してという感じでやってきた。1回しか代えられないとなると、賭けに近いところがあるので、その判断を見誤ると取り返しのつかないことになる。とはいえ、試合の流れを読むと代えるべきだったと感じています。点差をつけられた段階で(自分の)体の硬さやこわばりが残っていたので、流れを変えるとしたら、あそこが最後のチャンスでした。あそこで宇山選手を投入するのは大きなメリット。彼はトリッキーなプレースタイルで大きく流れを変えてくれる、起爆剤となる存在なんです」

メンバー4人の中で見延は唯一、リオで五輪を経験した最年長者。大会期間中は貴重なコミュニケーションの場として、食事は常に同じタイミングで取っていたという。

「僕が『飯行こうよ』と言っても、後輩から『今はちょっと、まだ腹減ってないです』と断られることもありますが(笑い)。いい意味でフラットな関係ですね」

そんな、たわいもない会話すら奪ったのが新型コロナウイルスだった。五輪直前までメンバーとの対面を厳しく制限。直接会って話せないことが見延を苦しめた。そこにはフェンシングの持つ特性があった。=つづく