アフターコロナで需要が上がる職種・下がる職種とは? データでみる日本の労働市場の現況と未来。

新型コロナウイルス感染症の流行に伴い「新しい生活様式」が提唱されるようになりました。そうした動きの中で働き方も大きく変化。リモートワークの拡大やIT技術を活用した自動化が加速し、労働をめぐる環境や状況は大きく変化しました。

コロナ以後、私たちの仕事はどうなるのでしょうか? 今回はダボス会議で知られる世界経済フォーラム(World economic forum)が発表したレポート「The Future of Jobs Report 2020」から仕事の近未来を考えていきます。

今後5年間で需要が上がる職種・下がる職種とは? データとビジネスリーダーの知見から探る職業とスキルの未来

パンデミックに伴う世界的な不況が続く中、労働市場の見通しは不確定になっています。

このレポートでは、さまざまなデータとビジネスリーダー(最高経営責任者、最高戦略責任者、最高人事責任者など)の知見をあわせ、労働市場の現況と今後5年間に起こり得る変化について調査しています。

報告によるとコロナ禍によって機械化が加速することで今後8700万人の雇用が削減されると予想されているそう。一方でIT技術を要する新たな職種の需要拡大に伴い9500万人の雇用が生まれるとされています。

さらにレポートでは今後需要の拡大が見込まれる職種と需要の減少が予想される職種が10種ずつ紹介されています。

需要の拡大が見込まれる職種


1

データアナリスト・データサイエンティスト

2

AIや機械学習のスペシャリスト

3

ビッグデータ関係のスペシャリスト

4

デジタルマーケティング・戦略のスペシャリスト

5

プロセス自動化技術のスペシャリスト

6

ビジネス開発の専門家

7

DX(デジタルトランスフォーメーション)のスペシャリスト

8

情報セキュリティアナリスト

9

ソフトウェアおよびアプリケーション開発

10

IoT(モノのインターネット)のスペシャリスト

需要の減少が予想される職種


1

データ入力担当者

2

管理および事務局長

3

会計、帳簿管理など経理担当者

4

会計士および監査人

5

組立および工場労働者

6

ビジネスサービスおよび管理マネージャー

7

クライアント情報およびカスタマーサービス

8

ゼネラルマネージャーおよびオペレーションマネージャー

9

機械工や機械修理業者

10

資材記録および在庫保管担当者

今後需要が高まる職種では、エンジニアを始め、AIや機械学習、DXやIoTの必要が示唆されています。一方でデータ入力や経理や会計周りの職種などIT技術の向上で様々なツールが生まれる中で自動化可能な職種の需要は減少が予想されています。

その他、さまざまなツールによって職種をまたいだ連携が可能になり、マネージャー業なども需要低下が見込まれています。

しかしながら職種を変えると言ってもどんなスキルが必要なのか判断するのはなかなか難しいもの。そこでさらに今後必要とされる10個のスキルも紹介しています。

1

分析的思考とイノベーション

2

アクティブラーニングと学習戦略

3

複雑な問題を解決できる能力

4

批判的思考と分析

5

創造性、独創性とイニシアチブ

6

リーダーシップと社会的な影響力(インフルエンス力)

7

技術の使用、監視と制御

8

リーダーシップと社会的影響

9

復活力やストレス耐性と柔軟性

10

推論、課題解決力と発想力

ここで必要とされるスキルはエンジニア的な技術はもちろん様々な場面で活用されるような分析能力や独創性さらに SNSの台頭に伴いインフルエンス力なども事例として挙がっています。

日本の雇用の現況は? 地域別レポートから考える日本の労働の未来

「The Future of Jobs Report 2020」では、主要国について地域ごとに労働市場についての詳細なデータを紹介しています。

その対象となる国の中には日本も含まれています。レポートによると日本の労働人口は9800万人とされ、 そのうち50.8%がデジタル関連のスキルを有しているとのことです。

日本ではコロナ不況に伴い2020年の第二四半期には失業率が0.4%増加しています。

さらにレポートではワークスタイルの変化が要求される中でそれに伴う戦略を企業にヒアリング。日本においてはテレビ会議ツールを始めとしたデジタルツールの使用によって「作業プロセスのデジタル化を推進する」と回答した企業が93.5%、また、「リモートで作業する機会を機会を増やす」と回答した企業が83.9%となっています。一方でスキルアップや再教育プログラムなどを推進する」のように人員が必要になる取り組みをおこなうと回答した企業は38.7%に留まっています。

さらにテクノロジー関連の採用で対象としている職種について、調査対象の企業の回答を見ると以下のようになったということです。

人工知能(機械学習、ニューラルネットワーク、NLPなど)

97%

IoTとインターネットに接続可能な端末(コネクテッドデバイス)

97%

ビッグデータ分析

95%

暗号化とサイバーセキュリティ

92%

VRおよびAR

83%

Eコマースとデジタル貿易

81%

テキスト、画像、音声処理

78%

ロボット、非ヒューマノイド(産業オートメーション、ドローンなど)

68%

ブロックチェーンなどの分散型台帳技術

60%

ロボット、ヒューマノイド

59%

AIやIoTの需要が高い一方、DXやクラウドコンピューティング、3Dモデリングなどの需要は高くないことが伺えます。

専門的な技術が必要とされる職種の需要が高まる中、スキルアップに向けて企業はどのような対策をとっているのでしょうか? レポートでは対象企業にスキルアップのためにどのような機関を使うのかという調査が行われています。

社内学習と開発

40.4%

外部のオンライン教育

20.3%

プライベートトレーニングプロバイダー

18.5%

私立教育機関

7.1%

公立トレーニングプロバイダー

7.1%

公立教育機関

6.6%

回答した企業のうち40%が社内学習などに留まっており、私立や公立の教育機関を利用するという企業は10%未満となっています。

こうした日本企業の回答の傾向としては、スキルアップのための人員の導入や教育支援についてはあまり積極的ではない一方でデジタルツールなど簡単に導入できる部分については積極的に推進されるという傾向が見られます。

まとめ

新型コロナウイルス感染症のパンデミックに伴い、これまで以上にデジタル化が進んでいます。

企業の目線から見ると便利で安価なデジタルツールの導入に伴って様々な人員が削減できるというのは魅力的かもしれません。一方でデジタルツールは人の暮らしを補助するものであって、それによって失業者が増えて人々が困窮してしまうと本末転倒になります。

そうした中でデジタルツールをきちんと活用してより効率的で創造的な仕事ができるように人々のスキルアップを援助することが非常に重要になってきます。人間と機械そのバランスの中でより良い未来を模索するための岐路が迫っているのかもしれませんね。

【参考引用サイト】
・ <a href="https://www.weforum.org/reports/the-future-of-jobs-report-2020" rel="noopener noreferrer" style="font-size: 0.75rem;" target="_blank">The Future of Jobs Report 2020</a>

(大藤ヨシヲ)

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