ジョニー・デップ主演映画「MINAMATA」で描かれた実在ヒロインが高校生と交流

米人気俳優のジョニー・デップ(58)が製作、主演を務めた映画「MINAMATA」(アンドリュー・レヴィタス監督、9月23日公開)の試写会が1日、東京・世田谷区の田園調布学園で行われ、作品の主人公として描かれた写真家ユージン・スミス(1918-1978)の元妻アイリーン・美緒子・スミス氏(71)と同校高等部生徒によるオンライン交流会が実施された。

ユージン氏とアイリーン氏は1975年に写真集「MINAMATA」を発表し、チッソ水俣工場の廃水を原因とした公害、水俣病を世界に伝えた。同学園高等部では学習体験旅行で熊本県水俣市を訪問するなど、水俣病や公害病への理解を深める学習に力を入れており、今作で描かれた写真集完成に至る物語の感想を基に、意見や質問が相次いだ。

生徒からは「劇中で、水俣の人たちが初めてユージンさんに賛同したシーンがすごく印象に残っています。また多くの試練を乗り越えたユージンさんとアイリーンさんふたりの芯の強さにとても感動しました」などの感想が次々に述べられ、アイリーン氏との質疑応答に続いた。

「劇中で水俣の写真を撮ることをユージンさんに提案していましたが、そもそも水俣の人たちとどのような交流があったのですか?」という質問に、アイリーン氏は「実は、私たち二人とも、水俣のことについては何も知らなかったんです。当時、私は富士フィルムの仕事でユージンに初めて会いました。そんな中、日本から元村和彦さんという方が来て、水俣のことを教えてくれたんです。初めて水俣病のことを聞いて、驚き、すぐ水俣に行くことに決めました」と当時を振り返った。

「水俣病の患者さんへの取材を進めることについて、抵抗感はなかったのですか?」という質問には「病気を見せて記録させる訳なので、簡単なことではありません。でも、水俣の皆さんは安心できる人になら、撮ってもらっても良いというのはありましたね。その環境づくりのために、既に水俣で撮影をしていた方達に、患者さんなど紹介してもらいました。大切なのは、どんどん主張して自分の気持ちを伝えることです。すると、患者さんたちも自分達の熱意を積極的に受け入れてくれました」と答えた。

「公害や、環境問題と向き合うときに、どのような思いで問題に接するべきですか?」という質問については、環境問題に対する持論を語りながら「一番重要なことは、自分の長所をどう生かすかだと思います。自分にしかない長所は宝です。そして、気になったことがあれば、どんどん聞いていくことが重要。周りを気にせず動くことも大切だと思います。目の前で起こっていることについて反応して行動する。そうすれば自然に前に進んでいけると思います」と自身の半生を振り返りながら、アドバイスを送る場面もあった。

「抗議活動の現場など、ユージンについて行って怖いと思ったことはありますか?」と尋ねられると、「暴動の際、髪の毛などを引っ張られたりしましたけど、怖かったという覚えはないです。カメラを手に持っているので、記録しないと!と集中していたからですね」と語った。

最後にアイリーン氏は、生徒たちに向けて「どうしても伝えたかったのが、この映画の素晴らしいところは、ジャーナリズムの重要性を伝えているところだと思います。映画を観て、改めてジャーナリズムについて考えるきっかけを持ってほしいと思います。そして、映画で描いた出来事は、遠い昔の人の話のように思えますが、今に繋がっているんです。被害者が立ち上がって、多くの人々が関わり、実現したことというのは、現在の環境にも良い影響を与えています。その時代の人々が頑張ったおかげで、今の自分がいる。そして、次世代も行動して世の中を良くしていき、繋げていくことが重要です。皆さんも元気で頑張ってください。ありがとう」と感謝とともに、生徒たちにエールを送った。

アイリーン・美緒子・スミス氏と生徒との交流会
「MINAMATA」ポスタービジュアル (c)Larry Horricks

(よろず~ニュース編集部)

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