初の“女子甲子園”V経験生かした神戸弘陵 新チーム初大会制し「自信になっている」

21個目のアウトは新主将の正代がグラブに収めた【写真:喜岡桜】

先輩が築いた「日本一のチーム」、プレッシャーを感じながらも頂点に

初めて決勝が阪神甲子園球場で行われた、全国高校女子硬式野球選手権の閉幕から3日後。各校が2年生以下の新チームで戦う「第12回全国高等学校女子硬式野球ユース大会」が8月26日に開幕、甲子園での決勝を制した神戸弘陵(兵庫)が3年ぶり4度目の優勝を成し遂げ、2冠を達成した。

聖地での試合を終え、翌日の夕方には愛知県へ移動。新体制でユース大会へ挑んだ。準々決勝ではクラーク記念国際(宮城)との延長8回タイブレークを制し、準決勝では2019年夏王者の作新学院(栃木)との接戦を逃げ切り決勝へ進出した。

8月31日、愛知県の平島公園野球場で行われた福知山成美(京都)との決勝では、新主将になった正代絢子(2年)が3回2死一、二塁で中越適時二塁打を放ち2点を先制。4回には並木加奈(2年)のスクイズでもう1点を追加した。投げては甲子園で先発した日高結衣(2年)が被安打3本、9奪三振で完封し3-0で勝利した。神戸弘陵は2016年から同大会を3連覇しており、優勝回数を最多の「4」に伸ばした。

正代は「3年生がいるときは先制されることが少なかったのですが、(今回の大会では)苦しい試合もありました。先輩が引退しても『日本一のチーム』と呼ばれるので嬉しいのですが、選手ひとりひとりがプレッシャーを感じています」と大会を振り返った。高知中央との1回戦や準決勝、決勝で先制タイムリーを放ち2冠達成に貢献した。

左打者への変化球に更に磨きをかけると語る日高結衣【写真:喜岡桜】

甲子園でも先発した左腕・日高が決勝戦で完封勝利「仲間を信じて」

夏の選手権からエースの島野愛友利(3年)に代わり先発を担うことが多くなった左腕・日高は、この日も内角と外角に投げ分けるコントロールの良さを発揮。5回の1死一、三塁の場面でもテンポを崩すことなくピンチを切り抜けた。

「甲子園で投げた経験が自信になっていますよ。特に作新戦の日高にそう感じました」と石原康司監督が振り返るのは、準決勝の6回1死一、三塁からの緊急登板だ。先発の佐藤なつみ(2年)から継投した樫谷そら(1年)が作新学院打線につかまり、2-2の同点に追いつかれた直後の登板だった。先制の中前適時打を含む2安打の作新学院・石田香澄(2年)と4番の井上なつき(2年)を2者連続右飛に打ち取った。

日高は「ヒヤヒヤした場面でしたが、マウンドに立ってからは仲間を信じて投げられました。甲子園(での登板)が緊張したので、それに比べれば大丈夫です。甲子園のマウンドを経験できたのは大きいです」と振り返り、どんな場面でも信頼される投手になると力強く語った。

決勝で完投した福知山成美のエース・伊藤春捺【写真:喜岡桜】

2014年ユース女王の福知山成美、伊藤が神戸弘陵から9奪三振

一方、準優勝した福知山成美の長野恵利子監督は「うちはスター選手がいない中、よくここまで来られたと思います」と選手たちを称えた。2009年創部の、関西では1番長い歴史がある女子野球部だ。

背番号1を背負い完投した伊藤春捺(2年)は「王者に挑むつもりで投げました。目立った選手はいないけど、チームワークで粘って輝いていこうと思います」と新チームの特徴を説明した。身長158センチの右腕が投じるカーブやスライダーは大きく変化し、神戸弘陵打線から9つの三振を奪った。今大会では警戒している相手への失投があったとし、シーズンオフの練習での成長を誓った。(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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