「ほぼ毎回アンダーシャツを…」元ロッテ・チェン、故郷でのデビュー戦で浴びた“洗礼”

統一戦に先発した楽天モンキーズのチェン・グァンユウ【写真提供:CPBL】

8月24日の統一セブンイレブン戦に先発、5回1/3を5安打2失点だった

昨年までロッテに在籍し、故郷・台湾の楽天モンキーズに今季加入した陳冠宇(チェン・グアンユウ)投手が8月24日、台湾北部にある桃園市の桃園国際球場で行われた統一セブンイレブン・ライオンズ戦に先発。台湾プロ野球デビューを果たした。

陳冠宇は7月12日に行われた台湾プロ野球のドラフト会議で、楽天モンキーズから1位(全体2位)指名を受けた。8月9日に入団記者会見が行われ、2年半総額で台湾元2100万元(約8290万円)プラス出来高200万元(約790万円)という契約内容、背番号が「12」であることが発表されたほか、各種関連グッズも紹介された。この時点では、後期シーズンの日程は発表されていなかったが、楽天の曾豪駒監督は本拠地の桃園で開催される後期開幕戦、8月24日の先発を“フライング予告”していた。

登板当日、球場にはロッテ時代のユニホームやグッズを手に応援するファンの姿も見られた。楽天モンキーズはこの試合のために陳冠宇のイラストや「チェンチェン大丈夫です!!」の文字などが刻印された試合球を準備。さらに入場者に「観戦証明書」を配布するなど、ドラフト1位左腕の初登板を盛り上げた。陳冠宇は、「チェ~ン、チェ~ン大丈夫~」と日本語で連呼するオリジナル応援曲と共に登板。初球の146キロ直球が内角高めに決まると、スタンドからは歓声が沸き起こった。

初回を3者凡退に抑えて迎えた2回表、昨季本塁打と打点の2冠王に輝いた統一の4番・林安可に初球を捉えられ、中堅左のスタンドに飛び込むソロ本塁打で先制点を許した。しかし3回から5回まで毎回走者を出したものの要所を締め、5回1失点と試合をつくった。味方打線も3回に2点を奪って逆転。5回にも追加点をあげて、3-1とリードを広げた。

6回、先頭打者に四球を与えた後、林安可をサードフライに抑えたところで許銘傑・投手コーチ(元西武)がマウンドへ。ここでお役御免となった。勝利投手の権利をもって降板したが、DeNA時代の同僚で2番手の左腕・王溢正(ワン・イーゼン)が四球を与えた後、逆転3ランを浴び、台湾プロ野球初勝利はお預けとなった

「先発投手として最低6イニングを投げたい」

台湾プロ野球での初登板は93球を投げ、5回1/3を5安打、2四球、自責点2という内容。奪三振はなく、直球の最速は147キロだった。試合は楽天が6回に4点を奪い再逆転すると、8回にも5点を追加し12-4で統一を破り、後期開幕戦を勝利で飾った。

陳冠宇は今年の年初から社会人チームで半年間プレー。先発登板はあったものの、プロ野球での先発はロッテ時代の2018年4月7日(対日本ハム)以来、実に3年ぶりだった。

試合後、先発登板に向けたメニュー立案、スケジュール調整をしてくれたチームに感謝した上で「練習で試合の強度まで高める難しさを感じた。先発投手としては最低6イニングを投げたい」と述べた。そして、真夏の台湾での登板については「ほぼ毎イニング、アンダーシャツを替えた。台湾は本当に暑い」と苦笑した。

投球内容については「まずまずだった」としたものの、「少し慎重になり過ぎて、ボール球が増え、リズムが悪くなってしまった」と振り返った。奪三振がなかったことには「変化球の調子が今ひとつだった。次回以降、修正していきたい」と語った。

逆転を許し降板した王溢正とも、笑顔でコミュケーションをとっていた。勝ち星がつかなかったことについて記者に問われると、「うちの打線をもってして、勝てないかもと心配になると思う?」と逆に質問。「全く気にはしていない」ときっぱり語り、「試合に勝って、後期シーズンをいい形でスタートできた。パフォーマンスを維持し、毎試合主導権を握りたい」と今後の意気込みを語った。

日本ファンへ「感染症の流行が落ち着きましたら、ぜひ、台湾へ試合を見に来てください」

そして、王溢正のブルペンでの準備が十分ではなかった可能性について触れ、「降板した場面では、次の打者(蘇智傑)も左打ちだということをすっかり忘れ、許銘傑コーチに『疲れました』と言ってしまった。自分がもう一人投げてから降板すれば、直接、右投手に交替できた。今後はしっかり注意したい」と反省も口にした。

陳冠宇の初登板ということで、球場には多くのメディアがかけつけた。試合は4時間半を越え、午後11時過ぎにゲームセット。メディアによるインタビューは12時近くまで続いたが、かつての在籍チームのファンや関係者へ向けたメッセージを依頼すると、疲れもみせずに笑顔で答えてくれた。

「千葉ロッテマリーンズ、そして横浜DeNAベイスターズを始めとした日本の野球ファンの皆さん、私の台湾プロ野球初登板に注目していただき、ありがとうございます。日本でお世話になったコーチの方々、球場で声援を送ってくれたファンの皆さん、感染症の流行が落ち着きましたら、ぜひ、台湾へ試合を見に来てください」

台湾のファンに加え、日本のファンも球場で陳冠宇に声援を送る。そんな日が1日も早く訪れることを心から願いたい。今季中は日台間の自由な往来は厳しそうだが、台湾プロ野球は有料のOTT「CPBLTV」で、日本からも視聴が可能だ。楽天の曾豪駒監督によると、少し長めの調整期間をとり、次回登板は9月4日の富邦ガーディアンズ戦(桃園)を予定。今後はできるだけ週末に登板させる方針だという。「サタデーチェン」、「サンデーチェン」の活躍に注目だ。(「パ・リーグ インサイト」駒田英)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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