【日本人が知らない神社の秘密3】お伊勢参りは日本人の旅行の原点

全国にある神社の数は8万社以上で、コンビニの数より多いといわれています。そんな身近な存在でありながら、意外と神社については知らないことが多いのではないでしょうか?そこで、『日本人が知らない神社の秘密』(火田博文・著/彩図社)から、お参りがもっと楽しくなる神社にまつわるお話を抜粋して紹介します。今回は、お伊勢参りが日本人の旅行の原点だという説について。

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パワースポット巡りは江戸時代からあった?

「寺社ガール」なる女子は、いまや珍しいものではなくなった。神社やお寺を巡り、パワースポットを体感し、ご朱印を集め、その土地のグルメや温泉を楽しむ……そんな旅のスタイルは、実は江戸時代から続いているものだ。原型になったのは伊勢神宮への参拝旅行、いわゆる「お伊勢参り」だ。

伊勢神宮には、御師と呼ばれるいわば広報のような人々がいた。彼らは日本全国を渡り歩き、神宮のご利益と歴史とを説いて回っていた。人々は「神社の中の神社」に興味を抱くようになっていたのだ。そんな中、徳川幕府によって戦国時代に終止符が打たれ、街道を藩ごとに閉ざしていた関所が撤廃される。いわば国境がいっせいに自由に往来できるようになったのだ。加えて幕府は、経済活動の促進のため、街道の道路インフラを整備する。時代が安定してくると庶民の生活にも余裕が出てきて「お伊勢参り」の一大ブームが到来するのだ。特に、20年ごとの式年遷宮の翌年「お陰年」に参拝することが人気となり、数百万人もの人々が伊勢神宮に押し寄せた年もあったという。

ご当地グルメや旅のお土産も

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お伊勢参りの隆盛から派生して、熊野三山の神社を巡る旅も流行した。そして伊勢や熊野のあとは、京や大坂を見物し、各地の名物に舌鼓を打った。各所で郷里の人々にたくさんのお土産を買って、帰っていったのだ。

日本人の旅の原点ともいわれるお伊勢参り。江戸の人々と同じように、一生に一度は訪ねてみたいものだ。

【出典】

『日本人が知らない神社の秘密』(火田博文・著/彩図社)

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