「心からの謝罪を」池袋暴走に実刑判決 娘と孫を失った沖縄の遺族の思い

 2019年4月に東京・池袋で乗用車が暴走し、県出身の松永真菜さん=当時(31)と、長女莉子ちゃん=同(3)が命を奪われた事故。飯塚幸三被告(90)に2日、禁錮5年の実刑判決が言い渡された。「心に大きな穴が空いてしまっているが、少しだけ前を向いて歩いて行きたい」。真菜さんの父・上原義教さん(64)は心境を語り、飯塚被告に「心からの謝罪を」と改めて求めた。

 「判決が何年でも真菜と莉子は戻ってこない」。上原さんは会見で悔しさをにじませた。

 事故から約2年半。「ひとつの区切り」と位置づけた判決公判には、真菜さんの弟にあたる大学生の長男(23)も連れ添った。

 事故後、これまで飲まなかった酒で悲しみを紛らわせた。一緒に杯を傾けて、眠れない夜に連れ添ってくれたのも同居する長男だった。長男の記憶には、17年に急逝した母親に代わり面倒を見てくれた真菜さんの面影が残る。上原さんは「悲しさ、つらさを分かち合ってくれた。彼がいたからここまでやってこれた」と寂しそうに笑った。

 被害者参加制度を利用し、会見にも共に臨んだ真菜さんの夫、拓也さん(35)と傍聴を重ねた。

 昨年10月から続いた公判で、つらかったのは飯塚被告が自身の過失をかたくなに認めなかったことだ。

 上原さんは「人には誰しも過ちがある。でも、過ちを認めてくれない人と向き合うのがどれほど苦しいことか」と唇をかんだ。

 判決では「過失はない」とする主張を曲げなかった飯塚被告に対して、裁判長から遺族への謝罪を求める説諭があった。上原さんは「私たちに寄り添ってくれた」と少し表情を和らげ、「飯塚さんも今まで謝るチャンスがなかったかもしれない。今日の判決を聞いて心からの謝罪をしてほしい」と続けた。そして「私たちの心をもっともっとみじめにする、控訴だけはしないでほしい」と率直な思いを語った。

 県内でも交通事故は絶えない。被害者遺族のつらさを知るだけに、2月に浦添市で1歳の男児を含む5人が死傷した事故の現場にも足を運び、花をたむけた。

 「悲惨な思いをする交通事故がなくなってほしい」。思いを共有する“家族”の拓也さんと共に、これからも交通事故の防止に関する活動を続けるつもりだ。【関連ニュース】
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