ランドローバー 新型ディフェンダー・ディーゼルエンジンとショートボディに試乗! 乗って分かった真の実力とは?

72年ぶりというモデルチェンジと、先代を思わせるデザインなどで人気を博しているランドローバー新型ディフェンダー。日本導入1年を経て、ようやくショートボディである「90」と、直6ディーゼルターボを搭載した「110」が上陸。今回はオフロードとオンロードで両車を比較。どちらがよりディフェンダーらしいのか、その答えを探ってみた。

ランドローバー 新型ディフェンダー90

オフロード、オフロード両方いける新型ディフェンダー90の絶妙なコストパフォーマンス

ランドローバー 新型ディフェンダー90

真打ちにはトリを務めていただくとして、まず筆者が推したいのはショートホイールベース版のディフェンダー90だ。その理由は、絶妙なコストパフォーマンスにある。

搭載エンジンは、2リッターの排気量を持つ直列4気筒ターボ(300PS/400Nm)のみ。110シリーズにラインナップされる直列6気筒ディーゼルターボ(300PS/650Nm)が選べないのは残念だが、このエンジンが3ドアのショートホイールベースボディに載ると、非常にバランスが良いのである。

短さと軽さの差が操作性に生きてくる

ランドローバー 新型ディフェンダー90

ディフェンダー90のスリーサイズは、全長4510mm×全幅1995mm×全高1970mm(エアサス装着車)。ホイールベースは、2585mm。ディフェンダー110との違いは端的にホイールベースの長さ分であり、その差は435mmとなっている。

ショートホイールベース化によって得られる恩恵は、性能的に言うとまずブレイクオーバーアングル(前後輪の接地点から車両中央部をつないだ角度)の拡大にある。ディフェンダー110が27.8°に対し90が31°のアングル角となることで、床面から腹下までのクリアランスを大きく取ることができるようになり、悪路走破性が向上するというわけだ。ちなみに前後バンパーのアプローチアングルは37.5°、デパーチャーアングルは40°でどちらも同一。

さらにオンロードの走りにおいても、140kgも軽くなった車重と、6.1mから5.3mに短縮された最小回転半径が、その操作性に俄然生きてくる。

カメラやセンサーで確認をしながら池やぬかるみを走破

ランドローバー 新型ディフェンダー90

残念ながら筆者が試乗した日は、神奈川県が記録的な豪雨に見舞われた影響から、山の傾斜を利用したオフロード走行と渡河水深性能を体験するステージは試せなかった。

ランドローバー 新型ディフェンダー90

先行して撮影に及んだ編集部によれば、ディフェンダー90は水深40cmほどの池の中を、3Dサラウンドカメラとウェイドセンシング(水深探知機能)を使って、巧みに走り切ったという。また雑木林を切り開いた斜面ステージも、前輪が進むべき道筋をバーチャルで再現してくれる「クリアサイトグランドビュー」によって、岩や石を確認しながらぬかるむオフロードをクリアすることができたと聞いた。

こうしたアドベンチャーこそ体験できなかったものの、筆者も周遊コースではそのトラクション性能の高さをじっくりと体感することができた。

ランドローバー 新型ディフェンダー90

降りしきる雨のなか、所々アスファルトが剥がれた路面にタイヤを食い込ませたディフェンダー90は、僅かなアクセル開度でも必用なトルクを正確に引き出し、そのボディをゆっくりと確実に引っ張り上げる。ランドローバー自慢の4輪制御装置である「テレインレスポンス」を使い分ける必用すらなくコースを走り抜けたが、まるで足裏と路面がつながっているかのような駆動力の伝わり方には、本当に惚れぼれした。

新型モノコックボディが生み出す頼もしい乗り心地

キックバックのない、穏やかなハンドリング。ショートホイールベースとなったことで、直角に切り込むようなカーブでも、身のこなしがとても軽い。この程度でラダーフレームから切り替わった新型モノコックの真価を判断することはできないが、その屈強な剛性感を持つボディにエアサスを組み合わせた乗り心地は頼もしい。こんなクルマで別荘地やキャンプ場までの荒れた道を、泥だらけになるのもおかまいなしに走って行けたらどんなに素敵だろう。

ランドローバー 新型ディフェンダー90

こうした性能は、確かに普段の生活には、ほとんど必要のないものだ。

しかし本格オフローダーだからこそディフェンダーには高いボディ剛性とリニアな駆動特性が与えられており、結果これが質感となって乗り味に反映されるのだと筆者は思う。

またモニターをタッチするだけで8方向の状況が瞬時に確認できる「3Dサラウンドカメラ」は、街中でこそ活きるだろう。駐車や狭い路地を抜ける際、この幅広で背の高いボディの死角をなくすためには、実に有効な装備である。

ショートボディ+2リッターターボは走らせて楽しいパッケージ

ランドローバー 新型ディフェンダー90

こうしたオフロード性能以上に嬉しかったのは、ディフェンダー90が、予想以上に高いオンロード性能を備えていることだった。

最初はショートホイールベースの影響かと思われたその小刻みな横揺れも、オールテレインタイヤからノーマルタイヤに履き替えたことで、しっとりとした収まりを見せていた。

そして何よりその走りが、同じエンジンを搭載する5ドアよりもずっと機敏である。

3ドアでもその車重は2100kgもあるから、絶対的な加速感は驚くほどではない。しかし、アクセルを踏み込んだ際の初期トルクはこのボディを走らせるに十分であり、速度を乗せて行く過程でも8速ATがこれを上手にクルージングさせて行く。

ランドローバー 新型ディフェンダー90

エンジンサウンドはゴロゴロとした洗練さに掛ける音色だが、その少し野蛮な感じもキャラクターに合っている。そしてアクセルを踏み続ければ、回転が高まるに従ってそのトーンが揃って行き最後まで元気に吹け上がる。

パワー感やサウンドがちょうど良く、走らせていて実に楽しい。

逆を言えば5ドアボディだと、このエンジンではややキック力が足りない。街中でのストップ&ゴー、高速道路での合流や追い越し。こうした場面で十分な加速が得にくいことから、常に先を見通した運転マネージメントが必用になる。

それも疲れるので、「それならゆっくり走りましょうか」という気持ちになる。すると余計にその大きさが、気になってくるのである。

全幅は3ドアも同じだから、そこにはやはりショートホイールベースの小回り性能と、パワー・ウェイト・レシオが効いているのだろう。

120万円高いマイルドハイブリッドモデルはトータルで考えるとお得!? 燃費向上とスムースな走りが魅力

ランドローバー 新型ディフェンダー110

こうした要求に応えるのは常に大排気量エンジンの役目であり、まさしく3リッター直列6気筒ディーゼル・ターボを搭載したディフェンダー110は、5ドアのロングボディに大きな余裕を与えていた。

ちなみにこの直6ディーゼルには48Vのマイルドハイブリッドシステムまで搭載しており、スタート時はBiSG(ベルトドライブ式インジェクションスタータージェネレーター)が発進をアシストして、この巨体をスムーズに転がして行く。

スムーズで上質な走りが味わえる直6ディーゼル

ランドローバー 新型ディフェンダー110

走りの印象は、みごとに上質である。

ディーゼルエンジン特有の振動やノック音は、外が土砂降りの雨ということもあったが、車内にいる限りほぼ意識できず、その豊かなトルク特性だけが印象に残った。クルージング中はエンジン回転が1500rpmほどで落ち着いており、そこからつま先に少し力を入れるだけで、踏んだ分だけ着実に速度が上がって行く。

ランドローバー 新型ディフェンダー110

直列6気筒の回転フィールはディーゼルながらもスムーズで、パワーこそ300PS/4000rpmと同等だが、ワンランク上の質感と走りが味わえる。

同じSグレード比較でその価格は120万円ほど高くなるが、最大トルク値は250Nmも高く、燃費性能においてもガソリンモデルの8.3km/Lに対して9.9km/L(WLTCモード総合)と高燃費なことを考えると、それが割高だとは思えない。

このジャンルではキャラクターがかぶるメルセデスG350d(286PS/600Nm)と比べてもこのエンジンはパワフルで、シャシーはモノコックゆえに乗り心地も良く、グレードを抑えればその価格はずっと安くできる。

ランドローバー 新型ディフェンダー110

でも、必ず「これじゃなきゃ!」という気がしないのである。

もちろん余裕がある人は、この直6ディーゼルを選べばいい。しかしショートボディに直4ターボを積んで、ガシガシと走らせることこそ新型ディフェンダーらしさであり、“レンジ”とは違うところなのではないか? と思えたのだ。

筆者のベストバイはラフな使い方が似合うディフェンダー90!

ランドローバー 新型ディフェンダー90

ずぶ濡れのままでも飛び乗れるテキスタイルシート。多少汚れても拭き取れば元通りになる樹脂製のインテリアパネル。3ドアでもウォークスルーをまたげばリアシートへのアクセスは容易であり、なんならその方が楽しいかもしれない。後部座席は身長171cmの筆者でも普通に座れたから、子供が小さいうちはきっと問題ないだろう。

そんなラフな使い方こそが、ディフェンダーには似合う気がするのだ。

もし直6ディーゼルがこの3ドアにも搭載されたらそれはホットだが、その買いやすさを肯定する意味も含めて、第一印象は直列4気筒ターボを搭載するディフェンダー90が、筆者のベストバイである。

[筆者:山田 弘樹]

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