デビューから丸5年の日産 セレナが善戦中、強みは2つのハイブリッド! 幅広い守備範囲で他社に対抗する

2021年上半期(2021年1月~6月)の新車販売ランキングベスト20(軽自動車除く)を見てみると、3列シートミニバンは7台がランクイン(ホンダ フリードは5人乗りの派生モデル「フリード+」を含む)。その中で日産は、唯一「セレナ」が11位と善戦している。2016年8月のデビューから丸5年が経過した日産 セレナの強みは、守備範囲の広さにある。日産独自のハイブリッド「e-POWER」を用意し、「トヨタ ヴォクシー」などライバルに挑むいっぽうで、ベーシックなマイルドハイブリッド(Sハイブリッド)も設定。257万6200円から購入出来るから、ひとクラス下のコンパクトミニバン「ホンダ フリード」や「トヨタ シエンタ」とも対抗出来るのだ。今回は、2016年のデビューから5年を迎え熟成を極めた日産 セレナの強みを紹介しよう。

日産 セレナ e-POWER ハイウェイスターV 特別仕様車「アーバンクロム」[C27型・2020年12月17日発表・2021年1月14日発売] [Photo:NISSAN]

“高いほう”と“安いほう”、性格の異なるふたつのハイブリッドがあるのはセレナだけ

近年は環境意識の高まりを受け、「次に買うならハイブリッドカー」と考える人が増えている。そのため最近の新型車では、燃費の良いハイブリッドモデルを用意し、ユーザーのニーズに応えている。

これはコンパクトカーからSUV、ミニバンに至るまで、多くのモデルで共通する傾向である。

しかし安い価格帯に通常のガソリンエンジンモデルも設定する場合が多い。その価格差は40万円から50万円程度と、少なくない違いだ。そのためハイブリッド:ガソリンの販売比率は、平均して7:3の比率に収まっていることが多い。

中にはトヨタ アクアや日産 ノートのようにハイブリッド専用車というケースもあるが、そこまで割り切るケースはまだ少ない。

高いほうと安いほう、同一モデルで2つのハイブリッドをラインナップするのは珍しい

そんな中で、日産の人気ミニバン「セレナ」は、珍しい戦略をとっている。

日産の最新ハイブリッドシステム“e-POWER(イーパワー)”を設定し支持を集めるいっぽうで、安い価格帯のモデルも、シンプルな機構のマイルドハイブリッド“スマートシンプルハイブリッド”を搭載。国産車では珍しい、2つのハイブリッドラインナップで構成する。

これはミニバンカテゴリーの中でもセレナだけの体制である。

シンプルなマイルドハイブリッド、その名も“スマートシンプルハイブリッド(Sハイブリッド)”

日産 セレナに2つあるハイブリッドモデルのうち、価格帯の安いモデルにはマイルドハイブリッド“スマートシンプルハイブリッド”(以下、Sハイブリッドと表記)を採用する。

その名の通り、機構は“シンプル”。通常の4気筒2リッターエンジンとモーター兼発電機を組み合わせ、小型のバッテリーとつなげたものだ。

減速時の運動エネルギーをバッテリーに蓄電。発進時のエンジン加速をモーターで補助したり、アイドリングストップ時にエアコンなどの電装品へ活用することで、エンジンの効率を高めてくれる。特に渋滞の多い都市部などで実用燃費に有効な機構だ。

日産 セレナ Sハイブリッドのカタログ燃費は、13.2km/L(WLTCモード燃費)。価格は「X」257万6200円から「ハイウェイスターG」331万1000円(共にFFモデルの場合)と、200万円中盤から300万円台前半の価格帯に位置する。

ノートでもお馴染み、日産独自のストロングハイブリッド“e-POWER(イーパワー)”

いっぽうのe-POWERは、コンパクトカー「ノート」やコンパクトSUV「キックス」でもお馴染み、日産独自のストロングハイブリッドシステムだ。

大柄なミニバンボディながら、発電専用エンジンはノートと同じ1.2リッター。駆動はモーターで行う。EV(電気自動車)さながらのスムーズな加速感が特徴である。カタログ燃費も18.0km/L(WLTCモード燃費)と、Sハイブリッドに比べずいぶんと優れている。

ただしお値段は高め。価格は「e-POWER X」299万7500円から「ハイウェイスターG」380万9300円(FFのみ)とまで。Sハイブリッドに比べ、およそ40万円から50万円ほど高く、主に300万円台が中心になっている。

「次に買うならハイブリッドカー」という需要に幅広い価格帯で対応するセレナ

日産によると、Sハイブリッドとe-POWER販売比率はおよそ5:5から4:6と、7:3という他社の傾向からすると均等な売れ方だ。

「次に買うならハイブリッドカー」という需要に、価格帯の異なる2つのハイブリッドを用意することで需要を補完し合っている。この戦略は今後他社でも増えていくかもしれない。

[筆者:MOTA(モータ)編集部 トクダ トオル/撮影:NISSAN]

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