山本由伸にまたも苦戦を強いられたソフトバンク 打線の早打ちは“積極”か“淡白”か

ソフトバンク・工藤公康監督【写真:藤浦一都】

8回に栗原の適時打で同点に追いつくのがやっとだったソフトバンク打線

■オリックス 2ー1 ソフトバンク(3日・PayPayドーム)

ソフトバンクは3日、本拠地・PayPayドームでオリックスに1-2で敗れた。オリックス先発の山本の前に7回までゼロ行進。8回になんとか同点に追いついたものの、9回に勝ち越された。首位との直接対決に敗れて、その差は6ゲームに拡大。4日の同戦に敗れると、自力優勝の可能性が消滅する。

ちょうど1週間前に完封負けを食らった天敵にまたも苦しめられた。初回、2つの四球で1死一、二塁のチャンスを貰うも、捕まえきれずに無得点。そこから7回までわずか1安打にねじ伏せられた。8回に三森の中前安打と柳田の四球でチャンスを作り、栗原が中前適時打を放って同点としたものの、追いつくのがやっと。その裏、板東が決勝点を奪われて大事な初戦を落とした。

とにかく山本を打てない。これで今季5度目の対戦で、実に4敗目。唯一、勝った4月14日の対戦だけ8安打で3点を奪っているものの、その他の過去3試合はいずれも無得点。この日も7回までゼロに抑えられ、2週連続の完封負けという悪夢もよぎるような試合展開だった。

工藤監督の考えは「粘ろうと思ってもなかなか粘れません」

いまや球界ナンバーワン投手と言っても過言ではない山本。ストレートは150キロ台後半をマークし、カットボールやスプリット、カーブなどの変化球も一級品。コントロールも良く、打ち崩すのは容易ではない。どう攻略するか、は各球団が頭を悩ますところだ。

ソフトバンク打線は山本と対戦する際、早いカウントからどんどん打ちに行く傾向がある。この日も各打者がファーストストライクからどんどんスイングを仕掛けていった。完封を許した1週間前は9回でわずか106球。制球がやや不安定だったこの日も8回まで120球で投げ抜かれてしまっている。見ているものとすれば『もっと粘って球数を投げさせれば……』とも思いたくなるだろう。

なぜ早打ちになるのか。粘って球数を投げさせるなどの狙いはないのか。工藤監督はこの日の試合前に、こう話している。

「早打ちを『淡白』と捉えるのかはチームとしての考え方なんです。ストライクが多い投手を相手に『粘って粘って』と言っても、粘れるボールがない場合もある。真っ直ぐばっかり投げてくれるならいいですよ? フォークがあって、カーブがあって、カットがあって、左右に投げ分けられて、それで粘ろうと思ってもなかなか粘れません。粘ろうとすると簡単に追い込まれて、簡単に打ち取られちゃいます。1球目打ってファウルになった、2球目打って凡打になった、というのと、1球目見逃してストライク、2球目見逃してストライク、3球目フォークで空振り三振となるなら、これだと思っていたボールを打ちに行かないとダメじゃないかなと思います」

山本の被打率は初球だと.321だが、追い込んでからは…

早いカウントの方が打者の打率は当然、高くなる。高いレベルにあるプロ野球では、追い込まれてから打つのは、どんな打者だって難しいもの。相手投手が山本クラスになれば、その困難さは一層増すことだろう。山本のこの試合までのカウント別の成績を見ると、その難しさがよく分かる。

初球の被打率は.321。0ボール1ストライクでは.324となり、1ボール1ストライクは.395など、早いカウントやボール先行の状況では被打率が3割を超える。それが、0ボール2ストライクでは.196となり、1ボール2ストライクは.076、2ボール2ストライクは.081、フルカウントでは.087と、追い込むと被打率は極端に低くなる。早いカウントから打ちに行くことは決して間違った選択ではないように映る。

勝負はいかに早いカウントで打ちにいって、一発で仕留められるか。そこには打者の能力や状態だけでなく、その日の山本の調子も関わってくる。この日、ソフトバンク打線は打ちにいったファーストストライクのストレートがファールとなったり、フォークで誘われたりしてカウントを稼がれた。その勝負の部分で山本に上回られた。山本が屈指の好投手である所以でもある。

山本とマルティネスの投げ合いとなれば、この日のようなロースコアの投手戦になることは想像に難しくない。このままのローテでいけば、あと1回ないし2回は山本と対戦する可能性がある。難攻不落の天敵をなんとか攻略したいところだが……。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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