菅首相 退陣へ 長崎県内被爆者から失望の声 体験者救済 不透明なまま

 菅義偉首相が退陣する見通しとなった3日、長崎県内の被爆者からは、8月9日の長崎原爆の日に要望したばかりとあって驚きや失望の声が広がった。広島原爆による「黒い雨」訴訟は、菅氏の判断で上告を断念。原告だけでなく、長崎の被爆体験者の救済にも期待が高まったが、先行きは不透明なままだ。
 「まさか1年で辞めるとは」。代表で要望した県平和運動センター被爆連議長の川野浩一さん(81)は驚きを隠さない。要望では長崎原爆資料館への訪問を「検討する」と応じていた。「一つのきっかけをつかんだと思ったのに。放り出すとは、怒りを覚える」と語気を強めた。
 県被爆者手帳友の会の朝長万左男会長(78)も「米国に核軍縮を求めないといけないのに、核の傘から出るという政治力も無かった」と切り捨てた。
 一方、被爆体験者訴訟第1陣原告団長の岩永千代子さん(85)は「長崎でも黒い雨や灰が降り、内部被ばくの可能性があるのに、首相は長崎の事情をよく分かっていなかったと感じた」と指摘。次の首相には「国として被爆体験者の実態を調査するなどして、被爆者認定に向けて真摯(しんし)に対応してほしい」と求めた。

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