キャンプの過ごし方に、抹茶を味わう時間「野点(のだて)」をプラスしてみませんか?長年茶道をしてきた筆者が、アウトドアで抹茶を点てるための道具の工夫や簡単な作法をお伝えします!
野点(のだて)ってなに?
めまぐるしい日常を離れてのんびり過ごせるキャンプやピクニック。おともにコーヒーも良いですが、新たな選択肢として「お抹茶」に挑戦してみるのはいかがでしょう?
茶道の楽しさのひとつに、「お抹茶を点ててお客様に飲んでもらう」というものがあります。それを屋外で行うのが野点(のだて)です。
野点の歴史は古く、500年以上前には行われていたと言われています。(千利休だって野点をしてたそう…!)
キャンプでハンドドリップのコーヒーをゆっくり味わうのは、道具と少しの知識があればできますよね。それと同じ感覚で、野点だって少し準備をすれば誰でも気軽にできるんです。
「野点」は茶道の経験がなくてもできるの?
結論は、できます!!!
今回紹介する野点で行うのは、”茶道”ではなくあくまで”お抹茶を点てて美味しく飲む”ということ。
「きっちりしなければ」「作法を完璧に守らなければ」といった意識は必要ありません。
アウトドア好きにこそ野点を勧めたい!
筆者は茶道経験者で、キャンプは未経験でした。夫はその逆で、キャンプ好きの茶道未経験者。
でも、今はふたりで楽しく野点もキャンプもしています♪
茶道はハードルが高いと思われがちですが、「そんなことないよ!茶道には誰でもできる野点だってあるよ!」って伝えていきたいと思っています。
まずは野点に必要な道具をそろえよう
茶道の道具は揃えだすとキリがないと言われていますが、野点には最低限のアイテムだけで大丈夫。
また、すでにお持ちのキャンプグッズがあれば、そのまま使うことだってできます!
野点に必要な道具【1】お茶碗
まずはお抹茶を飲むための器が必要。人数分あるとスムーズですね。
抹茶茶碗でなくても、自宅にあるご飯茶碗やカフェオレボウルを使うこともできます。
筆者は道中でお茶碗が割れるのが心配なとき、汁椀を使うことも。
抹茶茶碗の場合は、洗剤を使わないようにしてくださいね。
野点に必要な道具【2】茶筅 ちゃせん
お茶を点てるときにシャカシャカと振るもの。
お茶屋さんや茶道具屋さんのほか、インターネットでも購入できます。
新品を用意した場合は、使う前に軽く洗っておきましょう。水を張った器でシャカシャカと振り、乾かすだけで十分です。洗剤は必要ありません。
野点に必要な道具【3】抹茶
粉のお抹茶もインターネットで購入できます。
できれば製菓用ではなく、「飲むお抹茶」として売られているものがおすすめです。(味が全然違います…!)
少量で手軽な価格のお抹茶はこちら。
野点に必要な道具【4】茶杓 ちゃしゃく
粉の抹茶をすくう竹でできた匙のこと。
小さめの木のスプーンなどで代用もできます。
お茶碗が割れ物の場合、金属製のスプーンは避けるほうが無難です。
竹の茶杓は水にぬらす事ができないので、使ったあとはティッシュやキッチンペーパーで拭き取りましょう。
初心者さんにはモンベルの「野点セット」がおすすすめ!
アウトドアブランドのモンベルから「野点セット」が販売されています。
セットの内容は、以下のようなものです。
【セット内容】
- 茶筅
- 茶杓
- お茶碗
- 茶巾(布巾)
- お盆
- なつめ(粉のお茶を入れる器)
全体的にコンパクトサイズで、お茶碗はメラミン製。巾着には緩衝材が入れてあり、屋外で野点をするための工夫がたっぷりです。
その他必要なもの【1】お湯
抹茶を点てるのに最適な温度は60℃~80℃と言われています。
沸騰したお湯に少し水を足した程度。
お抹茶一杯につき70㏄必要ですが、お茶碗を洗ったりもするので少し多めに用意しましょう。
その他必要なもの【2】お菓子
茶道の世界で、野点の際の定番のお菓子は「金平糖」。瓶などに入れられるのと、手が汚れないというメリットがあります。
とはいえ、もちろん金平糖でなくても構いません。
お好きなお菓子を用意しましょう。
その他必要なもの【3】布巾
清潔な乾いた布巾を数枚用意しておきましょう。
そのうち一枚はお茶を点てる前に濡らします。お茶碗をお湯であたためた後、お抹茶を入れる前に拭くのに使います。小さめの布巾で十分です。
乾いているタオルは、野点が終わって片づけの際、お茶碗をきれいに洗った後に使います。
抹茶茶碗を使っている場合は、普段の食器を拭く布巾とは別の布巾がおすすめです。(匂い移りなどを避けるため…!)
その他必要なもの【4】建水(けんすい)
捨てるお湯をためておく器を「建水(けんすい)」と言います。
お茶碗より少し大きめの器がひとつあればばっちり。
いろいろ書きましたが…茶筅と抹茶さえあれば何とかなります!
野点にどうしても必要なものは茶筅(ちゃせん)と抹茶です。
この2つだけは代用品がないので、準備が必要です。
逆にそれ以外はなんとでもなります。
自宅にある食器や道具と向き合って、何が使えるか考えるのも楽しいですよね。
ちなみに筆者は、旅行の際は茶筅と抹茶だけ持って行き、旅先の滞在先でお抹茶を点てることもあります。
野点の道具を持ち運ぶときのポイント
持ち運びで何より気を付けたいのが「物を壊さないこと」。
道具をスムーズに運ぶための工夫を紹介します。
【ポイント】
- 道具をケースやバスケットに入れる
- 手ぬぐいや袋などで割れ物を保護する
- 茶筅は購入時のケースに入れる など
茶道具はキャンプグッズとして開発されたものではないので、少し気を使うところが多いもの。
余裕があれば、バスケットや手ぬぐいなど持ち運びの道具までこだわってお気に入りを選ぶのも良いと思います♪
実際に野点を楽しもう!準備・点て方・作法まで
道具がそろったら、いよいよ野点のスタートです!
美味しいお抹茶のために必要なことと、お抹茶をいただくための作法をご紹介します。
野点出発前の準備
抹茶をそのまま使うと“ダマ”になりやすいため、あらかじめふるっておきましょう。
自宅にある茶こし、または茶篩缶(ちゃふるいかん)を使います。
ふるったお抹茶はもとの抹茶の缶に戻すか、小さめの瓶など密閉容器に入れておきましょう。湿気は大敵です。
この作業は風で抹茶が飛んでいくので、出発前や前日にできるとベストです。
お抹茶を点てる前の準備
1)持ってきた道具を自分の手の届く範囲に置きます。
写真では自分の目の前にお茶碗、その近くに茶杓(ちゃしゃく)や茶筅(ちゃせん)やお抹茶を置いています。
奥には沸かしたお湯。
茶筅は風で倒れやすいので注意が必要。小皿の上に倒して置いてもいいかもしれません。
2)お菓子を盛り付けます。
袋から直接食べても構いませんが、せっかくの野点。
ひと手間加えて「お茶会」っぽくしてみましょう。
3)お茶碗と茶筅(ちゃせん)をきれいにします。
お茶碗にお湯を注いで、茶筅(ちゃせん)の先をさらさらと洗います。
茶筅がきれいになってお茶碗があたたまったら、建水(けんすい)へお湯を捨てます。
4)湿らせた布巾でお茶碗を拭きます。
これでお抹茶を点てる準備が整いました。
抹茶の点て方とコツ
1)お茶碗に粉のお抹茶を入れます。
量は茶杓(ちゃしゃく)なら2杯、ティースプーンなら軽く1杯。約1.5gです。
2)約70ccのお湯を注ぎます。
量がいまいちわからない…という場合は、計量カップを使うと便利です。
3)お茶を点てます。
まずは底の抹茶を分散させるようにゆっくり混ぜます。お茶碗の底に茶筅(ちゃせん)を押し付ける必要はありません。
次に茶筅を底から少し上げ、手首を前後にしっかり振ります。
泡が立ったら、茶筅で抹茶の表面を整えるようにゆっくり動かします。
最後に、ひらがなの「の」の字をかくように、茶筅を上げます。
美味しい抹茶の出来上がりです。
あまり泡が立たなくても大丈夫。粉がお湯に溶けていればばっちりです!
抹茶のいただき方
お抹茶ができあがりました!
自由に飲むのもよし、作法を意識するのも良し。お好みで、心を落ち着かせてくださいね。
「せっかくだから作法を意識してみたい」という方は、ぜひ次の4つの手順で飲んでみてください。
1)点ててくれた人に挨拶をする
お抹茶が入ったお茶碗を自分の前に一旦置いて、点ててくれた人に「お点前(おてまえ)頂戴いたします」と感謝を伝えます。
2)お茶碗を軽く持ち上げて感謝する
写真のように左手にお茶碗を乗せて右手を添え、軽くお茶碗を持ち上げます。
この所作を「おしいただく」といい、感謝の気持ちを表しています。
3)お茶碗を回す
お茶碗を時計回りに2度回します。
自分の口をお茶碗の正面につけないように、避ける意味があります。
たとえ正面が分らないデザインのお茶碗でも、心配りとしておこないます。
4)飲む
右手を写真のような持ち方にかえ、3口半ほどで飲みきるのが目安といわれていますが、無理のない範囲で。
最後の一口は「すっ」と音をたてて吸い切ります。
この音も点ててくれた人への感謝の意思表示となります。
以上が「抹茶をいただくときの作法」です。
一応簡単にご説明してきましたが、野点のときは「作法通りやらなくちゃ!」と思わなくても大丈夫。
「点ててくれた人に感謝を伝える」だけでも十分だと思います♪
野点で知っておきたいポイント
茶道や野点で大切なのは「一服のお抹茶をおいしく味わうこと、味わってもらうこと」。
おいしいお抹茶のためにできること、お伝えします!
茶道の作法を意識するなら、お菓子→抹茶の順番で!
「お客様はお菓子を食べてからお抹茶を飲む」という作法があります。
これは、「お菓子はお抹茶の引き立て役」という考え方があるから。
お茶を点ててくれている間にお菓子を食べ終わっておき、できあがったお抹茶はすぐにいただくという流れです。
点てたお抹茶は、時間が経つと冷めてしまったり味が変化したりします。
野点では、初心者さんは慌てないように、
- お菓子を食べる
- 抹茶を点てる
- お抹茶を飲む
という順番もおすすめです。
今回は「キャンプで気軽に野点」がテーマなので、絶対に守らなければいけない規則、というわけではありません。
臨機応変に楽しみましょう!
一緒に来た人に点ててあげましょう!
せっかく家族や恋人、友達と来たのなら、お抹茶でおもてなしするのはどうでしょうか?
自分で点てて自分で飲むよりも、より会話が弾んで素敵な時間になりまよね。
コーヒーと同じ感覚で、抹茶も気軽に点て合いましょう!
ちなみに茶筅(ちゃせん)は、お抹茶を点てるのに使っただけなので、ひとりひとり使うたびに洗う必要はありません。
野点が終わってから、お湯や水で洗いましょう。
野点なら、茶道未経験でも大丈夫!
野点の魅力とやり方を紹介してきました。
お料理やコーヒーやお酒と同じように、抹茶だって屋外で飲むと格別なひとときになるんです。
お抹茶が好きな人、茶道に興味がある人、一息つきたい人、キャンプに新たな要素を加えたい人、いろんな人に野点を勧めたいなあと思っています。
ほっと心が落ち着く抹茶、アウトドアでぜひ楽しんでくださいね!
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