逆転打でお立ち台も笑顔なし 鷹・甲斐拓也の苦しい胸の内「悔しさしかない」

ソフトバンク・甲斐拓也【写真:藤浦一都】

逆転勝ちに繋がる2点適時打を放つも「これで良いとは思えない」

■ソフトバンク 11ー4 オリックス(4日・PayPayドーム)

ソフトバンクは4日、本拠地PayPayドームで行われたオリックス戦に11-4で大勝した。1点ビハインドの5回に打者一巡の猛攻で一挙8得点。負けるか、引き分けで自力優勝の可能性が消滅する危機だったものの、これを阻止した。

ビッグイニングで試合をひっくり返した。1点ビハインドで迎えた5回、そこまで柳田のソロの1安打のみと苦しめられていたオリックス先発のスパークマンを攻略した。先頭の中村晃、続くリチャードが連続四球を選ぶと、上林の三塁前へのバントは内野安打に。無死満塁の絶好機が出来上がった。

ここで打席に立ったのが甲斐だった。「打席に入る前に監督から『頭の中を整理して考えすぎずにいけ。シンプルに目付けをやれば大丈夫だ』と言葉をかけてもらって、そういう思いで打席に立てた」。スパークマンの投じた2球目、高めに浮いたスライダーを弾き返して中前へ。2人が生還する逆転の2点適時打となった。

7回の第3打席でも左翼線への二塁打を放って、この日は3打数2安打1四球。試合後はヒーローインタビューでお立ち台に立ったものの、その表情に笑顔はなかった。その姿には現在4位に沈むチーム状況の責任を感じる、忸怩たる思いがある。

「工藤監督の想いに応えたいという気持ちしかないです」

「正直、なかなか力になれていないところが多くあって悔しさしかないです。今日打ったからと言って、それで良いやとは思っていないです。これで良いという思いはないです。結果が大事ですから、この世界。勝たないといけないですし、勝たないといけないチームなので。苦しい試合が続いていますけど、僕自身、工藤監督とも話して、話を聞いてくれて、その想いに応えたいという気持ちしかないです」

東京五輪で正捕手としてプレッシャーと戦い続け、金メダルを獲得すると休む間もなく後半戦が始まった。その疲労度は計り知れない。後半戦に入ってからこの試合まで44打数4安打、打率.091と打撃面では大苦戦。それだけでなく、投手陣を、チームを引っ張らなければいけない立場。故障者続きのチーム状況で、なかなか浮上のキッカケが掴めず、正捕手としての責任も痛感している。

3日の試合前練習では工藤監督から肩を組まれて言葉をかけられていた甲斐。「色々なところで話をしてくれますし、監督は選手を信じてやってくれているので、なんとかその思いに応えたい。苦しい状況ですけど、まだ試合はあるので諦めずに戦い抜きたい。誰1人、諦めているという選手はいない。ここからです」。残り38試合、首位とは5ゲーム差。この1勝が反攻へのキッカケになるか。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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