頭下げてマイクがおでこにゴチン “愛され娘”ソフト後藤、五輪金で得た財産とは?

先発したトヨタ自動車・後藤希友【写真提供:(公財)日本ソフトボール協会】

「ここは見せ所じゃないか! しっかりしろ自分!」とピンチで自らを鼓舞

ソフトボール人気を牽引する、スター誕生の気配がする。東京五輪で全6試合中5試合にリリーフで登板し、優勝の原動力となった20歳の左腕・後藤希友投手。日本女子ソフトボールリーグ1部の後半開幕節が4日、神奈川県の大和スタジアムで行われ、トヨタ自動車の先発投手として豊田自動織機戦に出場。いきなり3安打10奪三振の完封をやってのけた。チームは6-0で完勝した。

「痛っ……」。試合後のオンライン会見の冒頭、カメラに向かって頭を下げた後藤は、おでこをマイクにぶつけた。天然系の“愛されキャラ”が顔をのぞかせた瞬間だった。

マウンドでは対照的に迫力満点。初回いきなり1、2番に連打を許して無死一、二塁のピンチを背負ったが、先制点を許すつもりは微塵もなかった。続く3、4、5番をいずれも空振り三振に仕留め、意気揚々とベンチへ引き揚げた。

「私はスイッチが入るのが遅いのですが、ピンチでは勝手に入ります。五輪でもランナーを背負った場面はありましたし、『ここは見せ所じゃないか! しっかりしろ、自分!』と言い聞かせました」。ピンチを「見せ所」と表現するあたり、やはり並みの度胸ではない。

入団2年目の昨季は新人王獲得、五輪経験し「あれ以上の緊張はないと思いました」

入団2年目の昨季はリーグ5勝0敗、防御率1.42をマークし新人賞を獲得。東京五輪代表に選ばれた際にはまだ「時期尚早ではないか」と危ぶむ声もあったが、あれよあれよという間にスターダムへのし上がった。

「五輪を経験し、あれ以上の緊張はないと思いました。きょうは緊迫した場面でも冷静に投げることができました」と自らの成長を実感。一方で「(この日は)無観客でしたが、皆さんにいろんな形でソフトボールを見ていただきたい。テレビやSNSを通して、ソフトボールの輪が広がればいいと思います」と語った。“リーグの顔”となった自分の立場も理解している。

2019年からの2年間は、レジェンド的存在の上野由岐子投手らを擁するビックカメラ高崎がリーグ連覇している。後藤は「目標は3年ぶりの王座奪還です」とキッパリ。20歳の後藤と39歳の上野の“世代間闘争”も注目されるところだ。

さらに、来年春には新リーグ「JDリーグ」が発足する。現行リーグ1部の全12チームと、2部の4チームが参加。計16チームが東・西2地区に分かれリーグ戦を行う。発足に先立って今年3月には、日本ハムの球団代表などを務めた経験がある島田利正氏が日本女子ソフトボールリーグ機構の代表理事兼チェアマンに就任。元ヤクルト監督の古田敦也氏も理事に名を連ね、新機軸を打ち出した。

まずは国内のソフトボール人気を盛り上げ、2024年パリ五輪では正式種目から除外されることが決まっているだけに、2028年ロサンゼルス五輪からの復帰が目標になる。後藤は絶好のタイミングで現れたスター候補と言える。躍動感あふれる投球で新時代を切り開いてほしい。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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