錦織圭 ジョコビッチに17連敗も3年ぶりセット奪取に手応え「次やる時は怖さ減るかな」

ジョコビッチ(右)に敗れた錦織だが光は見えた(ロイター)

テニスの4大大会「全米オープン」の男子シングルス3回戦が4日(日本時間5日)に行われ、世界ランキング56位の日本のエース錦織圭(日清食品)が同1位で第1シードの王者ノバク・ジョコビッチ(セルビア)に7―6(7―4)、3―6、3―6、2―6で敗れ、ベスト16を逃した。

第1セットはタイブレークの末に奪取。ジョコビッチからセットを奪うのは18年ウィンブルドン以来、実に3年ぶりのことだった。この日はテンポの早い本来のスタイルを変更。その戦術が奏功して好スタートを切ったが、長くは通用しなかった。第2セットから王者の怒涛の反撃に遭い、立て続けに3セットを奪われて敗れ去った。

またも〝ジョコの壁〟を超えられず、東京五輪準々決勝の黒星に続く17連敗。だが、試合後の王者から出た言葉は「ケイのレベルに驚いた」。

これまでの敗戦とは明らかに違い、スコアには見えない進化があった。錦織自身も充実ぶりを感じており、記者会見では「彼との最近の試合の中で一番良かった」と話した。特に手応えを感じたのは第1セットだ。「かなりプレーの内容を変えていこうと思ってやりました。それが良かったのか、1セット目を取れた」と振り返り、具体的な戦術をこう説明した。

「じっくりラリー戦をしたところが今日は良かったのかな。ミスも誘えましたし、いつものように先にブレークされ、余裕を持たれて思いっきりプレーされる展開ではなかったので。やっとプレッシャーをかけられる試合になった。そこが唯一、ポジティブなところですかね」

最終的には「それを続けられなかった」「レベルを上げてくる彼についていけなかった」「サーブの差がかなり出た」と3つの敗因を挙げたが、今後については「こういう感じの試合展開もできるんだな」と前向きに語った。ここ数年はヒジや肩の故障に泣かされ、トップ10だった一時の勢いは影を潜めているが「確実に良くはなってきていますね。2回戦でああいう苦しい試合を勝てたのも大きかった」と浮上の感触をつかんでいる。何より〝鬼門〟の「対ジョコビッチ」に希望が見えたようだ。

「早い展開でドンドン打っていくのが自分のテニス。そこを変えるのは我慢が必要。メンタル的なところでモヤモヤし、やりづらさがありましたが、同時にいい感触もつかめた。ちょっと次やるときは怖さが減るかな、と。最近の戦いでは何もできず簡単に負けてしまうことが続いていたので、それは克服できたのかなと思います」

常に進化を続ける31歳。敗戦の中にひと筋の光が見えたのは間違いない。

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