【東京パラリンピック】女子マラソン・道下が金メダル 魔法の言葉が人生変えた「逆境の時にどう対処するか」

女子マラソンで金メダルを獲得した道下(ロイター)

東京パラリンピックの女子マラソン視覚障がいT12(5日、国立競技場発着)が行われ、道下美里(44=三井住友海上)が3時間00分50秒で金メダルに輝いた。

レースはエレーナ・パウトワ(RPC)と中盤まで我慢比べを続ける展開だったが、粘り強い走りで後半は差を広げた。コースを間違えそうになるハプニングにも見舞われたが、競技場のトラックに入ると笑顔もこぼれた。最初のゴールを切った道下は「5年前の忘れ物を絶対に取りに行くって強い気持ちでみんなでやってきたので、それが取れてすごくうれしいです」と話し、16年リオ五輪(銀メダル)で逃した夢の達成を喜んだ。

魔法の言葉で頂点を勝ち取った。山口県出身の道下は、小学4年で膠様滴状角膜ジストロフィーを発症し、右目の視力が低下。26歳のころに左目の視力もほとんど失った。「若干落ち込み気味ではあった」と振り返るが、盲学校に通っていた男性のひと言が人生を変えた。
「当たり前のように順調にうまくいっている時に何でもうまくいくのは当然。でも、逆境の時にどう対処するかで人間の価値は決まるようなもんだよ」
道下いわく、盲学校は「前向きな人たちの集まり」。障がいを言い訳にしない姿勢に感化され「目が不自由になってあまりに運動不足になってぽちゃぽちゃしていたので、ちょっと痩せたいな」とランニングをスタート。2008年から始めたブラインドマラソンを始めると、16年リオ大会で銀メダルを獲得。国内外の大会で好成績をマークするようになった。

かつて「私は人からいただいた言葉に支えられている」と語っていた道下。恩返しの走りでつかんだ金メダルだった。

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