メクル第570号 “触れる図鑑”が完成! 日本列島石ころの旅 SNSで呼び掛け、全国から集まる 

全国の“触れる石ころ図鑑”を完成させた相庭君=長崎市内の自宅

 毎年の自由研究がとにかく大好きな長崎市立女(め)の都(と)小4年の相庭唯人(あいばゆいと)君(9)はこの夏、ツイッターを活用して全国の海辺の石ころを集めました。その名も「日本列島石ころの旅」。今では図鑑(ずかん)も見ずに、だいたいの種類が分かるまでになった相庭君。ぐるりと海に囲(かこ)まれた日本の各地にいる、会ったこともない親切な人たちと作り上げた研究成果を見せてもらいました。

◆1万「いいね」
 きっかけは、学校で借りてきた「海辺の石ころ図鑑」(ポプラ社)。読むうちに、相庭君は本の中の石ころを自分の手で触(さわ)ってみたくなりました。でも、新型コロナウイルス感染症(かんせんしょう)の影響(えいきょう)で、旅行には行けません。何とか手に入れられないかと、母の淳子(じゅんこ)さん(48)がツイッターで「近くの海岸の石ころを着払(ちゃくばら)いで送ってください」と呼(よ)び掛(か)けたのが夏休み前、7月14日のこと。あまり期待していなかったのに、ツイートはあっという間に広まり「いいね」が1万件(けん)、「石を送りたい」と約千件の返事がありました。
 世界中の人が見るかもしれない会員制(かいいんせい)交流サイト(SNS)。たくさんの人からの嫌(いや)な言葉であふれ返る“炎上(えんじょう)”と呼ばれるような問題ばかりが話題になりがちです。でも「気を付けて使えば、小さな町に住む自分たちでも、こんなにもたくさんの人とつながれるんだ」と家族で驚(おどろ)いたそうです。

◆持ち帰り注意
 たくさんのメッセージの中には「石に限(かぎ)らず、その場から勝手に持ち帰ってはいけない場合がある」と教えてくれる人もいました。場所によって国や県、市、個人(こじん)のものがあり、自然のものだといって勝手にとってはいけないなんて、思いも寄(よ)らなかった相庭君。「石を送ってくれる人が警察(けいさつ)に捕(つか)まったら大変だ」と思い、全国の役所へ電話をし、持ち帰っていいかどうか確認(かくにん)しました。

◆次々に届(とど)く石
 7月の終わり頃(ごろ)から、引っ切りなしに石が届(とど)き始めました。あまりに多くて重たいので、配達のドライバーが不思議がったほど。
 実際(じっさい)に届いた石はキラキラしていたり、つるつると触り心地が良かったりして、図鑑で見るのとは大違(おおちが)い。うれしくて、相庭君はずーっと石を触っていたそうです。
 送ってくれたのは地質学(ちしつがく)の研究者、お医者さん、砂丘(さきゅう)についての資料(しりょう)も作ってくれた鳥取県の小学生など、さまざまな年代の見知らぬ75人。手紙や各地の特産品も添(そ)えられていて、まるで全国を旅した気分を味わいました。

日本各地から集まった石の標本

◆地図と標本箱
 たくさん石が集まった分、まとめるのは大変な作業。まず、大きな紙に日本地図を描(えが)きました。石の採取(さいしゅ)場所に書き入れた番号を頼(たよ)りに標本箱を探(さが)せば、お目当ての石がすぐに見つかります。関東地方は採取禁止(きんし)が多かったので、石の写真を貼(は)ることにしました。
 一つ一つの石については、番号順に▽採取した海岸の名前▽石の種類▽送ってくれた人のイニシャル-を表にして、感想やお気に入りランキングと一緒(いっしょ)にノートにまとめました。
 たくさん集まった石を見て、相庭君は思いました。「同じ石ころは一つもない。それぞれの海岸でキラキラしていたと思うと、すごいものを集められた」。宝石(ほうせき)のように価値(かち)のある、触れる図鑑の完成です。
 校内の夏休み作品展では、友だちや近所の人に研究成果を見てほしいと話していました。

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