まさに意地と意地のぶつかり合い。車いすバスケットボール男子決勝は最高のメダルマッチだった。
惜しくも米国に敗れたものの、日本は史上初の銀メダルを獲得。「このチームでやれて良かった」。小山市出身の日本体育大4年高松義伸(たかまつよしのぶ)選手(21)=栃木レイカーズ=は、やり切った顔で初めてのパラリンピックを終えた。
1点リードで迎えた第4クオーター。「出番が来たら、自分の仕事をするだけ」。連覇を狙う最強軍団とのマッチアップに備えた。
中盤に逆転され、60-64と後がなくなった残り14秒。「行ってこい」。チーム最多18得点の香西宏昭(こうざいひろあき)選手に声を掛けられ、手をたたいてコートに入った。
すぐにボールを持った選手の動きをチェック。ただ「やれることはなかった」。試合終了のブザーが鳴る。「ここに立てただけで良い経験」とわずかなプレータイムをかみしめた。
「11人が頑張ってくれて、歴史的瞬間を見せてもらった」。コートの真ん中で一人一人の手を握り、感謝を伝える。「全然使ってやれなくて悪かった」。最後は、京谷和幸(きょうやかずゆき)ヘッドコーチに肩をたたかれた。
「パリへの経験枠」として、初めて背負った日の丸。1次リーグから決勝まで先発はなく、出場時間は計11分45秒。ボールに触れない時間の方が長かったが「僕はこれからの選手」。焦らず、経験値を稼いだ。
そして大きな背中から学んだ。「粘り強い守備と得点力を身に付けないと」。障害の程度による「持ち点」が同じく高い宮島徹也(みやじまてつや)、藤本怜央(ふじもとれお)両選手の姿に、未来の自分を重ねた。
勝負は、次のパリ大会。「先輩方がつくってくれた歴史を崩すことなく、継続してメダル獲得していきたい」。成長途中の背番号21。3年後は、日本の柱になって帰ってくる。