51年ぶり9月に単独首位浮上のロッテ 井口監督が自ら語る若手育成と優勝の鍵とは?

ロッテ・井口資仁監督【写真:荒川祐史】

ロッテ井口監督のリアルな声を届ける月連載・第7回

レギュラーシーズンは残すところ1か月あまりとなったプロ野球。6日現在、首位から4位までが4ゲーム差にひしめくパ・リーグでは、毎日手に汗握る攻防が繰り広げられている。そんな中、井口資仁監督率いるロッテは後半戦絶好調で、5日の日本ハム戦を2-1で制し、ついに単独首位に浮上。100試合以上を消化しての単独首位は、前後期制期間(1973~82年)を除くと1970年以来の出来事で、目指す1974年以来となるリーグ1位が見えてきた。

東京五輪閉幕後にスタートした後半戦は、最初のオリックス3連戦こそ負け越したものの、その後は順調に白星を重ね、8月を9勝4敗2分けで終えた。荻野貴司、中村奨吾、マーティン、レアードを中心とする打線は変わらず好調で、藤原恭大、安田尚憲、山口航輝ら若手も奮起。先発にやや疲れが見える投手陣は中継ぎが大車輪の活躍で、特に佐々木千隼は8月だけで3勝をマーク。シーズン途中に補強した国吉佑樹、ロメロ、加藤匠馬らも期待通りの働きでチームを盛り上げる。

残り41試合。目指す優勝に向けて就任4年目の指揮官は、どんな青写真を描いているのだろうか。連載シリーズ第7回は、シーズン最終盤の戦い方、選手起用のタイミングについて、井口監督の言葉で語ってもらった。【取材・構成 / 佐藤直子】

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早いもので、暦はもう9月。ペナントレースは大詰めを迎えています。今年はシーズン中に積極的に補強を重ね、8月31日には開幕からの課題だった右の代打としても期待できる元広島の小窪(哲也)が加わりました。7日からのオリックス3連戦では右肘クリーニング手術を受けていた石川(歩)も帰ってきますし、唐川の復帰も近い。戦力が揃いつつある中、いい戦いができていると思います。

小窪は非常に勝負強い打者で、ランナーが三塁にいる時、なんとかバットにボールを当ててヒットにするタイプ。井上(晴哉)も岡(大海)もどちらかと言えば一発を狙うタイプなので、これまでにないタイプを補強できたと思います。36歳のベテランで広島では主力選手として3連覇に貢献した経験もありますし、今年は独立リーグから再びNPBを目指すハングリーさを持っているので、若い選手たちの手本になってくれると思います。

中日からトレード加入した捕手の加藤(匠馬)は、配球は本当に素晴らしいものを持っている。彼の存在は田村(龍弘)にとっていい刺激になるでしょう。うまく併用しながら終盤を戦っていきたいと思います。8月から加わったロメロが違和感なく好投しているのも、中日で同僚だった加藤のおかげもあるでしょう。彼らに加え、国吉であったり、支配下登録された捕手の植田将太であったり、球団は優勝するためのポイントを最後までしっかり補強してくれました。

ロッテ・藤原恭大【写真:荒川祐史】

藤原、安田、山口に見る成長「若手3人がいい形で高め合っている」

貯金を5つ増やせた8月は、中継ぎ陣が非常にしっかり頑張ってくれました。長いイニングを投げられる先発が少ないので、だいぶ負担を掛けてしまっていますが、リードされた展開でもゼロに抑えて試合の流れを引き寄せてくれる。打線は変わらず好調で、負けていても最後に試合をひっくり返せる強さがあります。勝てなくても引き分けに持ち込めた試合が数々ある中、ここからは負けないことが大事なポイントになってくるでしょう。

102試合を終えて、チーム得点が462でチーム防御率は3.93。打線ができるだけ好調を維持し、投手陣がチーム防御率をもう1点押さえられれば、数字上では勝ち星を重ねられるはずですが現実はそう甘くなさそうです(笑)。

打線はトップの荻野と3番の中村が打率3割前後をキープし、マーティンとレアードが打点を重ねる形が定着してきました。そこに加えて、8月は若手の頑張りが光りました。特に(藤原)恭大が2番に入ると繋ぐこともできるし、一発も期待できるなど、攻撃に幅が増すので大きい。エチェバリアの怪我で出場機会が増えた安田は、スタメンに戻ってからバットが良く振れていますし、2人に刺激された山口もいい。この若手3人がいい形で互いを高め合っています。

若手3人に関しては、本来は開幕当初から今のような高め合いながら成長する効果を期待していました。でも、なかなか思い通りにいかないのが育成です(笑)。スタメンを外したり、2軍で調整させたりしながら、ようやく3人がスタメンで出られる状態になり、来年以降の形も朧気に見えてきました。

選手を入れ替えるタイミングを図るのは非常に難しいものがあります。どこでスタメンや1軍登録を外すか。どこで2軍から引き上げるか。どの場面で使うか。これは監督就任以来、2軍監督と連携しながら決めています。今年に関していえば、鳥越(裕介)2軍監督と話をして、選手を2軍へ送った段階からどういう使い方をして、どういうタイミングで、どのくらい調子が上がったら1軍へ戻すか、道筋を立てて準備をしてもらっています。

4月下旬に恭大を2軍へ送った時は、打撃の調子が上がり始めたら1軍に上げましょうという話をしていたのが、ピタリとハマった形になりました。山口に関して言えば、2軍で状態が上がってきたので、五輪期間中のエキシビジョンゲームで試したところ、しっかり結果を出してくれたので、そのまま1軍登録。今はレアードが一塁を守っているので、山口を右翼、DHで併用しています。

安田は1軍登録こそ外れていませんが、エチェバリアの加入で藤岡(裕大)が三塁を守るようになり、出場機会が減りました。それでも腐ることなく打ち込みに励んだ結果が、今の好調に繋がっている。ベンチから藤原や山口が活躍する姿を見て悔しい想いもしたでしょうが、成長に繋がるいい時間になったのではないかと思います。

1軍と2軍が「全員揃ってのマリーンズ」、チームで持つ共通の意識

基本的にスタメンを外したり、2軍で調整させたりする時は、必ず選手を監督室に呼んで、担当コーチと一緒に話をします。1人1人が大事な戦力。本来の自分の力を取り戻す時間とし、1軍に呼ばれた時はしっかりプレーできる準備をしてほしいと伝えています。

僕は常々言っている通り、1軍も2軍も区別はしていません。全員が揃ってのマリーンズ。2軍も全試合を映像で確認し、選手の状態を把握しています。打者であれば高部(瑛斗)、投手であれば土居(豪人)、横山(陸人)といったあたりが2軍で結果を出し、チームの底上げをしてくれている。1軍、2軍関係なく、しっかりチーム内の競争ができているので、自然と選手の意識も高くなっている。就任4年目でようやく形になってきました。

今年は2軍もイースタン・リーグの優勝争いをしています。今年から鳥越さんが2軍監督になり、さらに細かい野球を叩き込んでくれています。走塁や守備の意識を徹底させるなど、2軍も隙のない野球ができているので、1軍に上がってきた時に順応が早い。マリーンズとして共通の意識を持てていることが大きいと思います。

冒頭でも触れましたが、ここからの1か月は負けないことがカギ。そのためには先発投手陣が6回まで試合を作って、7回から中継ぎ陣に任せる形を作ることが大切になるでしょう。打線は前半にエンジンの掛かりが悪い時もありますが、中盤以降は力がある。試合の前半をなんとか最少失点で乗り切れば、勝機が見えてくるはずです。

シーズン終了までタフな試合が続くでしょう。そんな時、昨年は2位争い、一昨年は3位争いで競り合ったことが経験値として生きてくると思います。今は投打がかみ合い、足も使った非常にいい形の野球ができている。だからこそ、リーグ順位を気にして上を見ながら戦うのではなく。自分たちの野球を残り試合全てでやりきれば、自ずと道は拓けるはず。それで優勝できなければ力が足りないということなので、とにかく自分たちの野球をやりきる、今年のチームスローガンでもある「この1点を、つかみ取る。」を最後まで実践し続けるのみです。

先日、ZOZOマリンスタジアム通算1000勝という節目を迎えましたが、優勝の2文字を球団の歴史に刻むことも大切。そのためにも、最後の最後までチームみんなで同じ目標を見据えながら、全力で戦い抜きます。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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