熊本県関係選手の活躍振り返る 東京パラ・記者座談会

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 東京パラリンピックに出場した熊本県関係は8競技11人。競泳男子の富田宇宙(日体大大学院、熊本市出身)が銀2個、銅1個のメダルを獲得し、車いすラグビーとゴールボール女子はいずれも3位に入り、計5個のメダルを手にした。現地取材の熊日記者が13日間の熱戦を振り返った。

【気迫】競泳の男子100メートルバタフライ(視覚障害S11)で2位となり、3個目のメダルを獲得した富田宇宙=3日、東京アクアティクスセンター

限界超えた富田

 A 富田は「選手が障害と向き合っている。制限のある環境でベストを尽くす」との思いを力泳で証明した。銀メダルの400メートル自由形は自身の持つ日本記録を更新するとともに、アジア新記録を樹立。高みを目指す姿勢でまた一歩、限界を超えた。

 B コロナ禍で練習環境が一変した中、自宅に設けたプールで感覚と気力を保った。200メートル個人メドレーは最後の50メートルで6位から3人抜き。鬼気迫る泳ぎからも結果への執念を感じた。

 C 周囲への感謝を口にし、他人を思いやる気持ちが強かった。100メートルバタフライで金メダルを取った好敵手の木村敬一(東京ガス)と抱き合う姿が象徴的だった。

【全開】車いすラグビーの3位決定戦で、敵陣にボールを運ぶ島川慎一=8月29日、国立代々木競技場
【堅守】車いすラグビーの3位決定戦で、相手選手をマークする乗松聖矢

ベテランが存在感

 A 車いすラグビーは、前回大会に続く過去最高位。46歳の島川慎一(バークレイズ証券、長洲町出身)のスピードは出場選手の中でもトップクラス。乗松聖矢(SMBC日興証券、熊本市)の縦横無尽に動き回る運動量も圧巻だった。

 B 島川は最終戦後、現役続行を表明した。2人には3年後のパリ大会で悲願の頂点奪取を果たしてほしい。

 C ゴールボール女子は2大会ぶりの優勝こそ逃したものの、4大会連続出場の浦田理恵(総合メディカル、南関町出身)を中心に試合を重ねながらチームワークを上げた。選手団副主将の重責を担った浦田は、常に笑みを絶やさず仲間を鼓舞。銅メダルを手にした笑顔は特に輝いていた。

 B アイシェード(目隠し)を着用すれば、健常者も一緒にプレーできる競技。日本の活躍でさらに関心も高まった。障害者と同じコートで競う機会を増やしたい。

【歓喜】ゴールボールの女子3位決定戦でブラジルを下し、観客席に向かって万歳する浦田理恵(左から2人目)=3日、幕張メッセ
【入魂】5人制サッカーの5位決定戦でシュートを放つ黒田智成(右)=3日、青海アーバンスポーツパーク

初出場5位 歴史的

 C 5人制サッカーは、初めて競技を知った人も多い。初出場の日本が5位と健闘。歴史的な一歩になった。

 A ボールに仕込まれた鈴の音と仲間の声を頼りとする中、目の見えない黒田智成(たまハッサーズ、八代市出身)の正確なボールさばきに驚かされた。1次リーグを含めた3得点は、どれもスーパーゴールだった。

 B 安尾笑(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング、益城町出身)、平井美喜(立正大職、西原村)が出場した車いすバスケットボール女子は、攻守連動のスピードに乗ったプレーが欧米にも通用した。準々決勝はオランダに高さとパワーを見せつけられたが、レベルの差を肌で感じた経験は今後に生きる。

【攻防】車いすバスケットボールの女子準々決勝で、リバウンドを狙う平井美喜(中央右)と安尾笑=8月31日、有明アリーナ

感染拡大も影響

 B 車いすフェンシング男子に出場した加納慎太郎(ヤフー、熊本総合医療リハビリテーション学院出)、藤田道宣(日本オラクル、上天草市出身)は、いずれも決勝トーナメントに進めなかった。柔道男子60キロ級の平井孝明(県立盲学校教、熊本市)も無念の7位。感染拡大による各大会の中止が実戦感覚を損ねた格好だ。

若手も飛躍の予感

 A 車いすテニスの田中愛美(ブリヂストンスポーツ、菊陽町出身)は県関係最年少の25歳。ダブルス8強はパリ大会での飛躍を予感させた。

 C これまで障害者スポーツに焦点を当てた取材経験は少なく、レベルの高さに驚き、白熱した展開に興奮した。今回は無観客で実施されたが、全国で競技に接する機会が増えれば、普及と強化、何より障害者への理解も進むのではないか。