「中学校の校則、髪形が厳しい」「時代に合わせて変化を」 長崎県内も見直し進む 専門家「利点と欠点の比較必要」

 「中学校の校則で、髪形が厳しいと思います」。長崎新聞の情報窓口「ナガサキポスト」に、佐世保市内の中学校に通う男子生徒の保護者からこんな投稿が寄せられた。プライバシーや人権に関わる「ブラック校則」が問題視される中、全国各地で見直しの動きが進む。長崎県内ではどうなっているのか。

■華美はいけないけど…


 保護者の子どもが通う学校では男子の髪は眉、耳、襟にかかってはいけない-と校則で規定している。保護者は「華美になるのはいけないけど、厳しいと感じる。性的少数者(LGBT)で伸ばしたい人もいるのでは」と主張。かつて「男子は丸刈り」という学校も多かったが、今では廃止されていることを例に挙げ「時代に合わせて変化させてほしい」と訴える。

 この学校に取材すると、生徒指導の担当教員は「他校に比べて特に厳しいわけではない」と説明。LGBTなどの理由で髪を伸ばしたい生徒がいた場合は「校則だから絶対に守ってくださいとは言わない。保護者や生徒の相談を受け、その都度判断する」と話す。校則ではほかに▽パーマや髪染め、眉毛そり、ピアスの禁止▽女子のスカートの丈はひざより下-などの規定があり、年6回の検査で指導しているという。

■1970年代、校内暴力が要因


 この校則が厳しいかどうかは議論が分かれるところだが、子どもに関する法律に詳しい長崎大教育学部の池谷和子准教授(49)によると、校則で厳しく管理するようになったのは1970年代に校内暴力が社会問題化したことが要因だ。池谷氏は「生徒を守るために、ルールを厳しくして学校運営をスムーズにする必要があった」と話す。

■過剰な指導で死亡事件や事故も


 その一方で、校則を巡る過剰な指導によって生徒が死亡する事件も起きた。85年、持参禁止だったドライヤーを修学旅行に持ってきた岐阜県の男子高校生が教師から体罰を受けて死亡。90年には兵庫県の高校で、遅刻した生徒を閉め出すため、教師が鉄製の門扉を閉めた際、登校してきた女子生徒が頭を挟まれて亡くなった。行き過ぎた管理教育は物議を醸したが、校則見直しの動きが広がる決定打とはならなかった。

 再び議論が巻き起こったのは2017年のことだ。大阪府の女子高生が髪の黒染めを強要されて不登校になったとして、府に損害賠償を求めて提訴した。これをきっかけに理不尽な校則が注目されるようになり、全国各地の学校が見直しに向けて動きだした。

■長崎県内は9割超が見直し


 長崎県では、校則で肌着の色を指定している学校に対し、県教委が今年3月、「色の確認行為が人権侵害とならないよう配慮すべき」とする通知を出した。県教委の調査では、県内の県立高校、国公立中学校計237校のうち9割超の学校が、3月以降に服装や頭髪などの校則を見直したか、見直す予定と回答。担当者は「各学校がスピード感を持って取り組んでいる」と評価する。

全国各地で見直しが進む校則。今後どのように変わっていくのか(写真はイメージ、林田友広撮影)

■経済格差の問題も


 見直しのポイントとして、池谷准教授は「その校則のメリットとデメリットを比較すること」を挙げる。例えば「パーマや髪染めの禁止」の廃止はデメリットの方が大きいとの見方だ。理由として「おしゃれや自己表現ができることはメリットだが、おしゃれに目が向き、勉強に集中できなくなるのはデメリット。さらに、おしゃれにはお金がかかるので、それができない貧しい家庭の生徒が学校に行きたくなくなるなど、経済格差の問題も出てくる」と語る。

 校則見直しは今後、どこまで進むのか。県教委は「児童生徒が話し合う機会を設けたり、PTAのアンケートを実施したりするなど工夫しながら、社会常識の変化や人権に配慮した内容に変えていくべきだ」としている。(湯村高大)

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