大船渡、気に掛けて 地域紙展示し4年

 相模原市南区の大野台公民館には、4年ほど前から岩手県大船渡市の地域紙「東海新報」が展示され続けている。近くに住む笹本二郎さん(70)が購読しているもので、東日本大震災の被災地の現状を知ってもらおうと始めた取り組みだ。笹本さんは、「新聞の前を通った人が一日一人でも大船渡を思い出し、気に掛けてもらえれば」と思いを込める。

 展示されている新聞は定期的に更新され、現在は2015年3月から16年1月までの約11カ月分が閲覧可能。新聞展示のほか、大船渡コーナーも設けられ、模造紙に震災関連の各紙の記事が張られている。

 きっかけはインターネットだった。震災直後、相模原市と大船渡市が友好都市であることを思い出した笹本さん。ツイッターで情報を集めていたところ、大船渡の男子中学生の投稿を見つけた。「サッカー部のユニホームが津波で流された。6月の新人戦までにそろえたい」 すぐに男子生徒と連絡を取り、相模原で寄付金を募った。無事にユニホームを用意して送り、11年6月に現地に試合を見に行った。

 そのとき出会った男子生徒の父親が東海新報の記者だった。試合後、父親に案内してもらい、被害を受けた土地を見て回った。あまりの惨状にカメラを向けることはできず、ただその姿を目に焼き付けた。

 その後、郵送で2日遅れで届く東海新報の購読を始めた。「全国紙やテレビでも被災地の大きな話題は扱うけれど、地域紙には小さなイベントや身近で細かなニュースが載っている」と話す。

 「自分が知ったら、周りにも伝えたい」と思い、市民グループ「大船渡市復興応援活動『有志』」を結成、12年1月から公民館に新聞の展示を依頼した。

 新聞展示以外にも、震災のチャリティー演奏会や防災を呼び掛ける紙芝居上演などを地元で企画してきた。「あの惨状を見れば、何かしたいと思うはず」。原動力は5年前に見た光景だ。

 新聞展示をやめることは考えていない。「阪神大震災だって20年たった今も続いている。自分の生きているうちは、ずっとやろうかと思っている」

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