「歯から身元特定」技術向上に挑む歯科医師たち 京アニ事件の教訓を胸に

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照明を暗くするなど、京アニ事件で鑑定会場となった体育館の状況を再現して実施した歯牙鑑定の研修(京都市・府歯科医師会館)=府歯科医師会提供

 2019年7月の京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)放火殺人事件を教訓に、京都府歯科医師会が、遺体の歯の状況から身元を特定する「歯牙鑑定」の技術向上を目指し、研修を始めた。府内には警察歯科医が25人いるが、府警からの鑑定依頼件数が年間10件程度にとどまるため、経験がない人も多い。同会は「(鑑定は)大規模災害時にも必要とされるため、多くの人に技術を身に付けてもらう」としている。

 京アニ事件の際には遺体の身元を特定するため、事件当日に府警から歯科医の派遣要請があった。同会によると、2日間で8人を派遣したが、4人が未経験だったという。

 身元特定のためにDNA鑑定も行われ、結果的に歯牙鑑定は身元特定には使われなかったが、後日、解剖記録と照らすと、奥歯の詰め物の位置が間違っていたケースもあったという。

 京アニ事件で鑑定に当たった岡本肇さん(66)=西京区=は「過酷な状況で、精神的にも非常に動揺していた。日ごろの訓練が必要だと実感した」と話す。

 今年4月、中京区の歯科医師会館で行われた研修会には約50人の医師が参加。照明を暗くするなど、実際に京アニ事件で鑑定会場となった府警察学校体育館の環境を再現し、マネキンを使って3人一組で鑑定する訓練をした。警察歯科医を2年間務めたが、現場経験がなかったという桜井和裕さん(60)=上京区=は「いきなり現場に行ったら手間取っただろう。慣れておくことが大切」と話す。

 同会では、大規模災害時に歯牙鑑定を担うボランティア制度に約70人が登録しており、これらの歯科医を中心に定期的に研修する予定。