京都大学などがヒトiPS細胞由来の腱細胞をラットに移植、機能回復を確認

京都大学と日本医療研究開発機構は、ヒトiPS細胞から腱細胞を分化誘導してアキレス腱断裂したラットに移植し、機能回復を確認したと発表した。ヒトiPS細胞を用いた細胞治療へつながる治療法が今回初めて開発された。今回の成果は、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の研究グループ(中島大輝研究員(現ハーバード大学)、池谷真准教授)と京都大学大学院医学研究科、東京慈恵会医科大学、京都大学iPS細胞研究財団との共同研究による。

骨と筋肉をつなぐ腱は、血流が乏しいため自己修復が難しい。そのためアキレス腱断裂などの大きなケガの場合、体の別の組織を用いた腱の再建手術が行われることがある。しかし、手術後の再負傷率は比較的高く、また健常部位の採取により筋力低下が生じ、長いリハビリの期間が必要となることが多い。

研究グループはこれまで、体外でヒトiPS細胞から硬節細胞や腱・靭帯細胞の分化誘導に成功していたが、細胞を培養する過程でヒト以外の動物由来の成分を使用していた。今回、将来的にヒトの細胞治療へ応用することを目指すため、動物由来の成分を使用しない条件下での分化誘導法を開発。これによりヒトiPS細胞から中胚葉の発生を模倣して腱細胞を分化誘導し、作製したアキレス腱を断裂したラットに移植した。

その結果、移植した腱細胞は生着し、さらにタンパク質を分泌して回復能力を高めること(パラクライン効果)によって、負傷した腱が早期に回復していることが、運動学的・生体力学的・組織学的に確かめられた。

今回開発した手法は、ヒトiPS細胞由来腱細胞を用いた再生医療や、腱細胞に関連する遺伝子疾患の研究で活用されることが期待できるとしている。

論文情報:

【Nature Communications】Grafting of iPS cell-derived tenocytes promotes motor function recovery after Achilles tendon rupture

© 大学ジャーナルオンライン