長崎県内コロナ禍の教育現場 デジタル化加速 1人1台の端末配備を完了

教室と生徒の自宅をつないで進められるオンライン授業の様子=佐々町、清峰高

 若年層の新型コロナウイルス感染が増加する中、教育現場で情報通信技術(ICT)の活用に関心が高まっている。長崎県内の公立小中高は7月末までに1人1台の端末配備を完了。学校関係者は「コロナ禍というピンチをチャンスと捉え、デジタル化推進の機会にしたい」と話す。
■ 失敗しても
 「では、マイクをオンにして答えてください」
 今月からオンライン授業を始めた北松佐々町の県立清峰高(中村太一校長、462人)。空席が目立つ1年生の教室で、英語教諭がタブレット端末越しの生徒に回答を求めた。
 8月下旬、まん延防止等重点措置が長崎、佐世保両市に適用され、県教委は両市の県立学校に対し、同措置期限の今月12日まで分散や時差登校などを求める内容を通知。生徒の約7割が佐世保市から通学する同校も通知に従い、1日からオンライン授業の導入に踏み切った。
 1、2年生はオンライン授業と時差登校を日替わりで実施。オンラインの日は生配信される授業を自宅で視聴する。板書の文字が端末に映し出され、生徒からは「文字が見やすい。集中できる」と好意的な声が上がっているという。自宅の通信環境が不十分だったり、部活動に参加したりする生徒は登校し、教室で授業を受けている。
 「体制が十分に整っているとはいえないが、失敗してでも生徒が通常と変わらない授業を受けられることが大切」と川﨑公隆教頭。対面授業に比べ生徒の反応が分かりづらい、また教諭側の一方通行になりがちといった課題の解消に向け、試行錯誤が続く。
■ 情報を共有
 1人1台の端末配備後は通常授業から積極的に活用し、緊急時にも生かせるように-。県教委によると、数年かけてそのような体制づくりを計画していたが、新型コロナにより「緊急時が先にやってきた。結果、導入スピードが加速した」。
 「ICTを活用した教育」の県研究指定校の長崎市立長崎中(種吉信二校長、199人)は、4月から全学年の授業に端末を導入。オンライン授業が必要となる状況を見据え、3年生は試験的に夏休み期間中に自宅に持ち帰り、一問一答形式の課題などに取り組んだ。今後、家庭で端末を利用する際のメリット、デメリットの意見を集約し改善を図っていく。
 種吉校長は「将来振り返った時、『コロナ禍だったからこそ進んだ教育を受けられた子どもたち』にしてあげたい」と置かれた状況を前向きに捉えている。
 オンライン授業は今後、新型コロナによる学級閉鎖時や陽性者の濃厚接触者となり通学できなくなった児童生徒などへの対応策としても想定される。県教委ICT教育推進室の岩坪正裕室長は「本格的に始まったばかりで多くの課題が出てくると思うが、学校と情報共有して手を打ちながら学びの深化につなげていきたい」と話す。
 また、岩坪室長は「ICTの利用はあくまで対面授業の補完的役割」とした上で、クラスや学校の枠を超えた共同学習を可能にするほか、提出課題を自動採点ができるようになるなど「教諭の働き方改革」の観点からもメリットを強調した。

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