被爆、戦争体験を映像化 長崎県立大生ら親族取材

大島さん(手前)が制作した映像を見る(奥右から)井上教授と吉田さん=西彼長与町、県立大シーボルト校

 長崎県立大国際社会学科の学生らが、親族に被爆や戦争体験を聞き、映像などに残す取り組みを進めている。学生らは体験者の死去や認知症などで聞き取りが難しくなっている現状を知る一方、取材を通じて戦争や原爆の惨禍を「より身近に感じた」と実感。指導する井上佳子教授は「学生が自分の言葉で戦争を語り、次の世代にバトンタッチすることが、戦争の抑止力につながる」と期待を寄せる。
 井上教授が受け持つ「映像ジャーナリズム論」の一環。井上教授は2019年3月まで熊本放送に勤め、ハンセン病や水俣病、戦争などをテーマに取材してきた。17年には日中戦争で亡くなった祖父の日記を基に、足跡をたどるドキュメンタリー番組を制作した。
 大学の演習では、学生にも自分自身に向き合ってもらおうと、家族らへのインタビューを基にした映像やリポートの制作を課している。昨年度は学生8人が、家族の戦争体験や外国籍の母親の半生、古里の魅力などをテーマに取材した。
 このうち3年の大島碧生さん(20)=佐賀市出身=は昨秋、長崎市内に暮らす曽祖母で被爆者の源城房枝さん(97)を取材。諏訪神社近くの自宅で被爆し諫早方面に避難した話や、空襲の中を逃げまどった話に加え、戦後にひとり親として働きながら子を育て上げた苦労にも焦点を当て、房枝さんの半生を描いた。

県立大学生の制作動画が視聴できるホームページのQRコード

 大島さんは演習を通じて被爆体験を語れる人が減っている現状を知り、「貴重な人がそばにいる」と気付いた。房枝さんの人生や戦後の暮らしまで聞けたことで「ひいばあちゃんの強さを感じた。原爆が投下された時や戦後に生きていなければ自分もいないし、戦争を身近に感じた」と語った。
 本年度、映像制作に取り組んでいる2年の吉田智哉さん(19)=長崎市出身=は先月、祖母の姉の福井ヒロ子さん(82)に戦争体験を尋ねた。空襲のたびに防空壕(ごう)に逃げ込み不安だったことや、疎開先の諫早で食糧難のため芋ばかり食べていたことなどを語ってもらい、映像に収めた。今後、映像編集も進める。吉田さんは「今までも授業などで被爆体験を聞く機会はあったけど、身内の話は当時の状況を、より想像しやすい。自分の話として、より現実的に聞くことができた」と撮影を振り返った。
 大島さんの作品など、昨年度に制作された映像の一部は、県立大ホームページで公開中。

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