定年前に起業したい47歳男性「効率的な資金の作り方は?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、47歳、会社員の男性。定年前に起業するため、資産形成に力を入れているという相談者。効率よく資金を貯めるためにはどうすればいいのでしょうか? 家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。

定年年齢になる前に、起業したいと考えています。資産形成は割と頑張っていると思っているのですが、まだ足りないようにも感じます。家計を絞れば、まだお金を残せるのではないかと思うのですが……。

支出を削減できるところを見つけ、どのように削減していくと良いのか、そのコツも教えてほしいと思っています。また、貯金のペースがこのままで良いのか、今後どうしていくと良いのかということも伺いたいです。

家計管理については、現状は共働きの妻と完全に別財布で、自分の分はアプリで管理しています。妻はどうしているのか分かりませんが、貯金の額や給料の額などの話はしています。

子供が3人いて、二人が大学生。まだ教育費がかかるのですが、現状から、将来に向けての資金づくりについて、アドバイスをいただきたいです。

【相談者プロフィール】

・男性、47歳、会社員

・同居の家族:妻、46歳、会社員。長男(大3)、長女(大1)、次男(高2)

・毎月の手取り収入:相談者49万7,000円、妻29万6,000円

・年間の手取りボーナス:相談者約140万円、妻約130万円

・毎月の支出の目安:76万4,000円

【資産状況】

・家族の貯金:20万円

・教育費用貯金:約180万円

・持株:630万円

・貯蓄目的の保険:約520万円

・退職金の見込み:

夫/500〜600万円ほど、企業年金なし。

妻/企業年金のみ、DB・DC両方している

【支出状況】

・住居費(住宅ローン+ 駐車場代):13万8,000円

・食費(外食含む):13万2,000円

・水道光熱費(電気・水道): 5万2,000円

・通信費(スマホ5台・ネット回線):2万1,000円

・生命保険料:2万9,000円

・日用品代:1万1,000円

・医療費:7,000 円

・教育費(次男塾):4万7,000円

・自動車関連費(維持費):6万4,000円

・交通費:2,000円

・被服費 :9,000円

・交際費:3,000円

・娯楽費:4万2,000円

・こづかい(子ども分):2万円

・こづかい(夫婦分):6万円

・その他:2万7,000円

・大学授業料の積立:10万円


FP:家計は何とか黒字で運営できているようですが、各費目の支出が大きいと感じます。お子さんが一人立ちするとある程度変わる可能性もありますが、支出が大きい生活習慣は、なかなか改善できません。起業をするとなれば、軌道に乗るまで生活費を節約することも考えねばならなくなるでしょうから、貯金を増やす意味でも、支出は積極的に見直しましょう。

起業は十分計画してから

定年前に起業を、とのことですが、どのような分野で起業する計画でしょうか。起業するにも、士業のように経費のあまりかからないものから、商店のように店を構え、仕入れが必要だというものもあります。起業資金があまりかからないものであれば、貯蓄への影響は少ないでしょうが、資金が大きく必要な場合は、例え起業資金が十分あったとしても、その後の生活資金や老後資金が不足する可能性があります。起業には、リスクの差はあれど、生活費のことも踏まえると、それなりの危機管理が必要になります。

夢をかなえるためには、やはり貯金や投資といった貯蓄を増やすことが一番です。起業時に借入も視野に入れているのかもしれませんが、このほぼ貯金がない状態で、定年間近に起業するのは心配です。

標準的な家計と比較して突出しているところを見直す

メタボ家計では、支出の必要性を吟味して、さほど必要のない支出を減らすという家計改善法をとることが多いですが、中には今の支出が当たり前になっていて、さほど必要ではない支出が何かに気づけない人も多く見受けられます。

ご相談者も、客観的に見ると支出が多すぎる費目がたくさんあるのに、どの支出を減らせるかわからないという状況のようです。この場合、一般的な家計、いわゆる理想的な家計と比較して突出しているところを見つけていくことで、効果が上がる場合があります。

一般的、平均的な家計を知ると、いかに我が家の支出が多いのかを実感できます。そこを、平均まで下げる努力をすべきか、必要な支出だから維持するべきかを検討してみましょう。

例えば、比較するまでもなく、多いと思う費目は、食費、水道光熱費、日用品代、自動車関連費、娯楽費です。これらが生活上欠かせないもの、生きる上で大切なものに対する支出であれば無理に平均に近づける必要はありません。ですが、その突出している金額を補うために、他の支出を下げてバランスを取ることは必要です。よく、検討してみましょう。

支出の見直しに加え、長期的な資産形成を視野に

支出を見直せば、ご家庭の貯金は、かなりスピードアップして増やせると思います。現状、家族の貯金がないというのが心配なところですので、おおよそ生活費の1年分の貯金を作ることを目標にして取り組んでいきましょう。

貯金を作るには順番があります。まずは生活を安定させるための「使う」貯金。月の生活費に0.5カ月分の余分を持たせ、突発的な支出があっても、貯金を切り崩さなくて済むようにします。余分を使ったら、翌月から支出を抑えることを意識し、また1.5カ月分が貯められるようにしていきます。

「使う」貯金が十分にできたら、次は「貯める」のステップです。この段階では、失業したり、病気をした時などの「生活防衛資金」を貯めます。

生活防衛資金は、生活費6カ月分というのが一般的です。しかし、コロナ禍による家計の不安を多く耳にするようになったため、最近では「使う」と合わせて12カ月分ほど準備しておくとよいとお伝えしています。教育費用貯金のような、この3年ほどのうちに使う目的のある貯金は、これとは別に貯めておきます。

企業資金は預貯金で貯めてもいい

以上の貯金ができたら、通常は「増やす(投資)」のステップに進むのですが、起業資金を作るには、しっかりと預貯金で貯めるのもいいでしょう。投資で作るという考えもできますが、定年前に起業するなら、あと12年ほどの期間しかありません。必要な時期に資金が準備できない可能性もありますから、投資で資金作りをするか否かはよく検討してください。

また、今の試算は持ち株、保険が中心となっています。今回のご相談をきっかけに、それぞれのメリット・デメリットを調べて、資産の置き方を検討されてもよいと思います。

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