高市早苗出馬で極右ネトウヨが再結集、「天照大神の再来」とバカ騒ぎ、会見で「さもしい顔した国民」発言を追及した膳場貴子も攻撃

高市早苗公式サイトより

安倍晋三・前首相が支持を決めたことにより、総裁選の泡沫候補から一転、注目株となってきた高市早苗・前総務相が本日、出馬表明会見をおこなったが、その内容は予想通り、この政治家の危険性をあらためて印象付けるものとなった。

なかでも印象的だったのが、『報道特集』(TBS)の膳場貴子キャスターが質問をしたときのことだった。膳場氏は「政権構想のなかで経済的な弱者や格差の解消についてほとんど言及がなかった」と指摘したうえ、本サイトでも取り上げた「さもしい顔して貰えるものは貰おう。弱者のフリをして少しでも得しよう。そんな国民ばかりでは日本国は滅びてしまいます」という高市氏の過去の発言を紹介。「困窮する国民をどういう目で見ているのか」などと追及した。

ところが、高市氏は顔色を変えることもなく、「おそらくその発言は民主党政権の期間中に生活保護の不正受給が非常に多く、その問題にどう取り組むかという議論をしていたときの流れの発言」「現在もコロナで傷んでいる事業者支援の不正受給があるが、あの頃いろんな方法で生活保護の不正受給をする人がいた」と主張。最後にはこう開き直ったのだ。

「私に対し非常に色がついていると見られるというご指摘でございますけれども、でも、これが、わたくしです」「これまでのことも含めて、これが、わたくしでございます」

弱者切り捨てではないのかという指摘に、堂々と「これがわたくしでございます」と明るく強調してみせる──。もはや背筋が凍るような話だが、しかし、会見のライブ中継をおこなっていたYouTubeのコメント欄は一気に沸き立ち、〈高市さんかっこいい!〉〈格が違いすぎるw〉〈最高やんけ〉〈ブレない高市さん素敵〉〈早苗! ! ! ! ! ! !最高だ! ! !〉〈過去の切り抜き発言なんて、気にしないでね〉〈TBSのレッテル貼り失敗w〉などという絶賛コメントが凄まじいスピードで流れていったのだ。

そして、膳場キャスターに対しては、逆に〈膳場貴子って、こういう卑劣な女なんだな。がっかりだよ〉〈膳場貴子って、不快極まりないですね〉〈ブーメランが好きな左翼女子! 返り討ちにあう‼ 悪者を擁護するTBS膳場貴子‼〉〈気持ちわりー膳場貴子 お前みたいなクズが口出すな〉などといった攻撃が繰り広げられた。

高市氏の「さもしい顔して」発言は、2012年におこなわれた安倍前首相が会長を務める極右議員連盟「創生「日本」」の研修会においてのものだが、高市氏の弱者切り捨て姿勢をよく表している。高市氏が総理大臣になれば、菅義偉首相以上の「自助」政治、格差助長政策が加速していくことを予見するものだ。

本来なら、そのことを問題にし、そこに切り込んだ膳場キャスターを高く評価すべきところだが、ネット上ではなぜか、高市氏を絶賛し、膳場氏を攻撃するネトウヨの声で埋め尽くされてしまったのである。

●Hanada、夕刊フジ、有本香、百田尚樹、竹田恒泰、門田隆将、ほんこんら極右勢力がこぞって高市絶賛

ネトウヨが沸き立ったのは、この膳場貴子氏とのやりとりだけではない。高市氏が憲法改正や靖国参拝の正当化、女系天皇の否定、「従軍慰安婦」と記述した教科書会社に対する非難など極右主張を繰り出すたびに、コメント欄は絶賛の嵐。その様相は、総裁選の出馬表明会見というより、歴史修正主義者の集会かと見紛うようなものだった。

しかし、考えたらそれも当然。高市氏が出馬の意向を示して以来、かつて安倍政権下で跋扈していたネトウヨ・極右・へイト勢力が息を吹き返し、総結集しているからだ。

まず、8月中旬に高市氏がいち早く総裁選への出馬に意欲を示すと、安倍応援団の有本香氏はすぐさま夕刊フジで〈実務能力があり、正しい歴史認識と確かな言葉を持ち、大メディアの圧力に屈さず、中国の圧力とも闘う意思を持つ〉〈高市早苗さんは、現在の永田町で稀有な、日本国首相にふさわしい条件を備えた人〉と讃美。高市氏は「月刊Hanada」(飛鳥新社)「正論」(産経新聞社)、『真相深入り!虎ノ門ニュース』(DHCテレビ)に立てつづけに登場し、著書『美しく、強く、成長する国へ。』も「WiLL」を発行するワックから発売。すでにネトウヨメディアを総なめにしている。

さらに、あの青山繁晴・参院議員も高市氏の推薦人となり、安倍前首相にその報告をおこなった際には「それは、大きいよ!」「大きいよ!」と言われたことを告白。また、百田尚樹氏も、8月下旬には丸山穂高衆院議員の糾弾決議文を書いたのが高市氏だったと知ったとして〈高市議員の評価はガタ落ちになった〉とつぶやいていたが、最近になって一転、〈総裁選は、高市早苗さんを押すで! 彼女以外に選択肢はない 「虎ノ門ニュース」でも、ガンガン押しまくる!〉と宣言。このほかにも竹田恒泰氏や上念司氏、門田隆将氏、さらには芸人のほんこんなど、錚々たるネトウヨ文化人・芸能人がこぞって高市支持の姿勢を示しているのである。

いや、芸能人や有名人だけではない。安倍政権を裏で支えてきた極右カルト勢力・日本会議もがぜん活発に動き始め、高市支持の大規模な運動を繰り広げる動きを見せているという。

本日8日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)では、玉川徹氏が高市氏の支持層を「右翼」と評したことに対して、ネトウヨたちが〈お前の頭が左巻き過ぎるんだよ〉〈高市さんを排除したいのがバレバレ〉などと憤慨、「月刊Hanada」編集部のTwitterアカウントまでもが〈安っぽいレッテル貼り〉などと批判していたのだが、これだけネトウヨ支持者を集めていることを考えても、高市氏は「右翼」どころか「極右」「ウルトラライト」と呼ぶのが適切だ。

●高市早苗のことを「令和の卑弥呼」「現代の神功皇后」「天照大御神の再来」と馬鹿騒ぎ

しかも、呆れるのは、そのはしゃぎっぷりのバカさ加減だ。ネット上では高市氏を「令和の卑弥呼」「現代の神功皇后」などと呼ぶ者が現れたかと思えば、元時事通信社特別解説委員でネトウヨ文化人である加藤清隆氏は〈高市早苗は天照大御神の再来〉とまで言い出す始末(現在は削除)。

さらに、ネトウヨたちは「日本初の女性総理誕生の可能性があるのになぜフェミは高市さんの応援をしないのか」などとお門違いの批判を展開。ネトウヨインフルエンサーの黒瀬深氏は〈あれほど「女性だから」という理由だけでサヨクの政治家を推していたフェミニストが、女性初の総理大臣が誕生するかも知れない時にボロカスに叩いている。結局、ジェンダー云々などはクソどうでも良く、単に自分に都合のいい政治家を礼賛したいだけの方便だったという事だ〉などと投稿し、フェミバッシングまではじめた。

言わずもがな、高市氏は選択的夫婦別姓制度導入の反対派の急先鋒であり、これまでも女性の権利を蔑ろにする言動を繰り返してきた人物だ。そのような女性の権利を阻害するような政治家に対して女性やフェミニストたちが批判するのは当たり前で、こんな人物が「日本初の総理大臣」になることなどもってのほかの話。だが、ネトウヨはこうしたアホ丸出しのファミバッシングまでおこない、高市氏を支持するネット運動を展開しているのである。

さらに、ネトウヨは「月刊Hanada」がTwitter上でおこなった「次期総理総裁に相応しいと思う候補者は誰か」というアンケートで、高市氏がぶっちぎりでトップになったことや、ネトウヨが大挙したと思しきYahoo!調査のアンケートでも高市氏が1位となったのに対し、共同通信社がおこなった同様の世論調査では1位に選ばれたのが河野氏(31.9%)だったばかりか、高市氏が野田聖子氏より下の5位(4.0%)に終わったことに反発。前述した高市支持の門田氏は〈どんな調査法ならこうなるのか〉、ほんこんも〈メディアは高市氏を嫌いますね〉と、あたかも恣意的な操作がおこなわれているかのように語っていた。

たしかに大手メディアの世論調査は質問による恣意的な誘導などがおこなわれることもあるが、ネトウヨしかフォロワーがいないような「月刊Hanada」のTwitterアンケートやネトウヨが熱心に投票を呼びかけていたネット調査と比較して「高市氏が1位じゃないのはおかしい」などと陰謀論めいたことと主張するとは、噴飯ものとしか言いようがないだろう。

●田崎史郎は「安倍さんも乗ってるけど、逆に強硬な保守派の数が見えちゃうんじゃないか」と冷ややかだが

もっとも、ネトウヨは「高市早苗さんを総理大臣に!」というエコーチェンバーの祭りによって高市総理の誕生を信じてやまない様子だが、永田町を知る政治評論家たちの見解は冷ややかだ。

たとえば、安倍前首相をはじめとして政権幹部や有力政治家に近いためにこの手の政局の話題では外さないと定評のある田崎史郎氏も、キングメーカーである安倍前首相が高市支持に回った理由について「硬い保守層が政権から離れていっているという見方がある」とした上で「保守層に弾を撃ち込んで活性化させて総裁選を通じて衆院選までやっていただこうという気持ちが、高市さんの擁立に作用している」と解説(8日放送TBS『ひるおび!』)。

また、6日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)では、田崎氏は前述の共同通信社の世論調査においてもっと大事なのは「自民党支持層の支持率」であるとし、そこでも河野氏が37.1%であるのに対して高市氏が5.3%にとどまっていることを指摘。このように解説していた。

「保守派の代表として高市さんは立っている。安倍さんもそれに乗ってるんですけども、これ、意外と、非常に強硬な保守派の人たちの数が見えちゃうんじゃないか」

つまり、強硬な保守派=極右の支持者へのアピールとして安倍前首相は高市氏の支持に回ったものの、その数字は全体からすればわずかにすぎないのではないか、と暗に指摘したのである。

だが、一方でこのネトウヨ総結集の祭りは「ネット上の空騒ぎ」で終わるとはかぎらない。事実、高市氏は安倍前首相の支持だけではなく、すでに日本会議の全面支持も得ているという情報もあるし、細田派の若手・中堅にも高市支持が広がっているという情報もある。状況によっては、現段階では河野潰しのために岸田氏を推すと見られている麻生太郎氏が高市支持に回る可能性も考えられる。

さらに、本日の高市氏の出馬表明会見では、その極右ぶりを隠そうともしない主張の危険さに溢れていたが、同時にカンペに目を落とすこともなく淀みなく喋りつづける弁舌の達者ぶりも際立っていた。「女性初の総理候補」という看板も手伝って、総裁選告示後におこなわれる候補者討論会などでは存在感が増してくるかもしれない。

高市氏がもし総裁に選ばれるようなことが起これば、それは安倍政権以上にグロテスクな歴史修正、弱者切り捨てと差別・排外思想の蔓延、そしてナショナリズムの煽動がおこなわれることは必至だ。ネトウヨのネット運動を笑うだけではなく、十分に警戒しなければならないだろう。

(編集部)

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