33打席連続無安打の阪神・佐藤輝明 8月下旬から急降下している数字とは?

阪神・佐藤輝明【写真:荒川祐史】

7日のヤクルト戦ではプロ入り後初めて出番なしに終わった

今季のセ・リーグ新人王の有力候補でありながら、ここにきて急ブレーキとなっている阪神の佐藤輝明内野手。チームトップの23本塁打を放っている一方で、現在は自己ワーストの12試合33打席連続ノーヒット中と苦しみ、7日のヤクルト戦では今季初めて出場機会がなかった。

8月下旬を境に打撃成績が急降下している佐藤輝。8月19日のDeNA戦(東京ドーム)で23号ソロを放つなど2安打してから、出場14試合でわずか1安打。最高で.280あった打率は、わずか2週間ほどで.255まで低下してしまった。

初めてのプロ生活。シーズンを通してプレーすることは肉体への負担も大きく、疲れもあるはず。さらには相手チームの研究も進み、配球や攻められ方も工夫されてきているはず。プロ野球選手として、ぶつかって然るべき壁にぶつかっていると言えるだろう。

では、この不振の原因は何なのか――。セイバーメトリクスの指標などを用いてデータ分析を行う株式会社デルタのデータを基に検証してみたい。

ストライクゾーン内のコンタクト率が8月下旬から…

佐藤輝の打撃成績が落ち始めた8月20日を過ぎた辺りから急降下している打撃指標がある。それが、ストライクゾーン内に来たボールに対してバットに当てた確率を示す「Z-Contact%」だ。10試合あたりのこの指標を見ると、8月下旬から急激に落ち、9月5日を終えた段階で10試合あたりの「Z-Contact%」は45%前後に。それまで70%台で推移しており、今季で最も低い水準となっている。

ストライクゾーン外のボール球に対してのコンタクト率を表す「O-Contact%」を見ると、40%台と大きな変化は見られない。ゾーン内でスイングを仕掛ける「Z-Swing%」は上昇しているが、ボール球をスイングする「O-Swing%」には大きな変化はない。ここ最近の佐藤輝はストライクゾーン内のボールにバットが当たらないという傾向が強くなっている。

ゾーン別のコンタクト率を8月19日までと8月20日以降とで比較してみる。全体的にコンタクト率は低下しているものの、その中でも真ん中からアウトコースは軒並み数字が大きくダウンし、コンタクト率は50%以下となっている。一方でインコースに関しては落ち込みは小さい。外角に比べて、60%以上のコンタクト率のあるコースもある。

相手バッテリーのコース別の投球比率でも変化が…

コース別の投球比率も見てみたい。8月半ばまでは低めを中心に、割と満遍なく配球されている。比率で見れば、ややインコースが多めだ。だが、8月20日以降で見ると、明らかに配球のバランスに変化が見て取れる。真ん中のゾーンに次いで、多く投じられているのインサイドのボール球。ボールゾーンにも関わらず、全体の配球のうち22.2%が投じられている。

そして、インコースボールゾーンに続き3番目に多いのは外角のボールゾーンで計20.4%。このゾーンはコンタクト率も低く、佐藤輝が苦戦を強いられているエリアでもある。そして、内外角問わず、ゾーン内に投じられる比率はここに来て低下している。

これらのデータから推測されるのは、佐藤輝は相手バッテリーから内角をえぐるボールゾーンの投球で厳しく突かれて意識させられた上に、そこから遠い外角へのボール球で幅をつけて攻められているということ。こうした攻め方によってバッティングを崩され、本来の姿を見失ったことで、これまでコンタクトできていたゾーン内にくるボールでさえ空振りするようになってしまっているのではないだろうか。

ここまで23本塁打を放ち、阪神の首位快走に貢献してきた佐藤輝にとってはプロ1年目で訪れた最大の試練だろう。ただ、弱点を徹底的に突き、打撃を崩しにかかるのはプロ野球の常。真の強打者となるためには、この壁に立ち向かい、乗り越える必要があるだろう。(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

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