進まない佐世保市の障害者雇用 募集要件緩和も財源ネック

佐世保市の障害者雇用状況

 長崎県佐世保市の障害者雇用が進まない。雇用数が法定雇用率を下回り、県内で唯一、2年連続で長崎労働局から勧告を受けた。財源問題などをネックに本年度も大きく不足しており、達成に黄信号がともる。障害者の就労を支援する関係者からは、積極的な採用を求める声が上がる。

 市の2021年6月1日時点の障害者の実雇用率は1.51%で、障害者雇用促進法が定める地方自治体の法定雇用率2.6%を大きく下回っている。74人の雇用が必要だが、31人も不足しているのが現状だ。
 同促進法は国や自治体、民間企業に一定割合以上の雇用を義務付けているが、18年に中央省庁の雇用水増しが発覚。県内自治体でも非正規職員を全体数に入れていなかったり、障害者手帳を確認せずに算定するなどのミスがあり、雇用数の不足が表面化した。市の不足数は県内市町で最も多い17人だった。
 以降市は、35歳までだった年齢制限を59歳までに緩和したほか、身体に限っていた障害区分を撤廃するなどして門戸を広げて募集。応募者数は、要項を緩和する前の17年度と比べて最大約8倍に増えたが、採用したのは年に1~2人。退職者が多かったため、不足数は19年度は25人、20年度は32人と拡大していった。
 採用できていない原因は何なのか。障害者の就労支援に取り組む団体のある女性は「障害者にはできないと決め付けている仕事が多いのでは。他自治体にできて佐世保市にできないはずはない」と認識の転換を求める。同じ団体の男性も「付きっきりで教えなくてはいけないと思い込んでいるのかも。困っている時にサポートしてくれればいい」と話す。
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 19、20年度と長崎労働局から異例の2年連続での勧告を受けた市は「障害者を雇用する意義は理解しているが…」と歯切れが悪い。「1年間で正規職員として採用できるのは2~3人が限界」と明かす。仮に、非正規職員として採用した場合でも1人当たり年間約200万円の人件費が必要。不足する31人を非正規で雇用したとして、約6200万円の人件費が上乗せになる。また「雇って終わりではない。メンタル面のサポートも必要」とし、職場意識の向上も課題に挙げる。
 ただ、条件は他の自治体も同じ。職員数が多い長崎市(市長部局)は法定雇用率に基づき必要とされる72人の採用を達成。各部署に、障害者にお願いできる仕事がないか調査、集約して採用枠を確保しているという。
 障害者の就労支援などをするハローワーク佐世保の堀口和弘職業相談部長は佐世保市の不足について「積極的に採用しないと達成できる人数ではない」とし、業務を作る工夫や努力を求める。その上で「『職員』として仕事を任せ、できない仕事は他の人がフォローする柔軟な考え方も必要」とする。

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