サッカー日本代表の中国戦中継なしで浮上「ユニバーサル・アクセス権」導入議論の行方

ドーハでの中国戦は勝利したが…(日本サッカー協会提供)

7大会連続のW杯出場へ向けて負けられない日本代表が1―0で勝利した、サッカーのカタールW杯アジア最終予選・中国戦(ドーハ)。日本時間8日午前0時に始まった一戦はテレビ放送なしという異例の状況下で行われた。スポーツのビッグイベントで有料放送・同ネット配信の独占化が進む中、英国では無料視聴の機会が確保されている。

その名も「クラウン・ジュエル」。英語で「王冠の宝石」を意味するこの言葉は英国で、BBCやITVなどの地上波での無料放送が義務づけられる公共性の高いスポーツイベントを示す用語となっている。

昨春の英議会資料によると、「地上波で完全生中継されなければならない」とされるAカテゴリーに、五輪、サッカーW杯決勝トーナメント、ウィンブルドンテニスの各種目決勝、競馬のグランドナショナルおよびダービー、ラグビーW杯決勝などの10イベントが挙げられている(男女別の記載なし)。「ハイライトなどの地上波放送が必須」のBカテゴリーには、陸上の世界選手権やクリケットW杯の準決勝以上、ゴルフの全英オープンなど9種のイベント。

有料の放送や配信の独占化で“自国がW杯で決勝に出るのに多くの人が視聴できない”といった事態を避けるため、リストが設けられた。すべての人が自由に情報に接することができる「ユニバーサル・アクセス権」に基づく措置で、同権の趣旨はスポーツにおいて英政府が世界に先駆けて法的に定めたとされる。
今回のアジア最終予選は、主催するアジアサッカー連盟(AFC)とテレビ朝日の放送契約が更新されず、契約料の高騰が原因で日本のアウェー戦テレビ放送がなくなった。放送権を得たのは配信大手DAZN(ダゾーン)。ファン衝撃の事態は、「W杯本大会も一部は地上波なしの時代が来るのでは」などと疑心暗鬼も呼んでいる。

W杯予選も通過か否かがかかる終盤を迎えれば関心の高まりは必至。中国戦に関して、ネット上では「ユニバーサル・アクセス権の侵害」「アクセス権を日本にも導入しよう」「議論する段階が近い」といった投稿が見られた。

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